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高屋敷坂
2023年9月9日 11:50
くもり硝子の小窓から三日月が ひっそり こんばんは犬のきば 鋭利につなぐ空のすきま 黒雲をてらす琥珀色のひかり夜空の切傷のように畏怖の念や威厳が心にふかく とけこんでゆく月はとても 優美であった
2023年9月8日 11:31
吹くかぜにたばねた髪をゆらしている格子から陽のおちる影せわしなく愛想はかなた仕度して湯気をたちこめ味をみるただいまと近所の子ども帰りつきうつうつ待つわひどいひと
2023年9月7日 11:15
秋の野草をゆらしてるくるくる ひらひらひくくまうそこへもう一人やってきてバレエを優雅にみせつける陽の光に火傷し 離ればなれそして男の子は「あれは紋白蝶だよ」と指をさして笑った
2023年9月6日 11:44
木枠のまどから早朝、秋の水風とともに、ねている私の顔をなでた。麦酒のにおいの排気ガス。やさしくゆれる機械の音。嫌なしらせに気づきしも、まぶたはとじたままでいる。なにも告げずに出ていくのは、小雪のおりたつ少しまえ。寂しくなって、悔しくなって、目頭がふつふつあつくなる。
2023年9月5日 11:12
秋ぐちに咲いている花よ、花よ。ほそ風にゆれて、たえ忍ぶか。水をふくんだ、透明な、水色の空のした。まだ、昨晩には咲いていなかった花よ、花よ。いつしか茶色の小山がそこにあり、かたわらに寝そべっていた花よ、花よ。なまえは覚えてはいないけど、幼子のつめのように、小さくうるおい、愛らしかった花よ、花よ。野花はやがて見向きもされず、下衆とともに冬をむかえ、また秋ぐちを待つのかい
2023年9月4日 11:20
白い粉雪につつまれたかたちさまざま 砂糖菓子金色にひかる 崇高なカンカラ箱から 音がするふってふって たしかめるやわらかい音は 期待でいっぱいつめたい音は 悲しみでいっぱいさいごにさいごに 手に落ちたピンク色の まるい砂糖菓子
2023年9月3日 11:06
曇り空した かけていきいそいで帰ろ 午後六時気持ちはさきに 足おそくつまづきころぶ せまる黒膝の頂点 やけどして電流はしる 汗をかくどくどくはずむ 進みだす今はほっとけ 痛くない
2023年9月2日 11:44
さらさらさら天からしずくが舞いおちる風と水のパレードが白いあさからパッパラパ色とりどりの傘の花人々しずかにうつむけば咲いた花の舞台へタンタカタン
2023年9月1日 11:36
できないことができるようになるちょっとでもこころが すきとおるならせいちょうの あかしこどものようにとびはねて こえをあげてめいっぱい じしんをもてたらあしたがもっと せんめいになる
2023年8月31日 11:23
ひまわりの花びらが ひとつじめんへ まうひらり ひらりちゃくちは しずかひまわりの黒いたね ふたつじめんへ とぶぽろん ぽろんちゃくちは はずむひまわりの背たけは いつつじめんを みるゆらり ゆらりかぜは そよぐ
2023年8月30日 11:02
あついあつい夏がこの四季というなかから音もなく なにもなくこつぜんと 姿をけしたなら祭りはなくなり 花火はきえ傑作の山車 夏料理青い海 みずみずしい野菜ひまわり あさがおみんな なかったことになるせんぷうきの風にふかれ頭をとかしていたそんな日は 八月三十日
2023年8月29日 10:59
お弁当のはこをしずかにひらきいろどりゆたかな 花畑白いごはんにはゆらがぬつぼみ赤々と ひろがる光線口にほおばり 幸せになればちくっと さされて 腕をみる白い腕には赤々と ひろがる小山ができた
2023年8月28日 11:24
朝日がのぼって 光さす頬をくすぐられ頭のひびきに 目をさます鳥のさえずり二輪車のベル雲はゆうゆうと時はすすむ朝は いちばんゆううつな時間
2023年8月27日 11:34
よろこびは きいろいかりは あかいろかなしみは あおいろたのしさは きみどりこの よっつの感情をこの よっつの色彩をいったい ぜんたい誰がきめたんだろうだれが よろこびは あかるいとだれが いかりは しゃくねつとだれが かなしみは つめたいとだれが たのしさは はずむと誰がきめたんだろうわたしは おりがみをおったきょうは 晴れ間らしい