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福祉の仕事

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仕事中に気づいた発見や喜びを書いています。
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#障害者

2月のプラネタリウム

2月のプラネタリウム

今年の三月に退職をしてから
スピッツの「スワン」という曲を一人で繰り返し聴いている。

【星空を見るたびに思い出す さよならも言えないままだった】

今年に入り、もう何回聴いただろうか。
ただひたすらにその曲を聴き、私はそっと目を閉じる。

 
 
 
 
 
 
 
私はかつて障害者福祉施設で、正職員として働いていた。

その施設は生まれつきもしくは人生の途中で何らかの事故や病気の影響で
身体か

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男性利用者の性的欲求

男性利用者の性的欲求

仕事柄、男性利用者からデートに誘われたり、告白されたり、求婚されたりしたことがある。

 
でもそれは私に特別魅力があるわけではなく
障害者施設で働いていると異性の職員に利用者が恋心を抱きがちなのだ。

家と施設が世界の中心である利用者にとって
職員はやはり特別な存在になりがちなのであろう。

 
利用者Aさんは同僚Bさんを熱狂的に慕っていると聞いた。

二人きりになりたがるとか、二人きりだと体を

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自閉症の僕が跳びはねる理由・他/東田直樹

自閉症の僕が跳びはねる理由・他/東田直樹

以前、前の職場の施設長から薦められ、内容が気になったので購入。

 
とても珍しい、自閉症の方自身が書いたエッセイなのだが、目から鱗と言うか、読んでいてハッとすることがとても多い。

 
以前NHKに出演したらしいので、YouTubeで動画も見たのだが、作者の東田さんはこんな文章が書けるの!?と目を疑うような重度の自閉症だった。
会話ができない方が流暢な文章を書けているのだ。

ビックリした。
 

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足踏みにチャレンジ

足踏みにチャレンジ

ある利用者が施設の後
親子で参加するヨガ教室に行ったらしい。

ヨガの他にも簡単なストレッチやダンスもやったとか。

 
私の職場には月一回ダンス教室があるが
難易度が高く
ダンスが得意な方はいいが
苦手な方はついていけなかった。

難しすぎて不穏になったり
手持ち無沙汰になったり 寝てしまう方もいた。

 
だからヨガならいい気がした。

施設のダンスはアップテンポだが
ヨガならゆったりだろう。

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ニックネームは虐待なのか

ニックネームは虐待なのか

前の職場では入職当時
利用者をくんやちゃんづけで呼んでいた。さんの方もいた。

 
それから数年後
施設長から急に「くんづけやちゃんづけは利用者を下に見ていて虐待にあたる。」と言い出し
さんづけに統一された。

 
だが
利用者の一部からは「ちゃんづけで呼んでほしい。」と要望があった。

 
利用者が望む言い方であえて呼ばないのは
本当にその人を尊重しているといえるのだろうか。

そんなことを私は

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健常者より立派です。

健常者より立派です。

ある利用者はタバコを吸う。

施設では吸っていない。

 
うちの施設はタバコを吸う場所がない。
その人しか吸わないし
その人が利用するまでは
誰も吸わなかったからだ。

本人も保護者も施設でのタバコを望まなかったため
施設では吸わなかった。

 
だが
自宅やGHではタバコを吸っているらしい。

日中は吸わず
限られた場所では吸い
それでバランスがとれているのだと思っていた。

 
だけど
ある

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「あの子は普通なの?」

「あの子は普通なの?」

ある日、私は有給をとった。

その日はポスティングの日で
チラシ量は多く
私は内心シメシメだった。

 
だけど私の小狡い気持ちをまるで見透かしたかのように
私が休んだ日はポスティングをやらなかった。

 
更に
配る範囲が広かった。

 
世の中とはそんなもんだ。

 
 
その日は曇りだけど蒸し暑く
時折吹く風が気持ち良かった。

 
多動の方が一緒だった為、気を張っていたが
なんとか無事終わ

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日本地図を描く

日本地図を描く

最近、某利用者の絵に注目している。

 
様々な絵や写真を見せると
上手に真似て描けているからだ。
ジャンル違いの絵を真似られるというのは
とてもすごいと思う。

 
保護者は「うちの子は絵なんて描けない。」と言っていたが
むしろ利用者の中で上位の方だった。

 
片っ端から絵や写真を見せて
何をどこまで描けるか見たくなる。

 
 
ある日、私は日本地図が目に止まった。
地図は書けるだろうか?

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障害者アートコンクールに向けて

障害者アートコンクールに向けて

秋に障害者アートコンクールがある。

 
今月からちょこちょこと
絵を描く練習をしている。

 
自由に絵を描く

というのは
利用者にとって難しい。

 
まずは見本の絵に色塗りをするところから始まる。
枠線をはみ出さずに絵を描くというのもまたなかなか難しい。

 
 
私は色塗りの見本として
ラズベリーに色を塗った。

これは仕事用に塗ったもので
好みの色合いとは異なる。

 
また
某利用者

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利用者を庇う

利用者を庇う

利用者が不穏になり
物を投げた。

 
室内がピリつく。

職員はサッと近くにいる利用者の前に移動する。

 
その後、職員を襲おうとした。
リーダーが動く。利用者の手をおさえる。

利用者がリーダーを蹴る。
利用者が奇声を上げ続ける。

 
同僚を叩けないと分かると
利用者は他の利用者を叩こうとした。

その利用者のそばにいた同僚がかばい
その同僚は三回思い切り叩かれた。

もしも私がそこにいた

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頬を叩く

頬を叩く

昼食時
私は利用者Aさんの隣にいた。

 
言葉は話せないが
何度も何度も自分の頬を叩いた。
おいしい、の意味合いである。

「おいしいんだね、よかったね。」

と、私が伝えても
また頬を叩いている。

 
「よっぽどおいしいんだね。」

そう言うと
ニコッと笑い
体を私にすり寄せる。

 
「まだ食事中~。」

なんて言いながらも
甘えられるのはまんざらでもない。

 
それから数時間後のことだ

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朝一で言われたこと②

朝一で言われたこと②

利用者に顔を噛まれた日
私は連絡帳に状況を書いた。

 
保護者は連絡帳を見てからすぐに施設に電話をくれた。

 
「申し訳ありません。傷はどんな感じですか?」
「一日も早く治ることを願っています。冷やしていただいて、もしひどいようでしたら通院お願いします。申し訳ありません。」

 
そんな風に言っていた。

 
その利用者に噛まれるのは私は初めてではなくて
私以外もよく噛まれていて
だけど保護者

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突き飛ばされた日に言われた言葉

突き飛ばされた日に言われた言葉

その日はバタバタしていた。

 
その日のうちにやらなきゃいけない作業が立て込んでいたのもあるし
前施設長の作業配置による動線が悪かったのもある。

「そんな作業やらねぇよ。」

利用者が言う。

 
作業を促すがギャーギャー喚く。

 
前施設長に報告したが
説得するように言われ
再び話す。

 
なんとか作業に取りかかり
ホッとしたのも束の間
5分やったところで作業資材を投げつけた。

「作業

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女の子は髪型で印象が変わる

女の子は髪型で印象が変わる

女性利用者は髪が短い方が多い。

それは多分、母親の考えなのだと思う。
 
 
基本的に利用者の髪は
母親が洗い、乾かし、とかし、結う。

成人式まで伸ばして
バッサリ切る率が高かった。

 
仕事で障害がある方と関わるだけで
自宅で大変だろうことは伝わるし
それは仕方ないと思う。

 
ただ
成人式以降も髪が長い利用者を見ると
母親がより頑張っているような気がして
すごいなぁと思う。
家族関係良

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