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ドラキュラとゼノフォービア━5
啓蒙主義と自由主義の観点から、イギリスはユダヤ人問題を「排斥」ではなく「同化」で解決しようとしていた。また、できると考えていた。
しかし、大量の移民が流入したことによってさまざまな問題が大きくなるにつれて、ユダヤ人に対する見方が変化してきた。そしてユダヤ人に対して恐怖心さえ抱くようになったという。
「同化」に対する考え方に変化が起きたのだ。
丹治愛氏の著作『ドラキュラの世紀末~ヴィクトリ
ドラキュラとゼノフォービア━3
『ドラキュラ』が出版された1897年はイギリスのヴィクトリア女王の即位60周年━━ダイヤモンド・ジュビリーの年だった。大英帝国各地の軍隊(もちろん植民地を含む)がロンドンで祝典パレードを繰り広げた。
世界中に植民地がある大英帝国は、まさに「日の沈まぬ国」として絶頂期を迎えていた。
しかし、「盛者必衰」。頂点に達すれば、その先は停滞か衰退が待っている。イギリス人たちは得体のしれない不安を抱え
ドラキュラとゼノフォービア―2
丹治愛氏によれば、19世紀末ヴィクトリア朝のイギリスは、外国恐怖症にかかっていたという。それはどういうことなのか。
そしてその時期に出版された『ドラキュラ』というホラー小説が、イギリスを覆っていた外国恐怖症を背景に取り入れているのだともいう。
丹治氏が1997年に出版した『ドラキュラの世紀末』から、それをみてみよう。
イントロダクションとして、「ドラキュラの謎」と「ドラキュラの年は西暦
ドラキュラとゼノフォービア―1
『ドラキュラの世紀末』という本を読み返した。著者は丹治愛氏。1997年に東京大学出版会から出版されて、当時書店に出てすぐに購入したと思う。
なぜ、この本を読み直したのか。それはここ数年の日本や世界━━とりわけ「先進国」といわれた(というか自称している)西側諸国の、何とも言えない周辺国に対する焦りのような不安感が、この本の内容とどこか似かよっていると思ったからである。
この本の副題は「ヴィ