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〈書く事〉考

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#小説

創作で生計を立てるには(小説家・川越宗一)―文芸領域リレーエッセイ⑤

創作で生計を立てるには(小説家・川越宗一)―文芸領域リレーエッセイ⑤

2023年度に新設する文芸領域への入学を検討する「作家志望者」「制作志望者」へのエールとして、作家、編集者、評論家の方がリレーエッセイとしてお届けします。

今回は小説家の川越宗一さんのエッセイをご紹介します。

川越 宗一(かわごえ・そういち)

鹿児島県生まれ、大阪府出身。龍谷大学文学部史学科中退。2018年『天地に燦たり』(文藝春秋)で第25回松本清張賞を受賞しデビュー。短編『海神の子』(「

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在宅ライターとお金、「書く」ことと「読む」こと

在宅ライターとお金、「書く」ことと「読む」こと

いわゆる「1円ライター」について フリーランスになってからというもの、月末はたいていお金のことしか考えていない。というか、お金のことしか考えられないというような生活をしている。
 生々しい数字を挙げる気はないのだけれど、会社員を辞めて育児をしながら文章を書く仕事をはじめ、さいしょにおもったのがぼく自身がただ生きているだけでかかるお金が月に10万円ほどあるということだった。国保、年金、市民税、医療生

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「表現力」って何ですか?|王谷 晶

「表現力」って何ですか?|王谷 晶

はい、というわけで先月の宣告通り一年の半分が終わってしまったわけでございますが皆様いかがお過ごしでっか? 王谷晶である。

今年の上半期はとにかく全国、いやさ全世界的にいろいろなことが起こった。まだ収束していないウイルス問題、それに引っ張られるように各地で可視化された社会問題について、フィクション・ノンフィクション問わず大量のテキストが生み出されていくだろう。

こういう、大きなイシューについてい

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小説すばる新人賞歴代受賞者インタビュー「こうして私は作家になった」 第2回・篠田節子さん

小説すばる新人賞歴代受賞者インタビュー「こうして私は作家になった」 第2回・篠田節子さん

 『小説すばる』1月号よりスタートした、小説すばる新人賞受賞者によるリレーインタビュー企画。
 小説すばる新人賞出身の作家の方々に、創作活動の裏側から新人賞を目指す人へのアドバイスまで、幅広く語ってもらうコーナーです。

 第1回の佐藤賢一さんに引き続き、第2回は篠田節子さんにご登場いただきました!

 重厚なテーマと壮大なスケールの物語を支えていたのは、デビュー前後に書いた膨大な枚数の原稿。
 

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小説を書きあぐねているあなたへ

noteという場所柄、「小説を書きたい」と思っているけど、いつまでたっても書き出せない人、いますよね。

僕は、若いころから小説を何度も書いてみようとしたのですが、どうも途中で挫折してしまうんですね。

もういろんな設定の物語を、いろんな風に書いたの、すごくたくさんあったんです。でも、生まれつき飽きっぽいのか、どうも途中で投げ出してしまうんです。

ある日、「じゃあ超短編で良いから、とりあえず書い

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小説すばる新人賞歴代受賞者インタビュー「こうして私は作家になった」 第3回・荻原浩さん

小説すばる新人賞歴代受賞者インタビュー「こうして私は作家になった」 第3回・荻原浩さん

 『小説すばる』本誌上でスタートした、歴代の新人賞受賞者によるリレーインタビュー企画。
 小説すばる新人賞出身の作家の方々に、創作活動の裏側から新人賞を目指す人へのアドバイスまで、幅広く語ってもらうコーナーです。

 佐藤賢一さん、篠田節子さんに引き続き、第3回では荻原浩さんにご登場いただきました!

 老若男女にわたる登場人物と、多彩なテーマが魅力的な荻原文学。
その根幹には、プロの小説家として

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「文学なんか今時読まれない」に全力で抗う。ネット時代にも読まれる文学を作る。

「文学なんか今時読まれない」に全力で抗う。ネット時代にも読まれる文学を作る。

上記タイトルが、今年の私の目標です。

・「ネットの文章は「質より量」」という風潮に違和感がある人
・小説(特に純文学)が好きな人、書いてる人
・「良い芸術を作っても食べていけない」という現実に憤りがある人

にはぜひ読んでもらいたい。

■こんにちは、「ライヴが出来る小説家」、渋澤怜です。私はもともとずっと純文学を書いていたのですが、

「小説、しかも純文学なんてウルトラマイナージャンルを読む人

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「自由に書く」ということ

「自由に書く」ということ

先日、DANROの連載3本目が出た。

すると知人から「もっと読まれるような工夫をした方がいいんじゃないの?」という指摘があった。実はこの手の意見は初めてではなく、連載当初から何人かに言われている。

口調のニュアンスから推測する限り、たぶん否定的というよりは、なぜこんなわけの分からない書き方をしているのか、と不思議なのではないか。もっと分かりやすく、ウケのいい、バズるものを書けるのに、と買いかぶ

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文体って、一体なんのことなのか

文体って、一体なんのことなのか

2018年がもう直ぐ終わるけれど、この一年で最も素晴らしかった出来事は、文体とは何か、がわかったことだと思う。
ごめん、ちょっと興奮して、言いすぎた。
文体とは何か、の、片鱗がわかったことだと思う。

これから書くことは、ひょっとしたら、ライター1年目の人にとっても常識なのかもしれない。え、そんなことも知らずに20年近くライターやってたの?と言われるかもしれない。

なんだけど、わたしにとって、

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編集者が考える「原稿のレベルを上げるためにできること」【ポプラ社小説新人賞への道】

編集者が考える「原稿のレベルを上げるためにできること」【ポプラ社小説新人賞への道】

こんにちは。

「ポプラ社小説新人賞への道」もいよいよ終盤。
今回は、知りたい人が一番多いであろうポイント……

「どうやったら原稿の質があげられるか」についてです。

小説を書きあげたけど、そこからどうしたらいいのか分からない。
どうやったら「うまい小説」「面白い小説」にレベルアップするのか。
というか、小説ってどうやったら良くなるの?

そんな悩みを抱えている人もいらっしゃるのではないでしょう

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小説すばる新人賞歴代受賞者インタビュー「こうして私は作家になった」
第1回・佐藤賢一さん

小説すばる新人賞歴代受賞者インタビュー「こうして私は作家になった」 第1回・佐藤賢一さん

 『小説すばる』1月号より、小説すばる新人賞受賞者によるリレーインタビュー企画がスタートしました。
 小説すばる新人賞出身の作家の方々に、創作活動の裏側から新人賞を目指す人へのアドバイスまで、幅広く語ってもらうコーナーです。

 記念すべき第一回目は、西洋を舞台にした歴史小説で知られる佐藤賢一さん。
 デビューに至るまでの道のり、執筆上の工夫、作家としての今後の展望などなど、盛りだくさんの内容にな

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小説すばる新人賞歴代受賞者インタビュー「こうして私は作家になった」 第4回・村山由佳さん

小説すばる新人賞歴代受賞者インタビュー「こうして私は作家になった」 第4回・村山由佳さん

 『小説すばる』本誌上でスタートした、歴代の新人賞受賞者によるリレーインタビュー企画。
 小説すばる新人賞出身の作家の方々に、創作活動の裏側から新人賞を目指す人へのアドバイスまで、幅広く語ってもらうコーナーです。

 佐藤賢一さん、篠田節子さん、荻原浩さんに引き続き、第4回では村山由佳さんにご登場いただきました!

 胸締め付けられる恋愛小説はもちろん、海外取材をした作品や半自伝的な私小説まで、幅

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「12年間、小説家になることを諦め切れなかった期間は辛かったです。何が辛かったって、夢の諦め方がわからないことです」作家・芦沢央さんインタビュー

「12年間、小説家になることを諦め切れなかった期間は辛かったです。何が辛かったって、夢の諦め方がわからないことです」作家・芦沢央さんインタビュー

2012年に「罪の余白」で野性時代フロンティア文学賞を受賞してデビューし、いま、驚きと感動に満ちたミステリ作品で注目を集めている芦沢央さん。このたび、『今だけのあの子』刊行当時(2014年)に収録したインタビューを再掲します。

女性の友情をテーマに書かれたミステリー
 もし親友から結婚式の招待状が届かなかったら――。そんな「if」を思い浮かべたところから『今だけのあの子』の執筆はスタートした。収

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なぜ文芸メディアじゃないWEBメディアで「文学」をするのか?──多数派じゃないと生きられないわたしたち

なぜ文芸メディアじゃないWEBメディアで「文学」をするのか?──多数派じゃないと生きられないわたしたち

 ライターを職業としてはじめてまだ日は浅いけれど、そのなかで痛感したことがある。それは、「WEBを主戦場とするライター」は文章そのものだけで業界を生き抜いているというひとがまずいないということだった。
 もちろん、文章のクオリティは技術だけじゃなく経験や感覚に裏付けられるところもあるけれど、ぼくが言いたいのはそういうことじゃない。書き手を効果的にキャラクター化するプロモーション力とか、そういう文章

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