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心理的描写の作品

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日常の心理的描写をもとに書いた作品をまとめてみました。
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記事一覧

言葉の宇宙に溺れていくように

言葉の宇宙に溺れていくように

誰かの言葉によって救われ
誰かの言葉によって傷つけられることがある。
顔の見えない言葉でこの世界は溢れている。
夜空に広がる星たちのように
簡単に触れることができる。
私の心を軽くした言葉も。
希望を見せてくれた言葉も。
涙を見せてくれた言葉も。

誰かから直接受け取る言葉よりも
関わりのない人から受け取る言葉に
ほんの少しの期待と恐怖感の両方を持ちながら
私も目の前に広がる宇宙に
自分の言葉を投

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侵食と多様性

侵食と多様性

身に覚えのある胸騒ぎが私のもとへ訪れた。
何も考えられないほどの混乱と強いめまいが
同時に襲いかかった。
私は誰かの基準、価値観に侵されている。
期待、責任、役割、苛立ち、蔑んだ眼差し。
それらを同時に処理し切れなくなった
私に告げられたのは
適応障害という4文字だった。

私自身がこの先をどのように歩むべきなのかを
問われた瞬間で、他人の基準や価値観に
応えることのできなかった私自身と
私の価値

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唯一無二を追求した旅路の果てに

唯一無二を追求した旅路の果てに

唯一無二の魅力、唯一無二の声、唯一無二の美しさ。
誰もたどり着けないくらい
自身の唯一無二な部分を探す旅を
私はずっと続けている。

私は容姿に恵まれたわけでも
運動神経が抜群なわけでもない。
輝かしいほどに綺麗な声も持ち合わせていない。
それでも追求することを止めずに歩いていた。
目の前に誰にも手にできないものがあることにも気づかないまま。

テレビに映る容姿端麗なあの人も
ステージ上で思いのま

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夕暮れが教えてくれた温もりと居場所

夕暮れが教えてくれた温もりと居場所

淡い夕陽がいつもの帰り道を照らし出した夕方のこと。
大好きなあの人が
少し後ろから走ってきて私に声をかける。
お昼の授業のこと。学校での噂のこと。
気になっている謎のAさんのこと。
それから毎日一緒に帰ることになる未来は
少し先だということを2人はまだ知らないでいる。

小さな頃から空を眺めること大好きだった私。
空を飛ぶ飛行機の行き先と空の向こう側に広がる景色を
いつか見てみたいと密かな憧れを抱

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夏を愛せるひとつの理由

夏を愛せるひとつの理由

天窓から入った
日差しの暑さに起こされた午前9時。
輝かしい日光の隙間から彩度の高い青さが
ほんの少し窓の枠内に広がっている。
外に出るのが億劫になるこの時期を
唯一愛せる理由がある。

深く、濃く、どこまでも果てのない
青いキャンバスに描かれた純白のお城。
暑さで歪む道路の境界線。
ボトルに滴る水滴が儚く落ちる光景。
死者を迎え供養するお盆。

眩しいほどの生命たちの輝きや彩度と
生前の思い出と

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夜に魅せられた時の話

夜に魅せられた時の話

誰もいない道路の真ん中を得意気に歩いた。
澄んだ空気と夜空を纏いながら。
昼には人通りが多い道も
180度景色が変わるのが夜のいいところだ。
この道のもつ様々な表情を私は少し知った気でいる。

一歩歩くたびに静かに響く私の足音を聴きながら
少し先にある消えかけた街灯が
点滅するのを見るのが楽しみだった。
この瞬間の私は誰よりも強くて無敵で
まるで夜を独り占めしたかのような
そんな気分に襲われている

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心の調子と見えない世界との繋がり

心の調子と見えない世界との繋がり

3年振りくらいに心が悲鳴をあげた。
たくさん浴びせられた言葉たちを
受け止め切れず、閉ざされていたはずの
心の扉は無理矢理に開かれた。

そして、心の調子が悪くなり
様々な感情が溢れ出してくる瞬間に
この世のものではない何かがやってくることがある。
私は俗に言うこの世に存在しない何かが
日常的に見える存在ではない。
いや、見えなくなったと言うのが正しい表現かもしれない。

幼い頃は視覚的にも見える

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作者A

作者A

まとわりつくように
全身に絡みつく熱さが私を呼んだ。

窓の隙間から微かに漏れる風の音
絶えず刻み続ける秒針。
私の意識が遠のいてる瞬間も
止むことのないものたちの鼓動が
静かに響いている。

カーテン越しに入り込む
午前2:00の月明かりが反射し淡く天井に触れていて
白く照らされた天井と私は
にらめっこをしている。
あと数時間で夜が明ける。

たまに呼ばれて目が覚めるこの瞬間は
決まっていつも過

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創作

創作

創作。
[新たに何かを創り出すこと。生み出すこと]
私は常に囲まれている。
私の知らない誰かの創作物に。
手に取るもの。
身に付けるもの。
食べるもの。
全てが誰かの創作によって生まれたもの。

数え切れないほどにある
創作物たちに込められた思いや背景を
私たちは知らずに生きている。
目に映るものたち全てが誰かによって
生み出され、名付けられたものであるのなら
テレビに映るあの人も
信号を待ってい

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ため息

ため息

ふう。と1つ、ため息をついた。
いつものように見る街並み。
いつものように歩く歩道。
いつものように青い空。

なにひとつと言っていいほどに
私の周りにあるそれらは
変わらずにそこにある。
ひとつ、またひとつと
私の心は重くなったり
軽くなったりを繰り返しているのに。

過去を思えば悔やむこと
未来を思えばほんの少しの希望と
目の前にある不安とが入り混じった景色が
常に私の中でぐるぐると回り続けて

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はじまりの言葉

はじまりの言葉

夏がはじまり迎えた7月。
眩しげな日差しと共に歩き出した。
雨が降る前の湿気を纏いながら
大都会のど真ん中へと進んでいく。

今この瞬間に見えたこと。
ずっと前から持ち続けている感情のこと。
誰かから受け取った気持ちのこと。
正解のないとても複雑で
それでいてはっきりとそこに在るものを
この手でしっかり握りしめながら
過ごしている。

いつからなんてわからない。
気づいたその瞬間から
無自覚に私の

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