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「あの子は普通なの?」

ある日、私は有給をとった。

その日はポスティングの日で
チラシ量は多く
私は内心シメシメだった。

 
だけど私の小狡い気持ちをまるで見透かしたかのように
私が休んだ日はポスティングをやらなかった。

 
更に
配る範囲が広かった。

 
世の中とはそんなもんだ。

 
 
その日は曇りだけど蒸し暑く
時折吹く風が気持ち良かった。

 
多動の方が一緒だった為、気を張っていたが
なんとか無事終わった。

 
ベンチで休んでいると
利用者達がじゃれて笑っていた。

 
私はその利用者達がそんな風にじゃれるのを初めて見て
疲れが和らいだ。

 
普段はろくに会話もしないのに
二人でくすぐりあって笑って
それが尊くて
私はパシャパシャと写真を撮った。

 
いい笑顔だった。

 
そこに近所の方と思われる方が横切り、私に話しかけた。

「今日は過ごしやすいわね。」

 
「本当ですね。雲行きが怪しくなってきましたが、曇りだとこうして外に出られていいです。」

 
「ねぇ、あの子は普通なの?」

 
その方々は目線をある利用者に向ける。
多動の利用者だ。
まるで挨拶をするかのようなトーンと表情だった。

 
「利用者ですよ。」

私は答えた。

 
「ただ、この辺の地理は把握していて、一人でも公共機関利用できるくらいですよ。」

私はそうも言った。

 
「あら~そうなの。」

「いつもお疲れ様ね。帰り道、気をつけて。」

 
「ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。」

私はそう言って
利用者と施設に戻った。

 
普通、か。
普通ってなんだろう。

 
私は障害者ではないけど
普通は健常者をおそらく指しているのは文脈からは分かるけど
でも

私は私を普通とは思っていない。
物心ついた時からずっと。

 
作業をして、仲間とじゃれあって笑う姿。
それは普通とは呼べないのかな。

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