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記事一覧
【Essay】〈私〉を消して、〈私〉を表現する〜言語表現、写真、そして研究〜
以前、書いた文章を読み直してみた。数年前に書いた文章で、研究者を志す原点が詰まっている。読み返せば様々なことを思い出して、いつの間にか感傷に浸ってしまった。しかし、これがまたとにかく読みにくい。一人称単数が多いのだ。決して村上春樹の短編について何かを言いたいわけではない。ただ、その文章にはとにかく「私」であるとか「自分」であるとか、一人称を表す言葉が頻出するのだ。こんなにも自意識過剰な人間だったの
もっとみる【Essay】 #日々是統計学 / #赤信号、みんなで渡れば怖くない
2月の終わりに日本に帰国してからずっと、社会統計学を学び直している。大学院に入る前にしっかりと思い出し、身につけておきたい。卒業を控えたこの3月を有効に使いたい。そんな思いが相まって、入門本を古本で購入した。分析ソフトの「R」を使って学ぶというのがこの本のコンセプトで、実際に手を動かして勉強できるところがいい。
その分、負担が大きいのも事実だ。1章ずつの分量が意外に多く、細かく詰めて作業している
【Essay】夕べにすべてを知るということ
夕べにすべてを知るということ。
これはベートーベンの日記にある言葉らしい。好きな小説の中で引用されていた。もっとも、僕自身はベートンベンの日記を読んだことがあるわけではない。ベートーベンをよく聴くわけでもない。その小説のどのシーンで引用されていたのかも忘れてしまったのだけれども、この一文が、もう2年くらい頭から離れない。
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大学院の入学試験が近い。最近は図書館や研究室にこもり、黙々と読
【Essay】タイ語のテキストたちの〈言葉〉※タイ語学習用テキストの紹介つき
溢れきった本棚を整理していると、懐かしいものが出てきた。タイ語のテキストが5冊、待っていたかのように並んでいる。タイ語を学び始めて1、2年のときに使っていたテキストだ。カバーはしっかりしているものの、中身は書き込みでいっぱい。モノとしても、気持ちとしても、売りには出せない。
とりわけ思い入れがあるのは、斉藤スワニーさん・三上直光さんの『中級タイ語総合読本:タイの社会と文化を読む』(白水社)だ。タ
見たことのない海に思いを馳せて〜【私のタイ文学】ラッタウット・ラープチャルーンサップ『ガイジン(Farangs)』〜
考えてみれば不思議なものだ。海が好きな自分は、タイに留学していたときでさえもほとんど海に足を運ばなかった。チェンマイという北の古都<みやこ>に住んでいたことが大きいけれども、プーケットもクラビも、サムイ島もサメット島も、僕は行ったことがない。
ただ、それでも僕はタイの海をありありとイメージできる。永遠に伸びているかのような白い砂浜を、永遠に繰り返すかのように波打つ水際を、永遠に続いているかのよう
【Essay】私とあなたの identity politics、私と私の identity politics。
名乗りあげ、名付けられ、紡ぎ上げられていく。
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国家と民族の identity politics。
以前、東南アジアの地域社会論の授業で「国民形成における名乗りと名付けの相互作用」というレポートを書いたことがある。様々な民族集団が自らの市民権や政治的権利を主張する中、国家はその要求をどのように受け止め、制度化し、「国民」概念が形成されていくのか、授業で取り上げられていたミャンマーと自分
【Essay】他人を知る、自分を知る:Borgen -Power & Glory- を見て
大体、自分の興味の中に自分の影はない。そう思うことがある。
自分にとって大切だと感じた人や、心動かされる何かをその中に感じた人がいるとき、僕はその人のことをより深く知りたいと思う。その人が見てきたものを、自分も見てみたい。その人が感じてきたことを、自分も感じたい。いつしかそのような関心が、当の本人を知るという枠を超えて、自分の中で一人歩きする。初めて自分の興味になる。タイにしろ、何にしろ、自分の