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美しいもの、愛でるもの アート、音楽、本

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小説大好き☘️毎週博物館か美術館に行く☘️コンサート・バレエも愛してる💖 美しいもの、楽しいもの、おもしろいもの、ドキドキするもの、もしよかったらご一緒に💖
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#小説

うちのおにぎりから広がる、見る、読む、考えること

うちのおにぎりから広がる、見る、読む、考えること

息子の朝ごはんと、お弁当におにぎりをよく作った。
受験の朝。

片手で食べられて、量を調整しやすい。
お昼に食欲がないとか、眠くなりそうだと思っても残しやすい。

いくつか作った中で気に入ってくれたのは、たくあん入り。

はじめはたくあんを細かく切って、すりごまと一緒にご飯に混ぜて握った。

「おいしかったけど、もう少し大きく切って具にしたほうがいいな。
しっかり味がするし」
息子はたくあん好きな

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心をきれいにしてくれる修復されたフェルメール

心をきれいにしてくれる修復されたフェルメール

心の傷を治すように、やさしく繊細に。

「元に戻す」
かんたんにいうけれど、かんたんではない。
気が遠くなる手間と時間をかけたもの。

フェルメールの、1枚の絵。

綿棒に液を含ませて。
絵の上を転がす。

汚れが取れて、少しずつ色が出てくる。

綿棒できれいになるのは数ミリ。
それを何度も何度も繰り返す。

そのあとで、顕微鏡を覗き込みながら表面を削っていく。
本来の絵を傷つけないように、わずか

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ラブソングを聞きながら恋愛小説を読むのが好き💗

ラブソングを聞きながら恋愛小説を読むのが好き💗

人の恋の相談によくのっていた時期があった。
なぜ私に?と思うのだけど、とにかく聞いてほしかったのだろう。

アドバイスというほどのアドバイスではないけれど、なんとか助言らしきものができたのは恋愛小説を読んでいたからなのか・・・どうかはわからないけれど。

恋愛小説が好き。

恋愛下手な自覚がある。だからかもしれない。
人は自分にないものを求めるから。自分にあるものも求めるけど。

だいたい小説には

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孤独の中からぬくもりを~「ひと」という小説に泣く

孤独の中からぬくもりを~「ひと」という小説に泣く

「母が、亡くなったんです・・・」
絞り出すような声を聴いて、衝撃を受けた。
席を立って、彼女を抱きかかえるようにして廊下へ出た。

あおちゃん、と呼んでいたアルバイトさんは苦しい状況で働いていた。
お母さんは看護師だけど闘病中で、お父さんはケガをしてから働こうとせずにぶらぶらしている。
郷里には弟さんがいて、仕送りもしているという。

「周りのバイトさんを見て、どうして私だけこんなに大変なの・・・

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推しのいる生活のリアルに巻き込まれる~「推し、燃ゆ」感想文

推しのいる生活のリアルに巻き込まれる~「推し、燃ゆ」感想文

推しのいる方、多いですよね。キラキラした目で語ってくれます。
高校2年の息子にも、推しがいます。

息子の推し、友人の推しふだんあまり自分のことを話さない息子ですが、「推し」のことを聞くとちょっとうれしそうな顔で教えてくれます。
「この子は発言がおもしろいんだよ」
「この子は勉強は不得意みたいだけど、本を結構読んでいるんだ」
「この子はダンスがヤバい」

何人かいるんです。
私にはよくわかりません

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高校時代はまだ近いか☆もう遠いか~『犬がいた季節』感想文

高校時代はまだ近いか☆もう遠いか~『犬がいた季節』感想文

高校時代、交換ノートをしていたことを思い出しました。
クラスの男女4,5人でノートを回しては、創作やイラストを描いて回していました。
なつかしくてちょっと恥ずかしい思い出ですね。

高校時代に回した交換ノート私の高校は3年間クラス替えがありませんでした。
大学付属で文理に分けることもなく、選択科目のみで対応をしていました。

2年生の後半くらいから家族のように仲が良くなっていき、マンガや本が好きな

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キラキラした高校生活ではなかったけれど~オルタネート~感想文

キラキラした高校生活ではなかったけれど~オルタネート~感想文

私の初デートは高校1年の秋でした。
おく手かもしれません。

はかない初デートの思い出同級生で、帰りがけに「今度映画でも行こうよ」といったのは相手なのに、「電話ちょうだい」。

ええ!? 

ずるくないですか? 今思うと。
そのころは携帯などなく、ドキドキしながら電話したらお母さんが出て、気まずいというか恥ずかしいというか・・・。

デートは井の頭公園へ行き、ボートに乗るというおきまりコース。

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あなたの居場所はどこですか?~お探し物は図書室まで~

あなたの居場所はどこですか?~お探し物は図書室まで~

小学校の時から、私の居場所は図書室でした。
いじめられていたわけでもないし、普通に友達といた気もするのだけど、記憶はいつも図書室です。

小学校の時から乱読だった毎日のように通っては借りて、図書カードが年に何枚もたまりました。
司書の先生がいた記憶はなく、カウンターにどなたがいたかも覚えていません。申し訳ないですね。

ただ名作シリーズ、伝記シリーズ、と読みたい本の本棚からどんどん選んでいました。

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桜にはまだ早かったけれど

桜にはまだ早かったけれど

「去年までやっていたんだ、ぎりぎり間に合わなかった」
閉店の張り紙に悔しそうにつぶやく。

京都にもこんなところがあったのかと驚く、学生街の小さな定食屋さん。
大学生活をこの界隈で過ごした彼が、観光ではない京都を案内してくれた。初めてなのに、妙になつかしく感じる。

出会ったのは去年。
仕事でトラブルに陥っていた私に、さりげなく手を差し伸べてくれた。
お礼にご飯をごちそうし、いつの間にか一緒に暮ら

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恩田陸の新作「スキマワラシ」は、ストーリーも舞台のアートもおもしろい!

恩田陸の新作「スキマワラシ」は、ストーリーも舞台のアートもおもしろい!

恩田陸の新作「スキマワラシ」では、現代美術を楽しむ読み方もあり!
史上初・直木賞と本屋大賞を同時受賞した、恩田陸の「蜜蜂と遠雷」では音楽の描き方がすごかった。
今回の物語では、現代美術をのぞき見る。

小説やまんがを読んで、その世界に興味を持つことは多いのではないかと思う。

「蜜蜂と遠雷」は、音楽コンクールが舞台。出てくる曲をyoutubeで聴きながら読んだ。そういう人は多かったはず。
クラシッ

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自分の居場所と、みんなの居場所を見つけたい

自分の居場所と、みんなの居場所を見つけたい

生まれて初めて「ここが私の居場所だ」と感じた。
その人と結婚をした。

いつも「ここではないどこか」へ行きたいと思っていた。
どこにいても、居心地が悪くてお尻がむずむずした。

自分の生まれ育った家庭は、幼いころから両親が不仲だった。思春期の頃から距離ができた。
距離は広がることはあっても、縮まることはなかった。

ひとり暮らしを始めたら、気が楽になった。
でも一人でも「ここなのかな?」と首をかし

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めんどくさい女のままでいい☆小説『やわらかい砂のうえ』で考えた

めんどくさい女のままでいい☆小説『やわらかい砂のうえ』で考えた

小説『やわらかい砂のうえ』(寺地はるな)の万智子は媚びない。男性に受けなくていい。それよりも自分らしくいたいし、自分らしい自分を、もっと好きになりたいのだ。

「めんどくさい女」って男の人から、すごく嫌がられている気がする。

昔のほうがもっとそうだったんだろうけれど、「物わかりのいい」「素直な」「かわいい」「すぐにうんうんってうなずいてくれる」「女の子」がいい、と。

元からそういう女性もいると

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「形」を自分から取り払うー『水を縫う』ように

「形」を自分から取り払うー『水を縫う』ように

小説を中心に感想を時々記します。

「好き」と「家族」を自分の手で選び取りたい。「水を縫う」寺地はるな 集英社

縫物や刺繍が好きな高校生男子・清澄、ふんわりした服やかわいいものを嫌がる姉・水青、離婚後女手一つで子供を育てる母、それに祖母や、別れた頼りない父…みな世間から「普通」と言われるものから少しずつずれている。

もうすぐ結婚する水青は着たいウェディングドレスが見つからない。どれもひらひらキ

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