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ナガミヒナゲシと人生訓

 2024年5月1日の朝の天気は、雨が降りそうなくもり。
 春のまどろんだ湿気を頬に感じながら、近所の住宅街を散歩する。

 最近、Googleレンズで草花の写真を撮り、名前を検索するようにしている。

 本日出会ったのは、「ナガミヒナゲシ」だ。橙色のワンピースをふわりと身にまとった少女を想起させる、可憐な花である。道路沿いによく見かけるので、名前は知らなくとも、見たことがある人は多いと思う。

 ナガミヒナゲシについて少し調べてみると、アルカロイド性の毒性があるため、素手で茎を触った場合、かぶれてしまう恐れがあることが判明した。
他にも、ほかの植物を枯らす活性も持ち合わせているらしい。

 彼女たちが持つ「生命力」、「他者を寄せ付けない性質」に、大量に群生していたことが思い出されて、その強さに驚かされる。自然界を生き延びるためには、他者を驚かすくらいのタフさが必要なのだと。

 私は昨日、母に「前の私に戻ってほしい」と言われた。
 すなわち、病気になる前の自分になってほしいと。今の私が否定されたようで、とてもショックだった。

 私も、食べ物のことばかり考えている今の私は嫌だけれど、しかし元の私に戻りたいわけではない。以前の私は、常に自分を「ダメ」と縛り付け、自分自身を責めてばかりの性格だったからだ。

 だから、病気が治るとしても、元の私の着地点に「戻る」のではなく、数センチズレたところに、着地するような気がする。そうすることで、本来の自分と一致して、ありのままの自分を愛せるようになるのだろう。

 ナガミヒナゲシの防衛には、目を見張るものがある。

 私にとって、摂食障害も、自分には分からないが——ある種の防衛術、なのだろう。以前の、自分をいじめていた「私」から逃れるための、ささやかな抵抗だったのだと思っている。

 ささやかな抵抗は、私の人生を変えるくらいに大きな渦となって私を苦しめているけれど、その先には澄み切った空がある、と信じている。

 今は辛いことばかりだけれど、その辛さをたっぷりと味わってみようではないか。

 ときに、自然界から生きるコツを教わることがあるものだ、としみじみと感じた、ゴールデンウィークの半ばであった。


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