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心をきれいにしてくれる修復されたフェルメール

心の傷を治すように、やさしく繊細に。

「元に戻す」
かんたんにいうけれど、かんたんではない。
気が遠くなる手間と時間をかけたもの。

フェルメールの、1枚の絵。

綿棒に液を含ませて。
絵の上を転がす。

汚れが取れて、少しずつ色が出てくる。

綿棒できれいになるのは数ミリ。
それを何度も何度も繰り返す。

そのあとで、顕微鏡を覗き込みながら表面を削っていく。
本来の絵を傷つけないように、わずかずつ・・・。

そして、新しい姿を現した。
新しい、元の姿を。

左が修復前、右が修復後。購入した絵葉書から。

壁に、キューピッドの絵が現れた。
愛を象徴する、その姿。

読んでいる手紙はラブレター、と自然に思える。
ストーリーが明確になる。

光も、色も、布の質感も、構図も。

まるで違う絵のように。


「絵をもとの姿に」

そのためにかける、労力と、手と。


フェルメールは17世紀のオランダ(当時はネーデルランド)を代表する画家。写実的で映像のような絵画。光の質感の美しさで定評がある。
残っている絵は30数点と少ない。

こんなにちがうなんて。

美しい絵を見て。

心が柔らかくなる。

まるで自分の、心にも煙がかかっていたように。


無口なフレスコ画の修復師。フランスの小さな村の絵画を修復しながらいつのまにか村の人の心を修復していた。

そんな小説があったことを思い出した。

教会の絵を修復しながら、村の人の話を聞く。
絵画の説明があるわけではなく、事件を解決するわけでもない。
ただ静かに流れていく。

そんな静謐な時間。

細かな粒子の中にある時間。


少しずつたまっていくほこりのような、疲れ。
よどむ黒いおりのような、思い。

日常に埋もれていく、息苦しさ。

なぜか今になって思い出す、若いころの針のような痛み。

鬱々とした日に、光がほしい。


自分で。
小さな綿棒をころがすように。

少しずつ汚れをぬぐっていきたい。

心をきれいにしていきたい。

時間はかかるけれど。


夫と「フェルメールと17世紀オランダ絵画展」を見に行きました。
東京都美術館で4月3日まで。予約制。その後、全国を巡回予定。
高校生までは無料です。柄の好きな息子にも見に行ってほしい・・・。




※見出し画像はメトロポリタン美術館のフェルメールを「みんなのフォトギャラリー 世界の美術館」からお借りしました。ありがとうございます。


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