あわげんた awagenta

京都嵐山出身。 関西でロックバンドGOZORO'Pのボーカルとして活動。 バ…

あわげんた awagenta

京都嵐山出身。 関西でロックバンドGOZORO'Pのボーカルとして活動。 バンド解散後、単身上京しソロアーティストとして一から東京で挑戦を始める。 趣味は散歩と読書。

マガジン

  • 音楽と凡人

    初めて人前で歌った自分の曲は"凡人"という歌だった。天才だと思って声を枯らしながら歌った。バンドを始めたのは十代の終わりで、バンドを諦めきれない今は二十代の終わりである。 
この連載では、頭を抱えながら過ごしたこの十年を小説のように掘り返しつつ、また、自分だけの日記のようにかっこわるい部分もさらけ出して書けたらと思う。毎週日曜に週間連載で、ありとあらゆることを書いていきたい。

記事一覧

クーラーありがとう

 エアコンって一体誰が作ってくれたのかと気になって調べてみると、印刷会社から湿度を下げる機械を頼まれたウィリス・キャリアという人が作ったものがその原型らしい。そ…

スタンド

 スタンドという2ピースロックバンドを組みました。長くなりますが読んでください、と云う文章があまり好きではないのでできるだけ簡潔に書きたいと思います。  ギオン…

役に立つ

 悪口を書き込んでいる人を見て、こいつらは何の役に立つのか、と書き込む人もまた同様の場合が多く、そしてこれを書いている自分もいつの間にかのマトリョーシカである。…

羅生門と炎上

 朗読CDで聞いて、また羅生門を読み返した。「雨にふりこめられた下人が、行き所がなくて、途方にくれていた」ところ、羅生門の上で死人の髪の毛を抜く老婆を見つけ、はじ…

からだとこころ

 追い焚き途中の風呂のような、空調の空気と地上の空気が混ざった空間を感じながら目的地へと急いだ。これは仕事であり、お金をもらうために支払う対価であり、そしてそれ…

夏休み

 小学四年生くらいの男の子3人が住宅街にある小さな公園に朝から集まっている。1人はブランコに揺られて、1人はそばで立って足を遊ばせて、1人の子が操作する携帯ゲーム機…

光るガラスとアルミニウム

 iPhoneの電源を消してみる。ただの金属とガラスの物体である。   光のないiPhoneを見ると行為としてはそれを指でこすっているだけであることに気づく。しかし電源を入…

石丸構文

 都知事選が終わり、石丸構文が話題である。自分は好きでも嫌いでもない。わからない。善か悪か判断がつかなかったので今回は票もいれなかった。  なぜ人気なのかと考え…

間違いこそ個性

 正しい人生を歩もう。過去にも未来にも一度も罪を犯さず、豊かな毎日を繰り返して清潔な病院で生涯を閉じよう。という価値観が良いか悪いかはわからない。正しい生活の中…

都知事選

 上京してきて2年。初めて投票する都知事選。  投票行動は毎回きちんとしていこうと思うが、政治に熱い思想があるわけではない。政治の動きを毎日監視するような暇があ…

読書note|『三島由紀夫 石原慎太郎 全対話』

三島由紀夫/石原慎太郎「三島由紀夫 石原慎太郎 全対話」 中公文庫2020年7月22日発行 272ページ  三島由紀夫が亡くなったのは1970年で、平成生まれの自分にとっては歴…

22世紀

 ドラえもんの誕生日は2112年9月3日だ。あと88年。22世紀はいつの間にかお爺さんを一人置けば届くような距離感になっていた。  実家にはドラえもんが全巻ある。子供の頃…

粗忽長屋

 広辞苑で「自分」と引くと「おのれ、自身。自己。」とある。「おのれ」を引くと「自分自身」とあった。「自身」には「じぶん。みずから。」とある。それ以上の参照をやめ…

再現できない瞬間を

 今やほとんどの人がスマートフォンを持っている。そしてそれには高性能のカメラが搭載されている。解像度の高い写真や映像を手軽に大量に残すことができるようになった。…

ザギンでメンラー

 東京に住んで二年になるが比較的いろんな場所へ足を運んでいるように思う。しかし銀座へ行くことはあまりない。用事がないからである。一度友達に銀座のbarに連れて行っ…

モウ春ヤネ

 漱石や熊楠の様に、グローバルな視点を持ちながら日本の土を踏みしめてたたかったかつての巨人たちが好きだなぁとしみじみ思いながら、都営大江戸線の深い地下へ潜って勝…

クーラーありがとう

 エアコンって一体誰が作ってくれたのかと気になって調べてみると、印刷会社から湿度を下げる機械を頼まれたウィリス・キャリアという人が作ったものがその原型らしい。それは20世紀初頭のことで、わずか100年ほど前である。人類は歴史のほとんどをエアコンなしに過ごしてきたらしい。近年の暑さを思うとちょっと信じがたい。

 昔は寝る前に1時間か2時間の切タイマーを設定していたが、上京してから夜通しクーラーをつ

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スタンド

 スタンドという2ピースロックバンドを組みました。長くなりますが読んでください、と云う文章があまり好きではないのでできるだけ簡潔に書きたいと思います。

 ギオンという3ピースバンドを今年の頭から動かし始めていましたが、それは頓挫しました。解散という言葉を使わないのは、それを使うに値するほどの活動をまだできていなかったからです。

 思えば解散という言葉をつかったのは2020年のGOZORO'Pの

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役に立つ

 悪口を書き込んでいる人を見て、こいつらは何の役に立つのか、と書き込む人もまた同様の場合が多く、そしてこれを書いている自分もいつの間にかのマトリョーシカである。いつの間にかのマトリョーシカって語感がいいなと思いながら書くこの文章もまた同様であって、これ以上書くことはなく、以下はリュウジのバズレシピを無断転載した方がいくらか世の中の役に立つかもしれない。

 役に立つ立たないなどといちいち考えるのは

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羅生門と炎上

 朗読CDで聞いて、また羅生門を読み返した。「雨にふりこめられた下人が、行き所がなくて、途方にくれていた」ところ、羅生門の上で死人の髪の毛を抜く老婆を見つけ、はじめは問い詰めていたが、最終的に彼女の着物を奪いどこかへ消えていく話である。

 高校の授業でどういう読解をしたか忘れたが、今の自分には貧しさと懲罰欲というテーマが浮かぶ。それは昨今のSNSの荒れ方と非常にリンクする。

 羅生門の世界は荒

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からだとこころ

 追い焚き途中の風呂のような、空調の空気と地上の空気が混ざった空間を感じながら目的地へと急いだ。これは仕事であり、お金をもらうために支払う対価であり、そしてそれで衣食住をととのえて日常を送るためである。

 あまりの暑さにくらくらしながら、俺は俺がどこへ向かっているのだかわからなくなる。一歩一歩が鉛のように重くはならないのだけれど、重くなったならばどうしよう、と考えながら一歩一歩と足は勝手に進んで

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夏休み

 小学四年生くらいの男の子3人が住宅街にある小さな公園に朝から集まっている。1人はブランコに揺られて、1人はそばで立って足を遊ばせて、1人の子が操作する携帯ゲーム機の画面を覗き込んでいる。
 そんな8月8日の風景を眺めながら、自分の視界はいつしかその戯れの中にいる子供らと同化する。彼らがどのような気分でその木陰を感じ、夏を感じ、また未来というものを感じていないかを自分は知っている。
 厳密にはきっ

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光るガラスとアルミニウム

 iPhoneの電源を消してみる。ただの金属とガラスの物体である。 

 光のないiPhoneを見ると行為としてはそれを指でこすっているだけであることに気づく。しかし電源を入れてそこに文字や画像が浮かび上がると笑ったり怒ったりして巨大な金が動いたり、人が消えてしまったりするのだから不思議だ。

 かといって僕は平成初期の生まれであって、電子機器を嘆く世代ではない。ゲームボーイアドバンスSPの発売が

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石丸構文

 都知事選が終わり、石丸構文が話題である。自分は好きでも嫌いでもない。わからない。善か悪か判断がつかなかったので今回は票もいれなかった。

 なぜ人気なのかと考えてみると、何も言っていないからだろうという結論に至った。
 明確な意見を言うと敵を作る。敵を作らないために何も言わないとなるとそれはそれで問題になる。
 そこで何も言わずに何かを言っている風にするために自然と生成されたのが石丸構文であろう

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間違いこそ個性

 正しい人生を歩もう。過去にも未来にも一度も罪を犯さず、豊かな毎日を繰り返して清潔な病院で生涯を閉じよう。という価値観が良いか悪いかはわからない。正しい生活の中に、美味いもん食いたい、好みの異性と過ごしたい、とかもある。異性というと適切でなく、好みの人間と言うべきか。

 あらゆるストレスが世の中から消えたら人は幸せになるのだろうか。嫌いな人間がいない世界の中で好きな人間に出会えるのだろうか。わか

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都知事選

 上京してきて2年。初めて投票する都知事選。

 投票行動は毎回きちんとしていこうと思うが、政治に熱い思想があるわけではない。政治の動きを毎日監視するような暇があれば、自分の頑張りたいことを頑張った方がよほど速く確実に生活が変わるし、その方が結果的に国全体に良く、そしてまたそれが個人にとっても良いというところにかえってくる。完全な政治などなく、利害調整でしかない。

 それにしても立候補者多すぎ。

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読書note|『三島由紀夫 石原慎太郎 全対話』

三島由紀夫/石原慎太郎「三島由紀夫 石原慎太郎 全対話」

中公文庫2020年7月22日発行

272ページ

 三島由紀夫が亡くなったのは1970年で、平成生まれの自分にとっては歴史の人という感覚だった。子供の頃からテレビでよく見かけた石原慎太郎とは八歳しか違わないが、この対談を読むまでは全く重なることのない二人であった。

 二人は共鳴するところもあるがその人間的な性質や方法において対照的であ

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22世紀

 ドラえもんの誕生日は2112年9月3日だ。あと88年。22世紀はいつの間にかお爺さんを一人置けば届くような距離感になっていた。

 実家にはドラえもんが全巻ある。子供の頃から何度も読み返した。2年前上京する時に漫画は一冊も持ってこなかったが、もともと自分の中で読むという行為のはじめにあったのは漫画であった。

 なぜこんなにも今ドラえもんが読みたいのか、わからないままヨドバシのオンラインショップ

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粗忽長屋

 広辞苑で「自分」と引くと「おのれ、自身。自己。」とある。「おのれ」を引くと「自分自身」とあった。「自身」には「じぶん。みずから。」とある。それ以上の参照をやめた。

 粗忽長屋という古典落語がある。江戸の寛政期(1789-1801)に元ネタができたらしい。
 浅草の街で身元不明の行き倒れがあり、人だかりができている。そこへ八五郎が通りかかり、倒れているのは自分の友人である熊五郎であるという。群衆

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再現できない瞬間を

 今やほとんどの人がスマートフォンを持っている。そしてそれには高性能のカメラが搭載されている。解像度の高い写真や映像を手軽に大量に残すことができるようになった。ただ自分の心に残るのは、その場所へ行けば誰でも撮れてしまうような写真よりも、二度と戻らない瞬間を切り取ったような写真である。

 音楽は時間がなければ存在しない持続的な音の現象であり、写真は時間が存在しない瞬間の光の現象だ。とは言っても実際

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ザギンでメンラー

 東京に住んで二年になるが比較的いろんな場所へ足を運んでいるように思う。しかし銀座へ行くことはあまりない。用事がないからである。一度友達に銀座のbarに連れて行ってもらったくらいで、銀座という地名を聞いた時に感じる距離感は上京前と相違ない。

 ただ銀座に一つだけ気になる店があった。ラーメン屋である。それは本店が京都にある店が東京に初めて出した店舗で、自分が以前働いていたラーメン屋の師匠の系列店だ

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モウ春ヤネ

 漱石や熊楠の様に、グローバルな視点を持ちながら日本の土を踏みしめてたたかったかつての巨人たちが好きだなぁとしみじみ思いながら、都営大江戸線の深い地下へ潜って勝ちどき駅で電車を降りた。

 最近は日銭を稼ぐ関係でタワーマンションからの眺めを見ることが多いが、一旦見慣れてしまうとこの鉄の山には生理的な感動はない。しかしそれを選択できるということに意味は存在していて、そのような意味は意図的にこの都会に

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