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21世紀の資本論 マルクスを乗り越えて/トマ・ピケティ

こんにちは!
「noteの本屋さん」を目指している、おすすめの本を紹介しまくる人です!

 わたしが今回ご紹介するのは、世界に衝撃を与えた『21世紀の資本』。あまりに有名な本ですし、読まれた方も大勢だと思われます。
 しかし、わたしの愛読書なので、やはり紹介せずにはいられません……。

 『21世紀の資本』は、18世紀から21世紀までの200年以上にわたる所得と富の分配に関する膨大なデータを分析し、資本主義の構造的な問題点を浮き彫りにしています。本書の中心となるのは、「r > g」というシンプルな不等式。これは、資本収益率(r)が経済成長率(g)を上回るという経験則を表現したものです。この不等式が意味するところは、資本を持っているだけで、労働によって得られる所得よりも多くの富を得られるという現実です。つまり、資本家は何もせずとも富を増やし続け、労働者との格差は広がる一方なのです。

 現代の格差社会の仕組みや資本の法則を明らかにした、誰もが読むべき1冊です。

 今更感はぬぐえませんが、ピケティが説く資本の仕組み、この本の凄みについて、くわしく解説していきます!


『21世紀の資本』は、フランスの経済学者トマ・ピケティが2013年に発表した著書です。日本語版は2014年にみすず書房から出版されました。本書は、18世紀から21世紀までの所得と富の分配に関する膨大なデータを分析し、資本主義の構造が長期的には格差を拡大させることを論じています。

 主な論点は以下の通り。

資本収益率 > 経済成長率

資本収益率(資本で稼げる利益の割合)は、経済成長率よりも常に高い傾向がある。つまり、資本を持っている人は、働いて稼ぐ人よりも多くの利益を得ることができる。資本家はその富をより早く増やすことができ、労働所得だけでは富を増やすことが難しくなる。このため、格差が拡大していく。

r > g

本書では、資本収益率をr、経済成長率をgと表記。上記の論点を式で表すと、r > gとなり、これが本書の核となっている。

資本主義は必然的に格差を生み出す

 さきほども述べた通り、r > g である以上、資本を持っている人は、働いて稼ぐ人よりも富を蓄積していくことができてしまいます。そのため、資本主義は必然的に格差を生み出すシステムであるという結論にいたるわけですね。

20世紀の格差縮小は例外

 20世紀前半には、世界大戦や大恐慌といった例外的な出来事によって、格差が一時的に縮小した。しかし、ピケティはこれを例外的な現象と捉え、歴史的には格差拡大が一般的であると指摘する

現代における格差拡大の要因

 ピケティは、現代における格差拡大の要因として、グローバル化、技術革新、金融化などを挙げる。これらの要因が、資本収益率を高め、労働所得の伸びを抑制することで、格差を拡大させていると分析する

格差拡大の帰結と未来への影響

 ピケティは、格差の拡大が、経済の不安定化、社会の分断、民主主義の危機などを招く可能性があると警告する。また、富裕層が経済や政治を支配するようになり、社会全体の活力が失われることについても懸念する

格差是正のための政策提言

 ピケティは、格差を是正するために、累進課税の強化や国際的な資本課税の導入などを提言している。これらの政策を通じて、資本収益率を抑制し、労働所得の分配を増やすことで、格差を縮小できると考えている

 そして、この本のすごみは、18世紀から21世紀までの所得と富の分配に関する膨大なデータを分析しているところにあります。それも各国のデータをすさまじいボリュームで! 読まれた方は、さぞおどろくでしょう……。

  • 所得税申告書 フランス、イギリス、アメリカ、スウェーデン、ノルウェー、イタリア、ドイツ、スペインなどの国々における所得税申告書データ

  • 富裕層の資産データ フォーブス富豪榜やクレジット調査会社による富裕層の資産データ

  • 遺産相続データ フランス、イギリス、アメリカなどの国々における遺産相続データ

 これらのデータを分析するために、ピケティは様々な統計分析手法を用いています。経済学の手法としても参考になるので、載せておきますね。

  • パレート分布 所得や富の分布が、上位20%の富裕層が全体の80%の富を握るという法則

  • ジニ係数 所得や富の不平等度を測定する指標

  • 累進課税シミュレーション 累進課税制度が所得格差にどのように影響するかをシミュレーションする手法

影響

『21世紀の資本』は、経済学だけでなく、政治学、社会学など様々な学問分野に大きな影響を与えました。また、本書は、世界中の政治家や経済学者による格差問題への議論を活発化させるきっかけとなりました。

まとめと感想

 初めて『21世紀の資本』を手に取った時、正直、経済学なんて難しくて自分には関係ないと思っていました。しかし、ページをめくるたびに、衝撃的な事実が次々と突きつけられ、私の価値観は大きく揺さぶられました。

 本書で最も印象に残っているのは「r > g」という不等式。資本収益率(r)が経済成長率(g)を上回るというこのシンプルな事実は、資本を持つ者が労働者よりもはるかに有利な立場にあり、格差が拡大する構造を浮き彫りにしています。これまで、努力すれば報われると信じてきましたが、この本を読んで、資本を持たない者がどれだけ努力しても、資本を持つ者に追いつくことは難しいという現実に直面しました。

 20世紀には戦争や恐慌によって格差が縮小したこともありましたが、それはあくまで一時的な現象。グローバル化や技術革新が進んだ現代では、格差は再び拡大の一途をたどっています。この事実にも私は強い危機感を覚えました。このままでは、経済は不安定化し、社会は分断され、民主主義さえも危機に瀕するかもしれない。そんな未来を想像すると、いてもたってもいられなくなりました。

 しかし、ピケティは解決策も提示しています。累進課税の強化や国際的な資本課税の導入など、格差を是正するための具体的な政策を提案しているのです。この本を読んで、私は無力感に襲われると同時に、希望も感じました。私たち一人ひとりがこの問題を真剣に考え、行動を起こせば、より公正な社会を実現できるかもしれない。そう信じたいですね。

『21世紀の資本』は、経済学の専門的知識がない私にも理解できるよう、平易な言葉で書かれています。しかし、その内容は非常に深く、私たちが生きる資本主義社会の根幹を揺るがすものです。

 若い頃、マルクスの『資本論』を読み、資本主義の仕組みに衝撃を受けました。弁当屋のアルバイトで得る時給が、自分が作る弁当の価格よりも低いという現実に直面した時「単純再生産」や「生産物からの疎外」といった概念が、まさに自分の置かれた状況を説明していると感じました。マルクス主義者ではありませんが、この経験は、経済や社会の仕組みに対する関心を深める大きなきっかけとなりました。

『資本論』はセイ等の引用ばかりですが、『21世紀の資本論』はピケティの考察に一貫しています。『21世紀の資本論』との出会いは、私にとって大きな転機となりました。経済や社会の問題に関心を持ち、自分なりにできることを考え、行動するきっかけを与えてくれたのです。
 
 もしあなたが、今の社会や収入に漠然とした不安を感じているなら、ぜひこの本を手に取ってみてください。きっと、あなたの世界を見る目が変わるはずです。

読むだけで世界が変わる。資本主義の核心に触れる。
『21世紀の資本』を手に取ってあなたの視点を一新し、
公正な社会への一歩を踏み出しませんか?

【編集後記】
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