読書note|『三島由紀夫 石原慎太郎 全対話』


  • 三島由紀夫/石原慎太郎「三島由紀夫 石原慎太郎 全対話」

  • 中公文庫2020年7月22日発行

  • 272ページ


 三島由紀夫が亡くなったのは1970年で、平成生まれの自分にとっては歴史の人という感覚だった。子供の頃からテレビでよく見かけた石原慎太郎とは八歳しか違わないが、この対談を読むまでは全く重なることのない二人であった。

 二人は共鳴するところもあるがその人間的な性質や方法において対照的である。この対談を読むと石原慎太郎の頑固さや三島由紀夫のコンプレックスが二人の表情と共に伝わってくるような気がする(対談はテープレコーダーではなく速記で記録されているような発言があったのでどこまで正確かはわからないが)。

 あとがきに出てきた三島由紀夫のホームパーティーでの石原慎太郎と岡本太郎の三島の家の趣味についての会話は、三島由紀夫の作品だけを読んでいる時にはわからなかった姿が見えてくるようであった。

 三島が自決したのは日本のためではなく自分自身の虚構を閉じるためであったというのがよく見かける評価であるが、この悲しく孤独で芸術的な探究心を単純な嘲笑で終わらせてしまうのは勿体無い気がする。

 石原慎太郎は三島由紀夫について愛憎半ばとあとがきで書いている。三島が最後にとった選択とその虚構に対する同情を自分も感じて目頭が熱くなった。

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