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#229「ビジネス頭の体操」 今週のケーススタディ(3月1日〜3月5日分)

はたらくおとな向け。普段の仕事と無関係なケーススタティで頭の体操。
その日にちなんだ過去の事象をビジネス視点で掘り下げています。
普段の仕事を超えて、視野を広げ、ビジネスの頭の体操をするのにぴったり。
考えるための豊富な一次情報やデータもご紹介。

 →部分は、頭の体操する上での自分に対する質問例、です。


3月1日(月) YouTuberと金属産業労組が手を組む!?

1946(昭和21)年のこの日、労働者の地位向上を図る為の法律「労働組合法」が施行されたことから「労働組合法施行記念日」です。

労働組合法。
私自身は外資系で労働組合はありませんが、新入社員として入社した日系銀行には労働組合があって、節目節目で説明会などがあって結構盛んに活動していた記憶があります。

まず、復習ですが、労働組合法の目的ですが、雇用主よりも立場の弱い労働者が団結して話し合いなどができることを目指したものです。

そもそも憲法第28条で労働三権が定められています。

☑️ 団結権:雇用側と対等に話し合うために団結する権利
☑️ 団体交渉権:雇用側と労働条件などを交渉できる権利
☑️ 団体行動権:ストライキで抗議できる権利

さて、その労働組合ですが、どれくらい加入しているものなのでしょうか?

厚生労働省「令和 2年労働組合基礎調査」によると、令和2年6月30日現在における労働組合数は23,761組合、労働組合員数は1,011万5千人となっています。

…と言われても多いのか少ないのか分かりません。

雇用されている人数に対する割合(推定組織率)は、17.1%となっています。

これらのデータを時系列にしたグラフが以下(出典:同調査)。

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組合員数のピークは平成6年の1,269万9千人、組織率は23%程度でしたから、減少傾向であることが分かります。

労働組合のマクロ的な現状を把握したところで、個人的に気になった労働組合関連のトッピクスを 2つご紹介します。
いずれも独立行政法人労働政策研究・研修機構HPが出典です。

1つ目が、YouTuber組合と金属産業労組の連携〜Fair Tubeキャンペーン〜です。

これはドイツの話です。
なんと、ドイツ最大の230万人もの組合員を抱える金属産業労組がYou Tuber組合とが、2019年7月にYouTubeと親会社のGoogleに対して、ある問題を訴えた、というのです。

発端は、再生回数に応じた収入構造から内容が過激化したことの対策として、YouTubeが2017年にルール変更を行い、同社のポリシーから外れる動画の非表示や非収益化がされるようになり、理由もわからずに突然非表示にされるなどするYouTuberが急増、中には8割以上収入が減るなどしたことです。

要求は、基準を開示してくれ、なのですが、注目したのは、金属産業労組とYouTuber組合とが連携したことです(YouTuber組合があるのも注目ですが)。

これは、同労組が歴史的に自宅で金属加工などを行う家内労働者を組織化してきたことから、PC等を使い自宅で仕事をする「家内労働者」に対しても同様の支援を行なった、ということだそうです。

確かに、YouTuberは「家内労働者」ですね。国が違えば歴史も違って解釈も様々で面白いですね。


2つ目は、米カルフォルニア州でギグ・ワーカーが個人請負に当たるか否か、の住民投票が行われた、というものです。

ちょっと長くなりますが、経緯を以下にご紹介します。

実は、昨年1月、カルフォルニア州では「ギグ法」が施行されています。
これは、個人請負の定義を厳格化してこれに当てはまらない労働者を労働法による保護の対象とすることを狙いとしています。

日本でも話題になりましたが、「個人請負」だと、社員ではありませんので、社会保障はもちろん、仕事で怪我をした、病気で働けない、有給休暇もない、といった場合の保障がないことが問題となりやすい働き方です。

これに対応して、労働者を保護しようというのが「ギグ法」の立法趣旨だったのですが、UberやLyftは引き続き「個人請負」として扱い、それが問題となったものです。

そこで、同州が昨年5月に両社を提訴、1名あたり 2,500ドルの罰金を支払う命令が出されました。

これに対して両社を始めとした、いわゆるプラットフォーマーは、デリバリー要員やドライバーを「ギグ法」の適用外の個人請負の地位を維持したままとする新法を作る住民投票を仕掛けたのです。法律変えちゃえ、ということですね。

これに、同州労働者連盟など複数の労組はNoを訴える活動を行いました。

結果は、Yes、つまり、引き続き「個人請負」を維持することになりました。

今後もこうした動きは出てくることでしょう。

→ドイツやアメリカの事例をみても分かる通り、今後働き方が多様化する中で労働組合の果たす役割はどのようなものになっていくだろうか?


3月2日(火) プラモ市場を牽引したのはガンプラとミニ4駆!?

ミニチュアや小さいものを愛そうという「ミニの日」です。
「ミ(3)ニ(2)」の語呂合わせから。

ミニチュア。
プラモデル?という安直な連想から調べてみました。

巣ごもりで売上伸びているのでは?と思いましたが、予想通り。

プラモといえばタミヤ(個人の見解です)、の模型大手タミヤの田宮会長のコメントが朝日新聞にありましたので引用します。

「前年比で30%以上増えた。生産が間に合わず、世界的に商品が足りない」プラモデルに携わって半世紀以上だが、「僕が30~40代で設計した船の模型も売れている。こんなことは初めて」と驚きを隠さない。

また、同じ記事に、別メーカーのコメントもありましたのでご紹介します。

自動車模型で有名な青島文化教材社(静岡市葵区)では、塗装や接着剤が不要の初心者向けプラモが前年比で約5倍の売れ行きだという。トヨタ2000GTやジムニーといった商品で、青嶋大輔社長は「子どもや初心者が手を延ばしたのでは」とみる。
航空機の模型が得意なハセガワ(静岡県焼津市)の長谷川勝人社長のもとには、取引先の模型店から「ここ10年で一番売れた。店を閉めなくてよかった」「みんな困っているのに、明るい話で申し訳ない」といった声が届く。しかし「受注量の6割しか出荷できていない」とも言う。

このように売上は順調なようです。

さらには、組み立てるのに必要なニッパー等の工具も売り上げを伸ばしています。特徴的なのは7千円代や、子供用でも3千円代の高価格帯の商品の伸びが大きいことです。


また、「ミニチュア」というカテゴリに近いものとして、日本玩具協会が公表している「ホビー」という分類があります。

プラモデルのほか、ホビーR/C(ラジコンですね)、鉄道模型、フィギア等が含まれる市場分類です。

それによると、2019年度の市場規模は1,383億円となっています。

これは、対前年101.3%となっており、玩具市場全体が同97.4%とマイナス成長の中、成長分野といえます。

データは古いのですが、もう少し時間軸を長く取った統計を見てみましょう。

経済産業省の「プラモデルの出荷動向」というコラムに、「工業統計でみる「プラモデル」の出荷額の動向というグラフがあります(以下)。

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これによると、ガンプラ、ミニ4駆のブームで大きく伸ばすものの、近年では落ち着いていることが分かります。

また、同コラムに「鉱工業指数で見る「プラモデル」の出荷指数の動向」というグラフもありましたので紹介します(出典:同)。

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時間軸が先ほどと異なるのですが、これを見ると、2011年以降、2015年まで、成長していることが伺えます。


新たな(私が知らなかった)動きとして、2つご紹介します。

1つ目が、ガンプラの海外プロモーションです。

なんとすでに売上の半数は海外だそうです。
その背景には、例えばフランスでは小学校に無料でキットを配布(!?)するといったプロモーションも効果を発揮しているようです。

2つ目が、鉄道模型の、「走らせる」という「体験型」市場の拡大です。

確かにショッピングモールの中に突如鉄道模型屋さんが開店し、大きなレイアウト(鉄道模型を走らせるためのレールや駅、街並みなどが再現されたジオラマのようなもの)が併設され、時間貸ししているのを見たことがあります。
いわゆる「コト消費」ですね。1人で楽しむので今の時代に向いているかもしれません。

→ニューノーマルの趣味、1人で楽しむ、密にならない、という観点で見直されるものも出てくるように思える。また、親世代が親しんだコンテンツであれば、親が子に教えられる、という面もあり、加えて子供の頃に比べて格段の可処分所得がある状況であれば、高齢化に悩む業界の低年齢層への展開、高単価化などのチャンスとも言える。他にどのような業界やサービスが考えられるだろうか?


3月3日(水) 受診控えで最も影響を受けたのは小児科と耳鼻咽頭科

日本耳鼻咽喉科学会が1956(昭和31)年に制定した「耳の日」です。
「み(3)み(3)」の語呂合せ。また、三重苦のヘレン・ケラーにサリバン女史が指導を始めた日であり、電話の発明者グラハム・ベルの誕生日でもある。

耳の日。
学会が制定した、ということですが、この状況下で耳鼻科の状況はどうなっているのでしょうか?

日本医師会が昨年11月に公表した、「新型コロナウィルス感染症の診療所経営への影響」という資料から見てみましょう。

一般の病院では「受診控え」があり、経営が厳しいとの報道はありましたが、実は、最も影響を受けているのが、小児科、次に耳鼻咽頭科となっています。

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<入院外総件数>
☑️ 小児科 7月:対前年31.6%減、8月:同30.6%減
☑️ 耳鼻咽頭科 7月:対前年20.4%減、8月同16.9%減

全体では、7月:対前年9.8%減、8月同8.0%減、ですので、影響が大きいことが分かります。

科目別のデータはないのですが、医業収入についてもデータがあり、入院施設がない病院で、5月で217万円、4月から8月の平均で148万円の減少となっています。耳鼻咽頭科はこれ以上に厳しい状況であることが推測できます。

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日経メディカルの記事によると、岡山市のある耳鼻咽頭科のインタビューが紹介されています。

それによると、3月は対前年で500万円の減収となっています。

また、例年であれば花粉症対策で受診者が増える時期ということも影響を大きくしているようです。

最後に、耳鼻咽頭科の平均経営モデルがありましたのでご紹介します。

平均患者数:90人/日( 2,000人/月)
単価:3,800円/人
年間収入:9,120万円
コスト:5,000〜6,000万円

→コロナ禍で大変な医療だが、直接関係のない医療関係者も間接的に大きな影響を受けている。企業ではDX、非接触と言われているが、医療、特に民間病院ではどのような解決策が考えられるだろうか?


3月4日(木) ミシンの売上も巣ごもりで増加

ミシン発明200年を記念して日本家庭用ミシン工業会(当時)が1990(平成2)年に制定した「ミシンの日」です。
「ミ(3)シ(4)ン」の語呂合せ。

ちなみに、イギリスのトーマス・セイントが世界で初めてミシンの特許を取得したのは1790(寛政2)年だったそうです。
また、「ミシン」という日本語は、 sewing machine(裁縫機械)のmachineがなまったもので、海外では通じないんですね。

ミシン。
以前は、ミシンがある家庭、多かったように思いますが、最近ではどうなんでしょう?

ということで普及率を見たかったのですが、なんと、平成21年の全国消費実態調査のデータが最後になっています。

それによると、平成21年の電動ミシン世帯普及率は61.6%。
前回調査(平成16年)は67.1%から5.5ポイントの減少です。

近年では衣料品の価格が低下したことや学校で使われる雑巾なども売られるなど家庭でミシンを必要としないことで普及率も販売も減少傾向でした。

ところが、感染症の拡大初期には、マスクの不足から手作り需要が発生、マスク不足が解消後も、巣ごもりによる手作り需要の増加家庭用ミシンの販売は好調だそうです。

東京商工リサーチのレポートによると、ミシンメーカー大手3社(ブラザー工業、蛇目ミシン工業、JUKI)いずれも家庭用ミシンの売上は 2割から3割増加しています。

一方で、アパレル業界向けの工業用ミシンは厳しい状況とのことです。

大手3社の決算を見てみましょう。

まずブラザー工業2020年度第3四半期決算説明会資料より

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2020年4月〜12月のQ3累計売上高で見ると、全体では、4,848億円から4,675億円と174億円(3.6%)の減少となっています。
しかし、5つあるセグメントのうち、P&H(パーソナル&ホーム:家庭用ミシンが主のセグメント)だけが対前年110億円のプラスとなっています。

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次にJUKI2020年12月期決算説明会資料より

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2020年1月〜12月の売上高は991億円から704億円と287億円(29.0%)の減少となっています。
しかし、セグメント別では工業用ミシンは43%減少する一方、家庭用ミシンは50%増加しています。

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最後に蛇の目ミシン工業2021年3月期第2四半期決算説明資料より

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2020年4月〜9月の売上高は173億円から212億円と39億円(22.8%)の増加となっています。
また、営業利益は3億円から23億円と実に7倍にもなっています。

これは、同社の売上の8割を家庭用が占めることによるもので、家庭用機器(主にミシン)が130億円から176億円と35%も増加しています。

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さて、大手3社とは別に、中小規模のミシンメーカーも工夫で売上を伸ばしているところがあります。
中でも、子供向け、家庭で置くにあたっての不満を解消したコンパクト、低価格といったマーケットで売上を伸ばしたメーカーの取り組みがマーケティング的にも興味深かったのでリンクになりますがご紹介します。


→同じミシンメーカーでも家庭用と工業用といったマーケットの違いで会社全体の売上、利益には異なるインパクトがあった。一般に選択と集中が有利とされてきたが、VUCAの時代にふさわしい事業ポートフォリオはどのようなものが考えられるだろうか?


3月5日(金) 脱炭素と海の酸性化とサンゴ礁

「さん(3)ご(5)」の語呂合せと、珊瑚が3月の誕生石であることから「サンゴの日」です。

サンゴ。
うーん、綺麗な海にある、熱帯魚とか周りで泳いでる?

調べてみると、今、地球が抱える最も大きな環境問題の1つである、CO2増加の直接、そして間接の影響を受けていることが分かりました。

まず、サンゴ。
動物なんですね。そこから知りませんでした。

サンゴはイソギンチャクやクラゲと同じ刺胞動物と呼ばれる「動物」で、小さな個体がいくつも集まって群体を形成しています。一つひとつのサンゴは下のイラストのようにポリプと呼ばれる本体と石灰質の骨格の部分でつくられています。枝状やテーブル状、塊状に成長。それが幾重にも積み重なって、サンゴ礁という複雑な「地形」をつくるのです。ポリプには触手に囲まれた口があり、ここで摂食や排泄、産卵などを行っています。細胞内には藻を共生させ、互いに補い合って生きています(三菱商事HPより)。

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サンゴ礁というのは、この珊瑚が作った石灰質の骨格が積み重なってできた地形のことを言うそうです。なるほど〜。

「グレートバリアリーフ」、聞いたことがあると思います。
こんなイメージのところです。

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「バリア」という名の通り、サンゴ礁は、海洋生態系の中で様々な生き物の住処や産卵場所を提供していて、「海の熱帯林」「海のオアシス」と呼ばれているのです。

サンゴ礁の典型的な地形は以下の通りで、「バリア」の由来が分かります。

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さて、そのほかにもサンゴには役割があります。
サンゴはその体内に「褐虫藻」という藻に住処を提供し、代わりに褐虫藻が光合成によって作る酸素等の有機物を受け取っています。また、サンゴは石灰質の骨格を作る際に海水からCO2を取り込んで炭酸カルシュウムとして活用することで海中のCO2濃度の調整を担っているという面もあるそうです。


さて、ここまでがサンゴ、そしてサンゴ礁の基礎知識でした。

冒頭申し上げた通り、このサンゴがCO2増加の影響を受けているのです。

海水の温度上昇が原因と思われる「白化」という現象です。
先ほどご説明した通り、サンゴの中には褐虫藻がいて、サンゴの色はこの藻の色なのです。「白化」というのは、何らかの原因で(おそらく海水温の上昇と言われている)褐虫藻がいなくなったり死んでしまったりすることでサンゴの骨格の色である白になるのです。そうなると、彼らから栄養をもらっていたサンゴも死んでしまうのです。

80年以内にサンゴは絶滅する、という研究もあります。

また、先程のグレートバリアリーフも白化が進んでいるそうです。

サンゴが絶滅してしまえば、サンゴ礁も「バリア」の役割を果たせなくなります。

筑波大学が昨年4月21日に発表した研究によれば、CO2濃度が増え、海洋酸性化が進んだ海は、サンゴや藻類群集に影響を及ぼす(先程の白化ですね)だけでなく、それら(サンゴ礁)を生息場とする魚類群集を大きく変化させることが分かったそうです。

そして、人類がCO2の排出を削減しなければ、魚類の多様性が45%低下し、海から得られる資源量が減少すると予測しています。


このように、大気中のCO2濃度の上昇は地球の温暖化だけでなく、海水温上昇、そして、CO2が海水に溶け込むことでの海洋の酸性化に伴う海洋生態系変化、という、海の中まで影響が及ぶのです。

サンゴの日、調べてみたら、ただサンゴを知らなかった、という以上の大きな問題と関係していることが分かりました。

当たり前ですが、地球環境、全て繋がっているんですね。

…なにかいつになく、綺麗な終わり方で…でも重い話でした…

→脱炭素がビジネスになろうとしている。そのものを減らす、地中に埋める、コンクリートの材料にする、はたまた、空中からCO2を取り出す技術に懸賞金がかけられるという動きもある。この動きの1つには「排出権取引」という金銭に置き換えるシステムが機能したこともある。このように現時点では取引されていないが、「○○権取引」として取引できたら世の中が変わるものは他にあるだろうか?それはどのように機能するだろうか?


最後までお読みいただきありがとうございました。

一つでも頭の体操になるものがあれば嬉しいです。

昨年7月から同様の投稿を毎週しています。かなり溜まってきました。

へぇ〜というものが必ずあると思いますのでご興味とお時間があれば過去分もご覧ください。


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