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爆裂愛物語

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ツイッターで出逢った少女との想い出をモチーフにした超大作恋愛小説
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#小説連載中

爆裂愛物語 第十六話 終わる世界

爆裂愛物語 第十六話 終わる世界

 第三次世界大戦後……日本だけではない……世界中に死の灰が降り注いだ。かつて東京と呼ばれた街も、今や見る影もなく荒廃しきっており……ゴーストタウンと化している。植物も動物も死に絶え、ただ廃墟が広がるだけだ……かつては高層ビルが立ち並んでいた場所も……今は灰色の巨大な塊が折り重なるようにして倒れているだけである……空は分厚い雲に覆われており、太陽は見えない……地上を照らしてくれるはずの光は閉ざされ、

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爆裂愛物語 第十五話 大人に翻弄された子供達

爆裂愛物語 第十五話 大人に翻弄された子供達

 炎の照らす血だまりの中……いまだ動く二つの影……。そこにはもう会話はなく、ただ無言の殺し合いが続いているだけだった……。
「………………………………」
「……フッ……フハッ!……ハハハハハァ!!!!」
「……ハァッ……!!」
 ……嗤いながら殺し合う二人。まるで血も肉も骨も魂も……命総てを消耗し合うような地獄。地獄と地獄が殺し合う。そんな闘いだ。
「ハァァ!!」
 我路の日本刀が殺志の腹を切り裂

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爆裂愛物語 第十四話 地獄を彷徨う子供達

爆裂愛物語 第十四話 地獄を彷徨う子供達

 厳しく冷たい海、凍るような大気……荒波は白い泡を立て飛沫を上げる……今にも巨大な波がすべてを呑み込んでしまいそうな雰囲気だ。空は鉛色に静まり返り、凍てつく邪気に恐怖と畏怖を抱かせるように陰鬱とした空気に包まれている……洋上に浮かぶ船は、まるで死そのもののように暗く淀んでいるのだ。最新鋭の機器に覆われた船は、白骨の死者を乗せる幽霊船となり、死の気配を振りまきながら悠然と海に浮かんでいる。そんな中で

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爆裂愛物語 第十三話 見送り人

爆裂愛物語 第十三話 見送り人

 波が打ち寄せ、静かに揺れている船舶……ふたりの男と、それを見送る人々がいた。船はこの地を離れ……海に漕ぎ出す準備をしている……これから戦争に行くのだ。みなは船に物資と武器弾薬を運び入れていた。
「うし、大方終わったな」
 我路が一息つきながら言ったその言葉に、
「我路」
 アイが呼びかけた。
「これを」
「これは?」
 アイが渡してきたのは、USBだ。
「セリオンの電子機器、レーダー、などをかく

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爆裂愛物語 第十二話 選ばれた民、選んだ道

爆裂愛物語 第十二話 選ばれた民、選んだ道

 大日本翼賛会の旭日旗なびく小さな船舶の上で……話し合いの場が設けられる……果たしてこの事態に対し彼らは何を話すのだろうか?
「お待たせ、とりあえお茶をおもちしました」
 神妙な空気の会議室に静香と凪が入ってきて湯飲みを置くと、湯気とともに芳醇なお茶の香りが広がった……
「はい、我路、コーラ。氷大盛り」
「おう、センキュー」
 静寂の中……みな、それぞれに考えることがあるのだろう……茶を口に含みな

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爆裂愛物語 第十一話 獣の王

爆裂愛物語 第十一話 獣の王

「海はいいね。広くて大きい、空と海に囲まれてると、なんか、故郷に帰ってきた気分になるよ。風も気持ちいいね~。波の音も懐かしい……。 あっはっはっはっ! 天を仰ぐぜ……! こりゃいい気分だ!」

 風がやみ穏やかな波が押し寄せる海原、小さな船に立ちつくす我路たち

………………(みんな無言になる)
………………(我関せずな静香)
…………………………
(無言無表情のアイ)
……………………(同じく無

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爆裂愛物語 第十話 死と永遠と母子の絆

爆裂愛物語 第十話 死と永遠と母子の絆

 その日は、雨だった。叩きつけるような激しい雨音は、まるでカーテンコールの終わりを報せるベルのようだった。雨はやがて豪雨へと変わり、雷が鳴り響く。まるでこれから起こる物語を先取りしているかのような雷鳴と雨音だった。そう……戦争の予感を……
「きた」
 鉤十字を背負った黒い軍用ヘリコプター。その数、十三機。彼等がGMC本社に近づいてくる。まるで、自分たちこそが地獄の使者なのだと主張しているかのように

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爆裂愛物語 第九話 BURST LOVE STORY

爆裂愛物語 第九話 BURST LOVE STORY

 夏空が眩しい。雲一つない、青々とした空。まばゆい青が視界のすみから隅まで広がっていた。それを焼き付けるような白い日差し、燦々と降り注ぐ陽差しの中を……凪と我路は歩いて行く。
 夏風が吹くと、艶やかな黒髪がさらさらと揺れ、たなびく。さらりとした艶のある髪から漂う甘い香りが、我路の鼻腔をくすぐった。
「? どうしたの?」
 そんな黒髪の主である彼女は、我路に向かって小首を傾げる。
「いや……よく似合

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爆裂愛物語 第八話 心臓に向かう折れた針

爆裂愛物語 第八話 心臓に向かう折れた針

 大日本翼賛会の寮へ、凪とアイが帰ってきた頃には……もう昼だった。
「何処に行っとったんや! 心配したぞ!!」
 フォルクスワーゲンVW38で帰ってきたアイと凪を、一番最初にそう出迎えたのは我路だった。
「つーかなんやねんこのモダンな車は! ってかアイはサングラス着けとるし、なにキメとんねん!」
「私は眼も含め、紫外線に弱いためこのような対策が必要なのです」
「……だからってなんでフォルクスワーゲ

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爆裂愛物語 第七話 悪魔の使徒

爆裂愛物語 第七話 悪魔の使徒

 大日本翼賛会事務所に帰った我路たち。そこでは、普段は静かな事務所が、波のようにざわついている。
「なるほど……大東亜戦争の業か」
 並さんが深く頷く。
「しかしお前ら、こっからナチス相手に闘うってエラいもんにオレら巻き込んでくれたなー笑」
 宮さんは笑いながら言った。
「まぁ、その通りですけど……でもこれしかなかったんですよ」
 そう我路が答えると、隣の園さんも笑いを浮かべる。
「これでオレら死

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爆裂愛物語 第六話 頭の中の怪物

爆裂愛物語 第六話 頭の中の怪物

 夜が訪れる。空には雲がうっすらとかかっており、月は雲に隠されて見えない。
 街灯が少なく、田舎町の郊外にあるこの町は暗く静まりかえっている。
「我路ー」
「ん?」
「お腹すいたー。お弁当食べようよー。っていうか、もう食べたーい!」
 と凪が舌足らずな声で言った。
「もうすぐ寮なんだからガマンしようぜ。つか、それまでガマンしろ」
「はーい。買い物つきあってくれてありがとう。明日も一緒にお出かけしよ

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爆裂愛物語 第五話 忘れない夏

爆裂愛物語 第五話 忘れない夏

 陽炎に、うつる恋の、ゆく先は
 儚くうつる、忘れない夏

 中学三年、15の夏を、彼女は忘れない。夏凛は、燃ゆ空に今も踊る陽炎を時折窓から眺めている。そのまなざしに惑いはない。刹那の時よ永久に続けと切実に願いながら。

“僕は夏凛、僕は全てが見える。全てを感じる。全てを知っている。だから冷めている”

 愛の行方を知っている。優しさならわかるけど愛の行方は誰も知らない。でも夏凛は知っている。愛の

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爆裂愛物語 第四話 家族のぬくもり

爆裂愛物語 第四話 家族のぬくもり

「ふぁ〜あ」
 ある朝、我路はいつものように大きなあくびをしながら目を覚ました。そして寝ぼけ眼のまま、いつものように寮の扉を開ける。
「おはよーダン」
「おはよーさん」
 我路は間の抜けたような声で言った。まだ完全に目覚めてない感じだが、これがいつものことなので特に問題はないだろう……と我路は思った。
「さて……今日も仕事仕事!」
 そう言って車の運転席に座り、エンジンをかけよう……としたが、

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爆裂愛物語 第三話 約束のデート

爆裂愛物語 第三話 約束のデート

 大日本翼賛会の朝、旭日旗がなびく事務所の窓に朝の光が差し込む。
「ふぁ〜あ」
 凪は眠い目をこすり、覚めきらない頭のまま浴場へ向かった。
「あ、宮さんおはようございます」
「押忍!」
(この人挨拶の返事いつも押忍なんだよな……)
 凪がここに来て1週間が経ち、世界がより鮮やかになっていく。段々ここでの生活にも慣れつつあった。宮さんや並さんも、最初こそ厳しく怒鳴ることが多かったが、仕事ができるよう

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