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いまや絶滅危惧種となったコピーライター。40年近く続けているが現在は開店休業中。 自称…

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いまや絶滅危惧種となったコピーライター。40年近く続けているが現在は開店休業中。 自称「SFファン」。自分自身を定義する分類としていちばん気に入っている。 亀ランナー。フルの完走は10回以上。

最近の記事

小沢慧一「南海トラフ地震の真実」

「30年以内に70〜80%」は嘘? 自宅の集合住宅の防災委員を務めていることもあって「南海トラフ地震」は、目下のところ最優先のテーマである。この地震を語る時、枕言葉のようにくっついているのが「30年以内に70〜80%の確率で発生する」という長期評価である。国の地震本部が発表するこの数字には「明日起きるかもしれない」という切迫感がある。本書は、よりによって、この数字が信頼できない可能性が高いと主張する。南海トラフ地震の予測は他のエリアの地震とは違う特別な方法によって計算されてい

    • 村上春樹「街とその不確かな壁」

      40年後の書き直し。 あとがきによると、本書は、1980年に雑誌「文学界」に発表された「街と、その不確かな壁」を核に執筆されたという。当時、著者はその作品に満足できず、書籍化せずに、いつか然るべき時期が来たらじっくり手を入れて書き直そうと思っていたという。僕は1980年に発表されたその作品を読んでいないが、著者は、「この作品には自分にとって何かしらとても重要な要素が含まれていると感じ続けていた」という。 また、そこに戻っちゃうの? というのが、読み始めての印象。 第一部

      • 桂 幹「日本の電機産業はなぜ凋落したのか

        何が原因?誰の責任? 広告制作の現場から離れて10年近くになるが、いまだにわからないというか、納得できないことがある。それは「日本の電機産業が、なぜあれほど急激に凋落したか?」ということ。僕のコピーライターとしてのキャリア約40年のうち、家電メーカーの広告や販促に携わったのは30年以上。その前半である80年代から90年代、日本の電機メーカーは世界をリードしていた。テレビ、オーディオ、ビデオなどの電子機器はもちろん、半導体などの分野でも世界を牽引する技術や品質を誇っていた。C

        • 大阪マラソン2023完走記

          2022年11月20日の神戸マラソンから3カ月後の2月26日。5回目の参加になる大阪マラソンを走った。2022年の大阪マラソンの一般部門がコロナのせいで直前に中止になり、出走の権利が今年にそのまま持ち越された大会。追加募集があったらしいけど、コロナ禍のせいかな。各地のマラソン大会も定員割れが増えていると聞く。マラソンブームに乗っかって1回だけ参加してみたみたいな人が一巡して、本当にランニングが好きなランナーだけが残っているということかな。 神戸の後、練習再開が早すぎた。

        小沢慧一「南海トラフ地震の真実」

          2022年・神戸マラソン完走記

          2022年11月20日9時15分スタート(第2ウエーブ)天候:曇り一時雨。記録:5時間24分47秒(グロス)5時間24分41秒(ネット)4回目の完走。 2020年。もうマラソンに出るのを止めようかと思っていた。 2018年の神戸マラソンで完走したのが最後。それ以降、完走すらできない大会が続いていた。完走できない理由は明らかに練習不足で、練習不足の理由はモチベーションが保てなくなっているせいだ。マラソン参加も20回を越え、だんだんマンネリ化してきている。記録も2011年の篠

          2022年・神戸マラソン完走記

          逸木 裕『電気クジラは歌う』

          前回投稿の「風を彩る怪物」の著者による音楽SF or ミステリー?。 個人的には音楽を題材にしたSFだと思うが、現在では普通の小説とSF小説の壁は融解しつつあり、本書ぐらいの近未来設定であればもうSFと呼ばないほうがいいのかもしれない。 AIが音楽を創り、作曲家は失業。 舞台は、AIが社会のあらゆるところに浸透している近未来の日本。AIがリスナーに合わせて好みの音楽を作ってくれるサービス「Jing」が開発され、人気を集めている。「jing」の普及により作曲家という職業が消滅

          逸木 裕『電気クジラは歌う』

          逸木 裕『風を彩る怪物』

          ほぼ一年ぶりの投稿になってしまった。本はそこそこ読んでいるのだが、年齢のせいか、感想を書く集中力が不足しているのが主な原因。久しぶりなので書けるかどうか心配だ。 オルガン小説? 本書は、帯の「『蜜蜂と遠雷』以来のスペシャルな音の洪水。」というコピーに釣られて買ってしまった。音楽小説。著者は2016年に横溝正史ミステリー大賞を受賞している。主人公は二人の女性であるが、本当の主人公は「オルガン」と言ってもいいほど、オルガンやオルガンで奏でられる音楽の描写が素晴らしい。西洋でオ

          逸木 裕『風を彩る怪物』

          「戦争」なんか「時代遅れ」だと思っていた。

          軍事力が使われることがあっても、それは途上国間の国境や民族をめぐる紛争が中心で、先進国同士が戦う大きな戦争はもう起きないと思っていた。そして戦闘は、巡航ミサイルや無人機によるピンポイントの精密爆撃が中心で、地上戦は、強力な航空支援を受けた地上部隊が大した抵抗も受けずに占領・勝利するものだと思い込んでいた。現代では、軍事力というものは相手に自らの力を誇示し、威嚇するための手段に過ぎず、ゴリラのドラミングみたいなものだと思っていた。冷戦もとっくに終結した21世紀は、経済での覇権を

          「戦争」なんか「時代遅れ」だと思っていた。

          玉岡かおる「帆神」

          江戸末期に活躍した播磨高砂の英雄、工楽松右衛門の生涯を描いた小説。著者は兵庫県出身の小説家。初めて読む人だ。 もう随分前になるが、友人で建築家のY君に誘われ、高砂市のイベントに出かけたことがあった。Y君はその当時「兵庫ヘリテージ」といって、県内の建築遺産の保存と公開を推進するプロジェクトに関わっていた。その日、彼は、高砂市内の古い商家の公開のガイドのようなことを行なっていた。その時にY君が話していたのが工楽松右衛門の家の話だった。現在は高砂市によって公開されているが、当

          玉岡かおる「帆神」

          人生初入院。

          生まれて初めて「入院」した。9月下旬の土曜日の午後、気がついたら病院のベッドに横たわっていた。腕には点滴が繋がっている。その朝、朝食を食べたところまでは覚えている。しかし、その後の記憶がぽっかり抜け落ちている。不思議な感覚だ。 数時間の記憶が飛んでいる。あとで家人に聞いた話から経過を再現してみる。朝食の後、8時からzoom会議に出た。その後、メンバーを変えた2回目のzoom会議に出ていた。どうもこの2回目の会議の途中で「発作」が起きたらしい。家人よると、2回目の会議から様子

          人生初入院。

          底冷えのする映画「ノマドランド」

          こんなに寒々とした映画だったのか。Hさんがレビューを書いていたので、興味を持ち、Amazon Prime Videoで視聴。米国では2008年のリーマンショックにより多くの高齢者が自宅を失ったという。その多くが自家用車で寝泊まりしながら、仕事を求めて全米各地を漂流している。余暇やリタイヤ後の楽しみとしてのオートキャンプなどではなく、職や家を失って、車上生活に追い込まれた人々。この映画は、そんな彼らの生活を描いたジェシカ・ブルーダーのノンフィクション「ノマド:漂流する高齢労働者

          底冷えのする映画「ノマドランド」

          コロナのモヤモヤ

          迷った末に、ワクチン接種を受けることにした。迷っていたのは昨年からずっと続いているコロナに関するモヤモヤのせいだ。ワクチンに関しても様々な情報が飛び交っていて、本当に安全なのかどうか確信が持てないでいた。僕は元々アレルギー体質で、食品、薬、花粉によって結構重い症状が出ることもあるので副反応が心配だった。 ワクチンを打つかどうか自分で決めなきゃいけない。今までは、不要不急の外出を控えるとか、手洗いの徹底とか、マスク着用とか、人並みのコロナ対策を続けていればよかった。しかしワク

          コロナのモヤモヤ