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Amu
2024年7月28日 01:53
「旅先の夏にて」夏の真似事をした坂道のさき潮の薫りよりも強い瞳の向こう側にモノクロの優しさがうずくまる下りかけた言葉の尻尾をつまんでひょいと掬いあげ微笑むと僕は選ばれたから此処にいるそう言って君は僕を抱きしめた水割りを頭から浴びるような夜物言わぬ背中に時を重ねた愛だとか、恋だとか例えば悲しい物語だとしても確かに其れは僕のためだけに書かれた小説だった
2024年7月24日 18:08
「祈り」透け見ゆような心もとなげ必ずだとか永遠ほどに哀しく聴こゆもの他にはなくて下手くそで佳い否、それがいいのだと小指の代わりに絡めんやひとつとして要らぬ糸はなしきみへと繋がる祈り揺れのぼる静穏なる想いたち
2024年7月22日 18:24
「潮風と星のすな」分かたれた南の海と夜の空瓶詰めされた潮風と星の砂があの娘の腰に揺れている誰が悪いとかじゃないあのね、季節が違っていたんだよせめぎあうみなもの小さな子供たち浜辺には恋を知った歌うたいほら、誰かのために今日も明日を弾き語っているよ
2024年7月20日 15:21
「きみが里」空に去りゆく影法師海へと飛びたつ鼻の唄ほ、ほっ……ほたるの里すぎ見知らぬ土地ぞやそちらの水は甘いであろうか寂しくなったら還っておいでといつぞの優しい夢をみるほ、ほっ……ほら視てごらんよあの日の景色そちらの暮らしは如何なるものか風は、想いを運んでおるか
2024年7月19日 14:36
「夏のうた」蝉の声を貼りつけた空が寂しいさみしいと鳴いていた誰よりも激しい太陽は薄化粧の山で君をさがしている吐きそうなほどの我が儘と狂いそうなほどの愛おしさが泳ぎを忘れた人魚みたいに白の砂浜にうちあげられていた聴こえない、いちばん逢いたいひとにこの夏を届けたいと海鳥はうたう
2024年7月17日 14:12
「祈り星」噛られた空に浮かぶ月夜を紡ぐ白い風の足どり朧に追いかけ見つめるその先に名のない星座を貼りつけながら知っているそこに名前をつけたなら風は空には居られないこと濡れた朝の霧のように堕ちて地球へと還ること
2024年7月14日 12:31
「かの國」伸ばした指さきすり抜けゆく風の影追い果てたどるや薄紅の微睡みに抱かれて健やかであれ唄い流れる水の音懐かしさに類義した温もり愛しさと名付けて
2024年7月12日 14:51
「24万マイルの僕」音のない世界で僕はひとり遥かなる君と出逢う抱えた僕の言葉の意味水平線まで聴こえる瞳の虚ろ星の欠片を動かして僕は君へと手紙を送った君には、此方のほうが似合っているから旅に出ないか裸足のままでいま、音のない世界で僕は、ひとり
2024年7月11日 17:05
「微睡みに繋いで」何もない空に朝がやってくる瞳のまえに広がるきっと淡いであろう赤子のみどり産声をあげたひかりの匂いそれは素足の心にくすぐったいを教えてくれる背から絡みつくまるでカフェモカのような温もりと何もないはずの空に手を伸ばす微睡み……昨日より、きょう今日よりも明日なんだって違うよ深い眠りにつく前に僕たちは誰よりも何よりも、ふたり
2024年7月9日 09:27
「そして、君へと。」ひとつ、ふたつ……見あげる夜空に終わりゆく星と透明な瞳をもつ少年の背中ひとつ、また ひとつ……雨粒の代わりに拾いあげた小さな正義をポケットにしまって膨らんだ拳から溢れる涙はきみの宝物へと流れていくからほら、大丈夫真昼の空には消えない星がある
2024年7月7日 10:58
「Mau loa」足もと散らばる不揃いの正義かかえた想いたち迷子の魂ひとさし指螺旋をえがいた魔法の呪文小説などは読まないとすべては僕から生まれる物語掬いあげる不器用な真心それでいい、根無しの雲が瞳を弧にする空、それは静かなる永遠を囁きつづけて
2024年7月5日 13:30
「風にとける」透明の言の葉をふた指つまんで青い風に透かし瞳をとじる聴こえてくるのは何時かの鈴の音真暗な峠に灯ったあかり沈んだ夕陽の代わりの文字に旅雨たゆたう君の心音いつかのボクだと細めた声を背中で拾うて眉間で哭いたもうすぐ夏がやってくる庭先わすれた風鈴が今年も君の名を呼び続けている
2024年7月4日 14:10
「瞳、乗せて……」そこから何が見えますか夢とか希望とか愛とか恋とか裏切りだとか片道乗車券だけを握りしめて踏切のまえ何度めの電車ここから海が見えましたカンカン カンカン遮断機は空へと突き刺さり原動機付自転車が眼のまえを横切って行きました
2024年7月2日 08:41
「ひとつぼし」君を独りにはしないから空にまだ星が遊んでいた存在意義を失くした僕と見失いそうに立ち尽くす君と決して、君を……あの日の君がそう言って空を見上げていた