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Note初心者です。のんびり気ままに、過去に書いたものや、思いついたものを投稿していけ…

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Note初心者です。のんびり気ままに、過去に書いたものや、思いついたものを投稿していけたらいいなあと思っています。 どこかの砂浜で、ガラス瓶が波に揺られて流れつくように、訪問した読者の方へ何か届けることができたら。そんな思いを抱えながら、文章を綴っていきたいです。

記事一覧

初夏、気持ち重ねて

 入院してから、2週間以上が経った。  窓辺から見える公孫樹は、前回の入院のときは黄色だったけれど、今は青葉を茂らせている。さわさわと風に吹かれる木々は、きらき…

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入院前、静かな湖の底に旅行鞄

 窓を開けると、涼しげで、羽衣のような初夏の風が舞い込んでくる。  さわさわと揺れる木々の葉は、しずかに歌っている。  入院前日の午後は、やわらかさで満ちている…

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3週間前
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初夏への移ろいに、思ったこと

 鈴がころんと鳴るように、青葉がやわらかに茂る5月。  祖父が長野県に住んでいることもあり、私は、家族と共に幼少期から長野県を訪れている。よく訪れるのは、祖父の…

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1か月前
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ナガミヒナゲシと人生訓

 2024年5月1日の朝の天気は、雨が降りそうなくもり。  春のまどろんだ湿気を頬に感じながら、近所の住宅街を散歩する。  最近、Googleレンズで草花の写真を撮り、名前…

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1か月前
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向かい風、逆風に春一番

 前回の投稿をしてから、2か月余りが経った。  愛犬の散歩をしていると、ホトケノザが鮮やかに色づいていて、「春が来たなあ」と、ほのかに嬉しい気持ちになる。    …

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3か月前
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新年が明けて

 あけましておめでとうございます。  新年が明けてから、石川県の大地震などを始め、心穏やかでないニュースが身を取り囲んでいる。  どうか、今日1日も皆さまが平穏に…

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5か月前
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初冬と忘れ物

 窓辺からみえる街路樹はいまや散り、寂しげに葉を揺らしている。   ある日、私が窓辺から目を凝らすと、通りを挟んで向かい側に、小さな託児所があることを発見した。…

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6か月前
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雨の日に、ぽつりと

 入院したばかりの頃は、誇らしげに葉を茂らせていた銀杏の木は、今や赤みがかったシナモン色に染まっている。足元には、はらはらと葉が落ちていて、灰色のコンクリートに…

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7か月前
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詩作「追憶の」

青と白にまぎれて ふっと息をこぼした 透明な魚が 目の前を泳いでゆく 白い花々に見つめられて ポケットにいちまいの葉を しのばせる 砂に埋まった木々たちを 波風が遠…

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7か月前
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落ち葉をふわりと散らして

 私が入院している部屋がある、七階の西病棟からは、やわらかな太陽の光に照らされて金色に染まる、銀杏の木々が見える。転倒などの危険性のために庭園には行けないため、…

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7か月前
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新宿駅に向かうバス車内で―「ある朝のできごと」—

 私はかすかな振動を感じて目を覚ました。目をうっすらと開けると、紺色の布がピンと張られた座席に、折り畳み式の小さなテーブルとドリンクホルダー、荷物をかけるフック…

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8か月前
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初夏、気持ち重ねて

初夏、気持ち重ねて

 入院してから、2週間以上が経った。

 窓辺から見える公孫樹は、前回の入院のときは黄色だったけれど、今は青葉を茂らせている。さわさわと風に吹かれる木々は、きらきらとスパンコールのように身を震わせているのだが、その様子が美しく、目に焼きつけている。

さて、入院前日に心配していた、「体重が増えること」も、「食事に向き合うこと」もしっかりと味わっている。

 治療を喩えるならば、暗い川にひきずられて

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入院前、静かな湖の底に旅行鞄

入院前、静かな湖の底に旅行鞄

 窓を開けると、涼しげで、羽衣のような初夏の風が舞い込んでくる。

 さわさわと揺れる木々の葉は、しずかに歌っている。

 入院前日の午後は、やわらかさで満ちている――。

 今年のゴールデンウィークは、病気の進行とともに、入院するか否か、非常に悩まされた。
 去年は就職活動で頭と胸を悩まされていたけれど、今年は入院することに悩むことになるとは。

 「よくもまあ、人生というものは分からないものだ

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初夏への移ろいに、思ったこと

初夏への移ろいに、思ったこと

 鈴がころんと鳴るように、青葉がやわらかに茂る5月。

 祖父が長野県に住んでいることもあり、私は、家族と共に幼少期から長野県を訪れている。よく訪れるのは、祖父の家がある上田市と、軽井沢。

 今年のゴールデンウィークは、祖父の家に寄った後、軽井沢を訪れることになった。

 そのため、現在、軽井沢のホテルでこの記事をしたためている。

 久しぶりに祖父の家を訪れると、薄紫色の花弁をつけた「マツバウ

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ナガミヒナゲシと人生訓

ナガミヒナゲシと人生訓

 2024年5月1日の朝の天気は、雨が降りそうなくもり。
 春のまどろんだ湿気を頬に感じながら、近所の住宅街を散歩する。

 最近、Googleレンズで草花の写真を撮り、名前を検索するようにしている。

 本日出会ったのは、「ナガミヒナゲシ」だ。橙色のワンピースをふわりと身にまとった少女を想起させる、可憐な花である。道路沿いによく見かけるので、名前は知らなくとも、見たことがある人は多いと思う。

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向かい風、逆風に春一番

向かい風、逆風に春一番

 前回の投稿をしてから、2か月余りが経った。

 愛犬の散歩をしていると、ホトケノザが鮮やかに色づいていて、「春が来たなあ」と、ほのかに嬉しい気持ちになる。
 
 新年ということもあり、前回には「頑張ろう」と宣言したものの、病気の恐ろしさに包まれて、一進一退の状態が続いている。一進一退の状態だからこそ、滓が溜まるように、現実で起きてくる問題が停滞してしまっているように感じている。

 この病気にな

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新年が明けて

新年が明けて

 あけましておめでとうございます。

 新年が明けてから、石川県の大地震などを始め、心穏やかでないニュースが身を取り囲んでいる。
 どうか、今日1日も皆さまが平穏に過ごせますように。

 今朝、愛犬を連れて近所の公園へ散歩に出かけた。冬の朝の寒さには厳しいものがあるけれども、背中に当たる太陽は、きらきらとあたたかい。薄氷のカーテンにくるまれたような心地を覚える。

 耳をすませば、カラスが大きな翼

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初冬と忘れ物

初冬と忘れ物

 窓辺からみえる街路樹はいまや散り、寂しげに葉を揺らしている。 

 ある日、私が窓辺から目を凝らすと、通りを挟んで向かい側に、小さな託児所があることを発見した。

 それからというもの、私は、毎朝託児所に連れてこられている子どもたちを、少しだけ観察するようになった。

 「早く行こうよ」と、小さな弟の手をひっぱる女の子や、行くのを渋っている男の子、去り行くお母さんを、いつまでもじっと見つめている

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雨の日に、ぽつりと

雨の日に、ぽつりと

 入院したばかりの頃は、誇らしげに葉を茂らせていた銀杏の木は、今や赤みがかったシナモン色に染まっている。足元には、はらはらと葉が落ちていて、灰色のコンクリートに彩りを添えている。
 
 コロナの影響で、外出ができないという病院の方針から、外出できないのであるが、傘をさしている人々を窓辺で眺めては「今は雨が降っているのか」とハッとさせられる。
 よく目を凝らせば、針のような細さで、やわらかに雨が降っ

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詩作「追憶の」

詩作「追憶の」

青と白にまぎれて
ふっと息をこぼした

透明な魚が
目の前を泳いでゆく

白い花々に見つめられて

ポケットにいちまいの葉を
しのばせる

砂に埋まった木々たちを
波風が遠くさらうので

落ち葉をふわりと散らして

落ち葉をふわりと散らして

 私が入院している部屋がある、七階の西病棟からは、やわらかな太陽の光に照らされて金色に染まる、銀杏の木々が見える。転倒などの危険性のために庭園には行けないため、残念ながら、澄んだ秋の空気を吸うことはできない。そのため、この木々たちが秋を感じる指針となっている。

 秋をイメージするとき、私は子どもの頃を思い出す。特に小学校の頃の記憶だろうか。

 私の小学校の校庭には、背の低い子どもがあんぐりと口

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新宿駅に向かうバス車内で―「ある朝のできごと」—

新宿駅に向かうバス車内で―「ある朝のできごと」—

 私はかすかな振動を感じて目を覚ました。目をうっすらと開けると、紺色の布がピンと張られた座席に、折り畳み式の小さなテーブルとドリンクホルダー、荷物をかけるフックが見える。

 下方を見ると、「走行中はシートベルトを着用して下さい」と記載された紙が網ポケットに入っていた。ああそうだ、新宿駅に行くために高速バスに乗っていたんだっけ、と陽光が射さない曇り空のように、ぼんやりとした頭で考える。バスの車内に

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