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音楽と凡人

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初めて人前で歌った自分の曲は"凡人"という歌だった。天才だと思って声を枯らしながら歌った。バンドを始めたのは十代の終わりで、バンドを諦めきれない今は二十代の終わりである。 
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記事一覧

音楽と凡人#01

 初めて人前で歌った自分の曲は"凡人"という歌だった。天才だと思って声を枯らしながら歌った…

音楽と凡人#02 "メンバーを探す旅、京都編"

 自分の出番を終え、汗ばんだ手で楽屋のギターケースをまさぐり、煙草を手にビルの外へ出た。…

音楽と凡人#03 "メンバーを探す旅、京都編2"

 夜中に開いている店はコンビニくらいしかない。昼の観光地らしい賑わいは嘘のように、18時以…

音楽と凡人#04 "メンバーを探す旅、大阪編"

 人生初の一人暮らしは大阪で始まった。メンバーを探すために拠点を大阪へと移すことを決めて…

音楽と凡人#05 "メンバーを探す旅、くだまき本舗そしてGOZORO’Pへ"

 大阪に引っ越して数ヶ月で私とベース、ドラムの三人が揃い、定期的にスタジオに入ってオリジ…

音楽と凡人#06 "しょうらいのゆめ"

 人生で最初に書いた将来の夢は「かしゅ」であった。小学校に入る前、6歳の頃にこどもちゃれ…

音楽と凡人#07 "初めてのスタジオ"

 私は中1のクリスマスに親にエレキギターを買ってもらった。赤いストラト型のギターで、フェルナンデスの入門セットであった。ギター本体、チューナー、シールド、ギターアンプ、ギターケース、ストラップ、ピック、そしてクリーニング用品とクロスという初心者にはうってつけのセット内容である。当時の日記には親への感謝の思いと絶対に続けるという意気込みが書かれていた。  初めてエレキギターの音を出した時の風景は未だに記憶に残っている。私は二階の奥の部屋でギターをアンプに繋ぎ、母と姉がいる前で

音楽と凡人#08 "特別でなく、当然のように"

 皆最初はモテたくてギターを始めるんだよ、という決まり文句がかつて聞かれたがギターを始め…

音楽と凡人#09 "初めてのライブ、Mステ"

 初めてライブをしたのは中学2年の文化祭の時である。生演奏ではなかったので、正確にはライ…

音楽と凡人#10 "進路選択、本との出会い"

 私は国語という教科が嫌いだった。その理由は問題に対する解答が明確でなかったからである。…

音楽と凡人#11 "現実は頭の中から"

 背負ったギターを自転車の荷台に軽く乗せながらガタガタと自転車を漕いだ。黒いギターケース…

音楽と凡人#12 "寄り道に世界は続いて"

 家から大学までは電車で1時間ほどであった。通っていた高校は自転車で20分もかからなかった…

音楽と凡人#13 "童貞とボブディラン"

 助手席の少し開けた窓から入り込む夜風が秋の京都の匂いとなびく長い髪の香りを運転席へ運ん…

音楽と凡人#14 "全て失っても、鏡の前にはただ俺がいる"

 「ここはもうちょっと力強く歌ってほしいかな」  ベースボーカルのトシに私は『凡人』という曲の歌い方を細かく指示していた。私はギタリストとしてこのスリーピースバンドを組んだ。初めて自分のオリジナル曲をバンドにおろし、その練習を近所のスタジオに集まって始めたところだった。  なんかなもっとこういう感じやねんな、と言いながら私は自分の前にセッティングしたマイクで歌ってみせた。このバンドでスタジオに入り始めた時、マイクはトシの前だけにセッティングしてあったが、スタジオの中で会話