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推しのいる生活のリアルに巻き込まれる~「推し、燃ゆ」感想文

推しのいる方、多いですよね。キラキラした目で語ってくれます。
高校2年の息子にも、推しがいます。

息子の推し、友人の推し

ふだんあまり自分のことを話さない息子ですが、「推し」のことを聞くとちょっとうれしそうな顔で教えてくれます。
「この子は発言がおもしろいんだよ」
「この子は勉強は不得意みたいだけど、本を結構読んでいるんだ」
「この子はダンスがヤバい」

何人かいるんです。
私にはよくわかりませんが、坂道シリーズのメンバーです。
坂道シリーズという名称も、はじめて知りました。
秋元康プロデュースの坂が付くグループです。坂道グループとか、坂道シリーズとかいうんですね。

息子は洋楽が好きなのですが、「アイドルには音楽性は求めない」。

今、彼が読んでいる本も「推し」が進めていたからなんです。
私が読んでいたら「あ、それ知っている。読んでみたい」と。
まあ、ゲームほどは進んでいませんが読んでます。

推しの影響力、強し。


友人は宝塚の大ファンで、生活の基準が宝塚なんです。
お金の基準は「1チケット」で考えるそうですし・・・つまり、1回チケットを買える値段かどうか、です。チケットと比べて、買う価値があるかどうかなどを決めているようです。
チケットの取れた公演によって、すべてのスケジュールを決めています。

「推しのおかげで生きがいができた」とうっとりしています。
息子さんが二人いるのですが、「上の子はあきらめて、下の子は嫉妬しているみたい」だそうです。

推しってすごい力があります。

推しの世界に没入する小説

でも推しが危険行為をしたり、炎上したら。
落ち込み、停滞し、情報を求めてネットから離れられなくなったりしたら。

体まで重くなって、何もする気にならない。
感覚が伝わるほどに書かれているのが『推し、燃ゆ』(宇佐見りん/河出書房新社)です。

推しに運命的に出会い(一方的にですが)、ブログを書き、ガチと認められます。
ブログにはすぐに周囲から反応され、自分の居場所があります。
アルバイト代はすべてコンサートのチケット、人気投票のCD、オリジナルグッズ代に消えます。


推しを取り巻くグループの中に、自分の存在があるんですね。

書いているブログの視点もちゃんとあって、なかなかうまい文を書きます。
ほかのファンにも認められています。

ただそれはリアルの社会には反映されません。

本人の気持ちも心もすべて「推し」にあるので、姉が勉強を教えても翌日にはすべて忘れています。
そんなことを繰り返す、主人公のあかり。
姉と母の徒労感、いらだち、怒り。

つい、保護者側のいらだちと焦燥感に同調してしまいます。

でも本人は真剣です。
そこで生きているし、実感はそこにしかないんです。

それもわかる気がします。

ただ、その先は?

炎上し、
グループが解散し、
引退・・・

すべて自分のことのように受け止め、壊れていくような、静かに落ちていくような、感覚。
崩れていく、あかり。


恐ろしい、けれど、リアル。

推しがいることは悪いことではありません。

でもあなたはどこで生きているの?

そう聞きたくなります。

押しの世界で生きることは悪いことではないのですが、止めたくなります。
こちらに来て、と手を引っ張りたくなります。
よけいなお世話なのでしょうが。

高校生を描いた小説3作

この本は芥川賞受賞作、そして本屋大賞の候補作です。
今年の本屋大賞10作には、高校生が主人公の本が3作もあるんですね。
すでに記事を書いた2作
・オルタネート』(加藤シゲアキ)
・『犬がいた季節』(伊吹有喜)
そしてこの『推し、燃ゆ』(宇佐美りん)。

架空のアプリを通して、キラキラした高校生活を描いた『オルタネート』。
3年ごとの在校生の姿を犬を通してみた、情趣あふれる『犬がいた季節』。
推しの存在に依存した女子高生を生々しい筆致で描いた『推し、燃ゆ』。

まったく違う高校生の姿と高校生活。

本書にはさわやかさはかけらもありませんが、ぐいっと迫ってくる力があります。肌感覚までが伝わってきます。

大学生、21歳の作者の力量には舌を巻きました。

推しのいるあなたは「ここに理解者がいる」と思えるかもしれません。


高校が舞台の、本屋大賞候補作紹介です。


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以下の3冊も今年の本屋大賞候補作です。


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