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短歌「秋汀」|ひろしま美術館《日本画の名作展〜大観と春草から杉山寧を中心に》

短歌「秋汀」|ひろしま美術館《日本画の名作展〜大観と春草から杉山寧を中心に》

静けさを水面に映し立つ鳥の
羽ばたきさえも耳に透く秋 / 星の汀

🍂 展覧会

 秋だからか、菱田春草の暖色に、自然に引き寄せられる感じがしました。

 そして、菱田春草のおかげで「秋汀」という文字そのものが澄み渡って美しく見えたので、(星の汀じゃなくて秋汀がよかったか…?)と一瞬思いました(笑)

 ちなみに、「星の汀」という名前は、柿本人麻呂による和歌

から連想したもの。静かだけれど圧倒

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ゴッホ『悲しみ』|雨夜の星の絵画帖

ゴッホ『悲しみ』|雨夜の星の絵画帖

「悲しみ」
Sorrow
(1882)  

フィンセント・ファン・ゴッホ
Vincent van Gogh
(1853-90)

🇳🇱オランダ・後期印象派

👶 フロート・ズンデルト🇳🇱
⭐️ オーヴェル=シュル=オワーズ🇫🇷

🌎MoMA🇺🇸

 前回取り上げた『星月夜』つながりで、ゴッホです。

 ニューヨーク近代美術館のサイトで見つけました。
 線に一目で心を打たれ

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是永昭宏絵画展|創作と視覚障害〜もうひとつのリアリティ

是永昭宏絵画展|創作と視覚障害〜もうひとつのリアリティ

 広島県立美術館・県民ギャラリーで開催中の展覧会。

 是永昭宏さんは、視覚障害をお持ちで、両眼とも視野の中心部がぼんやりとしか見えないため、ルーペを使って絵を描いておられる画家さんです。

 地元のラジオで何度か特集されていたのがきっかけで、足を運んでみました。(NHKハートネットTVブレイクスルーでも特集されたことがあるそうです。)

 ご本人様がご在廊だったので、いろいろとお話しも伺い、私も

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クールベ「画家のアトリエ」に描かれたボードレールとジャンヌ・デュヴァル

クールベ「画家のアトリエ」に描かれたボードレールとジャンヌ・デュヴァル

「画家のアトリエ」
L'Atelier du peintre
(1854-55)

🎨ギュスターヴ・クールベ
Gustave Courbet
(1819-1877)

🇫🇷フランス・写実主義

👶オルナン🇫🇷
⭐️ラ・トゥール=ド=ペ🇨🇭

🌎オルセー美術館

 ボードレールのミストレスでありミューズだった、ジャンヌ・デュヴァル。ボードレールを取り巻く女性たちの中で、最も縁の

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ムンク「吸血鬼」|詩を添えてみました&絵画のご紹介|雨夜の星の絵画帖

ムンク「吸血鬼」|詩を添えてみました&絵画のご紹介|雨夜の星の絵画帖



🌱 詩(情景)

あなたの目は
澄んでひかる夜のせせらぎ
ゆらめく水面の奥に光る小石
森の真中に湧く神秘の泉

飛び去った鳥の羽音
遠く響く至聖所の鐘

あなたの目は
生きている宝石みたい

その目がほしいの
その瞳でわたしを飾りたい

身につけたくて
仕方がないから

黒髪の頭ごと
胸に抱え寄せたの

愛を裏切るなんて
一番いけないことよ

またひとり
どこかで小夜啼き鳥が
薔薇の棘で胸を

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ひだまりの絵本画家 柿本幸造展|りんごケーキと秋の ひろしま美術館🐾

ひだまりの絵本画家 柿本幸造展|りんごケーキと秋の ひろしま美術館🐾



🧸 柿本幸造展

ほのぼのとあたたかなポスターを目にし、「弱ったな」と思うのは、忘れ去った≪童心≫が心の中でもぞもぞと寝返りを打つから。
「ずっと眠っていてね」と呼びかけながら、美術館へ。

地方の美術館というのは、割合、空いていることが多いのだけど、この展覧会は開幕数日後の平日午前11時にしてはずいぶん人が多かった。

社会見学に来たらしい小学生の一群を除いても、お年寄りから子ども、親子連

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ハローキティ新幹線に乗って南仏の光の中へ|ふくやま美術館「芸術家たちの南仏〜ピカソ、マティス、シャガールたちの楽園と逃避」

ハローキティ新幹線に乗って南仏の光の中へ|ふくやま美術館「芸術家たちの南仏〜ピカソ、マティス、シャガールたちの楽園と逃避」



🌼 芸術家たちの南仏〜Rendez-vous dans le Midi(南フランスでの邂逅)

地中海に面した南フランスは、風光明媚な土地柄から、多くの芸術家を惹きつけてきました。また、二度の世界大戦をくぐり抜けた歴史の荒波のなか、南仏に逃避し、また南仏から逃避した芸術家も多く存在しました。

ふくやま美術館《芸術家たちの南仏》では、そういった画家たちにスポットライトをあて、彼らの交流や共同

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ひろしま美術館🐾お散歩日記|写真

ひろしま美術館🐾お散歩日記|写真

以前ご紹介したミュシャ展のコラボスイーツ。
ブロンド女性とブルネット女性をモチーフにした2種類のうちの、残りのひとつを食べに撮りに行って来ました。

相棒の60mmMacroだと、テーブルの上のお食事は近すぎてフレームからはみだしてしまいます。やむなく別のレンズとなりますが、写りがゆるめで物足りないかも。もともと視覚障害の関係で、言わば補助機器としてカメラ好きになった私としては、くっきりとシャープ

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オスカー・ワイルド『サロメ』界隈をあるく|西洋絵画も交えて

オスカー・ワイルド『サロメ』界隈をあるく|西洋絵画も交えて

最近、フランス象徴主義つながりで、『サロメ』を再読(佐々木直次郎訳&平野啓一郎訳)したところだったので、文学通noterの福田尚弘さんの記事(↓)を拝読して、サロメについて無性に書きたくなりました(^^ゞ

💎 サロメ〜まずは、あらすじ

ユダヤの王ヘロデは、兄を殺害し妃を奪って、王の地位に就いた僭主。妃ヘロデヤの娘サロメの美しい姿に、以前から好色な視線を注いでいます。

ある宴の日、ヘロデの視

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フランチェスカとパオロ|せきぞう、さん×ビアズリー

フランチェスカとパオロ|せきぞう、さん×ビアズリー

今回は、せきぞう、さんの絵をご紹介させてください。

アリ・シェフェール画を、ビアズリー仕立てにしたもの。とのこと(^^).・:*♡

元の絵は油彩画なのですが、こちらは万年筆で線を描き、デジタル処理したのだそうです。

人工知能研究者・脳科学者の黒川伊保子さんが、「女はシルエットに惚れる生き物」と語っておられました。待ち合わせ場所にやってくる恋人の姿、なかでもシルエットに、(毎回)ときめくのだそ

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ルーブル美術館展―愛を描く@国立新美術館|アモールとプシュケーのこと

ルーブル美術館展―愛を描く@国立新美術館|アモールとプシュケーのこと

「古今東西の名画にあまたの美女が描かれているのに、なぜイケメン絵画がこんなに少ないのでしょう」
―これは、数か月ほど前に、美術史に詳しいお知り合いnoterさんに投げかけた私の質問、もしくは嘆きの声でした。

 いえ、私はひそかに美男子より美女を見る方が(審美的に)好きなので、本気で嘆いているわけではないのです。

 身体のラインだって、こと美しさにかけては女性に譲りますし、その証拠に、美神アフロ

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『第69回日本伝統工芸展』と梅一輪|広島県立美術館+

『第69回日本伝統工芸展』と梅一輪|広島県立美術館+

🍁 日本伝統工芸展 🍁

 毎年楽しみにしている展覧会。

 伝統工芸の中でも、特にじっくり見たいのが、ガラスと漆芸。ガラスは光の透過や反射それぞれ、硬質な煌めきを楽しみます。

 一方の漆芸は、木肌と漆の風合いが互いを引き立て合う優しいマリアージュ。塗りの厚みを変えることにより、映り込む光の深さや柔らかさが変わり、とても魅力的なのです。

 倒木や豪雨で水に浸された木など、メッセージ性のある

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『ピカソ 青の時代を超えて』|ひろしま美術館

『ピカソ 青の時代を超えて』|ひろしま美術館

「知らない人なんていないでしょ?」と形容しても許されそうな画家―その代表格が、パブロ・ピカソではないでしょうか。キュビズムのイメージと相まって、ただでさえインパクトが強い上に、"好き/嫌い"が変に一人歩きしていそうな画家でもありますね。

 今回の展覧会は、メランコリックで哀切なる《青の時代》と、その後の画風の変遷を一望できる、とても見応えのある内容でした。

🌿 ピカソ×ひろしま美術館

 こ

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