第十一章 喜一の正体1

北の地へと向けて旅を続ける神子一行。もう少しで国境の町へと到着するという時にその人物は現れた。

「はぁ……はぁ……っ。殿ようやく見つけましたよ。半年もの間国を開けて何をなさっているのですか!」

「殿?」

慌てた様子で駆けてきた赤い髪の男性が般若の顔をして喜一を睨みやり口を開く。その言葉に神子は驚いて背後にいる彼の方へと視線を向けた。

他の皆も喜一へと視線を集中させる中当の本人は「しまった」

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いもむし「有難うねぇ~」
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第十章 龍鬼の異変2

「この集落の中なら邪悪な存在は入ってこれませんので、神子様が一人で出歩かれても問題ないと思いますよ」

「そうだな。いつもいつも俺達と一緒だと疲れちゃうだろ。たまには一人でのんびりしてこい」

「有難う御座います。ではさっそくちょっとこの近くを散歩してきますね」

優人の言葉に伸介も同意して頷く。神子は嬉しくて笑顔になると小躍りする勢いで宿として借りている家から出た。

「神子様あんなに嬉しそうに

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チェシャネコ「押したのか……あ、有り難う」
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第十章 龍鬼の異変1

優人達が仲間入りを果たした翌日。邪神を倒すためにはどうすれば良いのかの作戦会議が行われていた。

「邪神がいる場所は斗真が地図に書き記してくれた。この迷いの森の奥地にいるのは間違いないだろう」

「だとするとそこに近づくにつれて奴も何かしらしでかしてくるかもしれねえな」

「今までだって荒魂達を使って神子の旅を妨害してきたんだ。近くにきたと知れば蓄えた力を使って何かしらしてくる可能性はあるな」

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帽子屋「おや、有難うございます」
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第九章 腕輪を受け継ぎし者と集いし兄弟達3

「優人、久しぶりだね」

「お前が来ることは分かっていた。待っていたぞ。俺より大きくなるとは……兄としてはちょっと複雑な心境だな」

真人が柔らかく微笑み言うと栄人が複雑そうな顔をして毒づく。

「お兄さん? ごめんなさい私てっきり栄人さんの方が弟さんかと」

「誰がちび助だって? 俺はこう見えてももう19歳だ」

神子が驚きつい口に出して言うとそれに彼が怒って眉を跳ね上げた。

「まあまあ、栄人

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アリス「押してくれてありがとう」
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第九章 腕輪を受け継ぎし者と集いし兄弟達2

「栄人、いきなり声をかけたから皆さんビックリされているようだよ」

「おっと、それは失礼した。……何やら困っているようだったからな、つい声をかけてしまったんだ。それで、お前達こんなところに座り込んで何をしているんだ」

男性の言葉に少年が子供とは思えない口調でそう言って尋ねる。

「えっと、この近くの集落を探して歩き通していたのですが、疲れてしまってここで少し休憩していたんです」

「集落……ふふ

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アリス「押してくれてありがとう」
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第九章 腕輪を受け継ぎし者と集いし兄弟達1

記憶喪失の男性龍鬼と会った日からさらに月日は流れ神子達は今邪神が封印されている迷いの森へと向けて北の地を目指して旅を続けていた。

「村を出てから大分歩いたよな。まだ次の町までは遠いのか?」

「この地図によればこの近くに小さな集落があるみたいですが、何処にも見当たりませんね」

しばらく歩いていると伸介がそう声をかける。それに地図を確認しながら文彦が答えた。

「方角を間違えたとかじゃないよな?

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いもむし「有難うねぇ~」
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第八章 記憶喪失の男性2

「さて……私もどこか適当に見て回ろうかな」

「……お嬢さん。こんな道の真ん中に立ち止まって何かお困りですか?」

どうしようかなと考えていると誰かに声をかけられ慌ててそちらへと振り返る。振り向いた先には金色の長い髪を一歩に結わえて穏やかな赤い瞳の男性が立っていて神子の顔を心配そうに見詰めていた。

「い、いえ。都なんて初めてで、どのお店を見て回ろうかと考えていたんです。あの、道を塞いでしまって申

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いもむし「有難うねぇ~」
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第八章 記憶喪失の男性1

斗真から話を聞いた翌日。せっかく江渡の都まで来たのだからと自由に街を見て回ることとなった。

神子は街の中から出ないということ自分達の目の届く範囲内での散策をすると言う条件付きで一人で街の中を歩いてよいと言われ、嬉しくってさっそく城下町の中を見て回ることにする。

「それじゃあ僕は薬用の薬草を買い足してまいりますので、ここで失礼します。僕に御用が御座いましたらここにおりますのでいつでもお声かけくだ

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いもむし「有難うねぇ~」
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第七章 星読みの男と引かれ合う魂3

そして皆が出ると喜一の案内で書庫へと向かう。途中誰ともすれ違うことなく無事に目的地まで到着する。

「この中に俺の知り合いがいるはずだ」

「……そろそろお見えになる頃かと思いまして、お待ちしておりましたよ。神子様よくいらしてくださいました」

彼が言いながら書庫の扉を開けた。すると中からとたんに男性の声が聞こえてきて皆そちらへと視線を向ける。

「貴方が星読みの一族の末裔の方ですか」

「はい。

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アリス「押してくれてありがとう」
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第七章 星読みの男と引かれ合う魂2

「ついたぜ」

「ついたって……ただの空き家じゃねえか」

喜一が言うとある家の前で立ち止まる。少し離れたところには城壁が見て取れるが、隠し通路などどこにも見当たらない。その様子に伸介が声をかける。

「まあ、見てれば分かる」

自信満々に喜一が言うと空き家の中へと入っていってしまう。半信半疑のまま神子達も後をついていく。

「ここをこうして……こうやるとだな」

「!? これはからくりですか」

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帽子屋「おや、有難うございます」
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