夏休み

 小学四年生くらいの男の子3人が住宅街にある小さな公園に朝から集まっている。1人はブランコに揺られて、1人はそばで立って足を遊ばせて、1人の子が操作する携帯ゲーム機の画面を覗き込んでいる。
 そんな8月8日の風景を眺めながら、自分の視界はいつしかその戯れの中にいる子供らと同化する。彼らがどのような気分でその木陰を感じ、夏を感じ、また未来というものを感じていないかを自分は知っている。
 厳密にはきっと多くのものは悲しいくらいに変わっているのだろうけれど、自分にはその夏の風景をすぐそこにあった確かなものとして感じられるのである。

 子供らは無論知らない。子供の自分も知らずにいた。道ゆく大人たちは自分たちとはまったく隔絶された別の生命体であった。

 そこまで考えたところで、己を知る。優れているかはともかく、人は動物的に親になることによってはじめて、子供ではなくなるのだろう。

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