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書評

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#海外在住

逃亡

逃亡

今の職場に就職したとき、先輩が病院内を案内してくれたときの言葉が忘れられない。
そのフロアは片側が産婦人科、もう片側が内科系の一般病棟と血液内科だった。

「Here, people are born here. And the other side, people are dying there. It's our whole life. Haha!」

ニコニコしている先輩を見ながら、あぁこの

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ヒツジ【江森敬治「秋篠宮」書評】

ヒツジ【江森敬治「秋篠宮」書評】

日本の皇室というものは世界でも指折りの”伝統的な組織” であるようで、時折現在の居住国でもネットニュースを見かける。外国人が日本の皇室に興味があるのかは謎だが、砕けた言葉でいえば「ガチガチの体制」であることは否定できない。

アマゾンのオススメに挙がっていた「秋篠宮」をさくっとkindleで読んでみた。秋篠宮家の立場、役職などについての解説は省略するとともに、連日の報道については言及せず書評を展開

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社会のきまり【木村敏「異常の構造」書評】

社会のきまり【木村敏「異常の構造」書評】

戦後、日本における精神医学界の筆頭といえば、中井久夫と木村敏ではなかろうか。先日中井久夫さんが亡くなり、なんと木村敏さんがその一年前に亡くなっていたことを知った。

10年ほど前になるだろうか、はじめて読んだ統合失調症に関する学術書の著者が木村敏だった。少し昔に書かれたもので「分裂病」という言い方をしていた。

数年ぶりに木村敏を読んだ。彼の、世界を見る目がわたしは好きだ。それは精神医学にとどまら

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【ゴーゴリ「死せる魂」ちょっと書評】

【ゴーゴリ「死せる魂」ちょっと書評】

noteにいると、このような眠りなど得たことのないような、この先も得ることがないような、頭が回り、繊細で、生きづらそうな人が、たくさんいるようにみえる。だけども現実世界では一向に出会わない。一体そういうひとたちはどこで生きているのだろうか。じつに不可解である。

ゴーゴリ「死せる魂」を読んだ。訳は工藤精一郎。
小さな都市に現れた、謎の紳士チチコフ。彼は社交の場に顔を出し、あっという間に名声と人気を

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もはや人間でさえない【No Longer Human 「人間失格」漫画版(伊藤潤二)English Edition書評】

太宰治の「人間失格」を漫画で読んだ。

伊藤潤二の表現力がもう才能の塊すぎて言葉が出ない。

太宰の原作にはないいくつかのエピソードとオリジナルの結末。
それでもストーリーの軸と、" 人間の弱さを徹底的に追求する" という作品のコアは十分に保たれ、漫画でしか感じられない、目に見える" 悲惨さ" と" 狂気" が並外れた画力で描かれる。

すごいよ、太宰はもちろん、伊藤潤二がこんなに並外れた作家だっ

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レインとカフカとシェイクスピア【引き裂かれた自己(R.D.Laing)から見るカフカの魅力】

レインとカフカとシェイクスピア【引き裂かれた自己(R.D.Laing)から見るカフカの魅力】

レインの『狂気の現象学』の改訳版である、『引き裂かれた自己』天野衛訳を読んでいて目にとまった箇所があったので紹介させてほしい。

ロナルド・ディヴィッド・レインは20世紀イギリスの精神科医。
狂気を了解可能なものとして認識する論文を数々発表。統合失調症をメインに、" 人が狂気を作りだし、しかし人との関係が患者を治療する" いう寛解モデルを実際の臨床を通して世間に伝えた。

レインの研究はざっくり言

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津軽散文【太宰治『津軽』引用】

津軽散文【太宰治『津軽』引用】

太宰が好きだ。
彼の文章を読んでいると、その孤独と繊細さがありありと伝わってきて、くるしい。
まるでわたしじゃないか。
人を訪ねて、誰かの機嫌がわるいと、いつも自分のせいかと思う、と何度も書いている。

最近、再編された彼の私小説をいくつか連続して読んだ。
『思い出』『冨嶽百景』『帰去来』『故郷』と『津軽』

孤独な人だと思う。

幼少期の環境か、もともとの性格かは今となっては分からぬが、彼は彼と

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死刑【『監獄の誕生』ミシェル・フーコー】

死刑【『監獄の誕生』ミシェル・フーコー】

甚だおぞましい話であるが、わたしが文学に溺れたきっかけは「監獄」と「死刑」である。

10代になったばかりの頃、『アンネの日記』を読み、そのあとにフランクルの『夜と霧』、収容所の魅力に溺れ、石黒謙吾の『シベリア抑留』、ソルジェニーツィンの『収容所群島』を読んだ。

続いてユゴーの『死刑囚最後の日』ジュネの『花のノートルダム』に『薔薇の奇跡』。

ああ美しい。

 

前置きが長くなってしまったが、

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医学と居酒屋【ロルカ詩集】

医学と居酒屋【ロルカ詩集】

今学生に戻れたら、勉強したいことがたくさんある。大学にだって進学するだろう。
けれど社会人経験を積んだから、今こう思う。

人生はそのようにできているらしい。

今のポテンシャルを中学生や高校生で持っていたら、という考えそのものが幻想なのだ。

生きた時間が長くなれば好奇心の幅が広がるのは当たり前だ。

ロルカの詩集にはじめて出会ったときのことは忘れない。

店長になったばかりの頃、たった2日間だ

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現代では、いかにも起こりそうな単純な物語が最も異様な話とされている【ゴーチェ「オニュフリユス」書評】

現代では、いかにも起こりそうな単純な物語が最も異様な話とされている【ゴーチェ「オニュフリユス」書評】

19世紀フランスの作家、ゴーチェをご存知だろうか。

数年前、ネルヴァルに関する著書を、(日本語に訳されたものは)おそらく端から端まで読んだ。哀れなネルヴァルの人生には親しき、心優しい友人テオフィル・ゴーチェ(通称テオ)の存在が目立つ。

その年に、ゴーチェの『若きフランスたち』(井村実名子訳)を読んだ。いかにもフランス文学らしい、饒舌で、だけども厭らしくない、大変美しい文章を書く人だなあと思った

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