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本棚から1冊抜き取る。 ゆるく感想と本に関する思いでを。
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「美術手帖 アートと人類学」

「人類学」という単語につられて買いました。普段は美術手帖なんて買ったことありません。この本で取り上げられているのは映像人類学で、僕が期待していたような「民族誌」の類は載っていない。
気軽に映像が残せる今、人類学の形態も変わっていくんだなあ。

僕も一時期、遊牧生活を映像で残したら楽しそうだと考えていたことがある。遊牧がいかに大変な生活形態かを知らしめるような映像が撮

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「モロッコ革の本」 栃折久美子

留学記が好き。知らない人が外国に行って、知らない文化や生活様式に、あたふたしつつ適応していく話を読むのが楽しい。きっと書いている方も楽しいんだろうな。あんな人と、あんな会話をしたな…とか、あの人元気かな…とか思い出しながら書いているに違いない。

この本はルリユール(製本)を学ぶために留学した栃折氏の回顧録のようなもの。福知山の古本屋「モジカ」で見つけて買った。モ

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『古都』 坂口安吾

『古都』を読んだ。森見登美彦が紹介していたのだったかな?。読むに至った経緯はもう覚えていない。経緯どころか、作品の内容もそんなに記憶に残っていない。舞台が京都、それも僕の友人がちょうど住んでいる辺りだったのを思い出す。

作品には直接関係ないけれども、京都や滋賀に住んでいる人たちは、日本文学を身近なものとして楽しめていいなあという感想。特に僕は名古屋という不毛地帯で生まれ育っているから余計にそう感

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「宇宙のはじまり」 多田将

副題にあるように、すごい授業を文章化しています。
この本のすごいところは、全く理系の知識がなくても驚くほど分かりやすいところ。教科書に載っていた単語がぼんやりと思い出せれば、まず間違いなく頭に入ってきます。他の著作でも「ミリタリーテクノロジーの物理学」、「すごい宇宙論講義」などを読みましたが、もう全部おすすめします。ガチガチの文系だけど、宇宙とか興味ある…って方はぜひ

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「百鬼園随筆」 内田百間

内田百間はそれこそ国語便覧でしか知らなかった。教科書に作品が載っていた覚えもないし、でもなんか名前は覚えてる…。という煮えきらない存在だった。

昔からエッセイが好きで、家にあるものは全部読んだ。何がきっかけかは覚えていないが、小林聡美や佐藤愛子の作品にハマった。中学生くらいで向田邦子のエッセイを読んだが、面白いと思ったのは大学生になってからだ。モンゴルに留学中、現地の

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「考現学入門」今和次郎

師曰く、「パロディ学問」。しかし僕は卒論で参考文献として活用した。正直、何を引用したかとかは覚えていない。坂口恭平を初めて知った時のような衝撃=変な大人…‼、と静かな興奮を得たくらい。

パロディ学問と評されるが僕は読み物として楽しいと思う。後世に風俗を残すという点ではとても価値があるのじゃないだろうか。
昨今の旅行記マンガエッセイの先駆けでは、と勝手に思っている。

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「反芸術アンパン」 赤瀬川原平

変な大人シリーズではないですが、この人も変わってたんだろうなという人。何でもありの前衛芸術の全盛期のお話だったり。

僕は変な人が好きなのかもしれない。変な人の定義は曖昧ですが、僕の中では「養老天命反転地」みたいな人です。小学生の時に訪れた時の衝撃たるや。
「世間はこれを許すのか!意味が分からない!」
この人もそんな感情を想起させます。

大人はみんなしっかりして

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「チベットの先生」中沢新一

ケツン・サンポの伝記。これが人名だとパッとわかる人はほとんどいないと思う。僕もこの本で知っただけです。この人はチベット仏教のラマさんです。チベット仏教というと、ダライ・ラマが有名ですが、この本の主人公であるケツン・サンポはダライ・ラマのようなエリート僧ではありません。チベットに生まれた普通の人間が、精進と修行をひたすらに積み上げて徳の深いラマとなったのです。読んでいく

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「侏儒の言葉・西方の人」芥川龍之介

芥川龍之介。イケメンだなあと、国語資料集などで見るたびに思う。顔の造形だけではなくて、白黒写真だから雰囲気が出るのだ、という意見も聞く。

カシオの電子辞書の中に、文学集というデータが入っていた。「侏儒の言葉」もその中のひとつだった。文豪の小説以外の作品を読むのは初めてで、読んでみると意外と面白い。全部が全部理解できるわけではなかったが読み進めていった。その中

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「TOKYO 0円ハウス 0円生活」坂口恭平

これもまた参考文献のひとつ。この坂口恭平という人は躁鬱だそうで、今はセーターを編むことで精神の安定を保っているらしい。
自称、「建てない建築家」。その名の通り、法的には建築と呼ばれないような、小規模なモノを建てる。モバイルハウスというと分かりやすいかな。
この本は路上生活者の住居や、生活の成り立ちを分かりやすい図と文で紹介している。今和次郎の現代版と

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