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小説

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#マンガ

イヴの涙 (短編小説 1)

イヴの涙 (短編小説 1)

今、けやき並木が一斉に光を放った
ハッとして、立ち止まる。
イルミネーションの点灯の瞬間は、さながら魔法のようだ。
すっかり落葉したけやきが黄金色の発光体と化し、美里は一時目を奪われた。

イルミネーションを見上げている周囲の人々の顔が、黄金色に染まっている。
皆、一様に幸せそうな表情に見えた。
だけど、美里は憂鬱だった。
勤務先が、けやき並木のある通りの近くだから
帰宅する時は、どうしてもここを

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引き裂かれた恋(連載小説9)

引き裂かれた恋(連載小説9)

        《 最終回 》

クリスマス当日、仕事を終えた亜矢は真っ直ぐ帰宅した。途中、幸せそうなカップルを何組か見かけた。

(私、今誰にも愛されてないんだわ……)

そんな感情が込み上げ、一段と寂しさが増した。

帰宅すると、昨日レンタルしてきたDVDを見始めた。海外のアクション映画だ。何も考えず、頭をからっぽにしたかったのだ。
見終わると、結構気分がスッキリしていた。

入浴の準備をする

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引き裂かれた恋(連載小説8)

引き裂かれた恋(連載小説8)

毎朝目覚める度に、亜矢は絶望感に襲われる。
雅人を失った悲しみが、じわじわと押し寄せ
仕事に行く気分になどなれなかった。
それでも、ノロノロと洗顔、着替え、化粧を済ませると出勤した。

亜矢は思うのだった。今後、雅人よりも好きな人に巡り逢うのは難しいのではないかと。

そういえば、一番好きな人とは結婚できない?
というような話しを、どこかで聞いたことがある。
小説か、エッセイに書かれていたような気

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引き裂かれた恋(連載小説7)

引き裂かれた恋(連載小説7)

あと1週間でクリスマスだ。
先日、久しぶりに雅人から電話がかかってきて以来
連絡は途絶えている。
亜矢は希望を無くし、毎日淡々と過ごしていた。
それでも、もしかしたら会いに来るという連絡が入るのではないかと、期待も少しはあった。

とうとう明後日がクリスマスイブ、という日の夜。
ほとんど希望は失いかけていた。でも、もしかしたら? という気持ちもわずかに残っていた。

そろそろ入浴しようかと思った矢

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引き裂かれた恋(連載小説6)

引き裂かれた恋(連載小説6)

11月も半ばを過ぎると、商店街の店先のディスプレイはクリスマスムード一色になる。
人々はウィンドーの前で立ち止まり、マネキンのコーディネートを眺めたり、ブランドの新作バックや
ブーツを楽しそうに眺めている。
亜矢はそんな楽しそうな人々を横目に、足早に通り過ぎる。

クリスマスまで、後2週間。
12月に入ってから、雅人からの電話は途絶えている。10日も音沙汰がないのは、 今までなかった。
こちらから

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引き裂かれた恋 (連載小説 5)

引き裂かれた恋 (連載小説 5)

望む未来をイメージする。
常に、その状態を維持する。
思考は現実化すると聞いたことがある。

亜矢は雅人と家庭を築き上げた光景を頭に思い描く。想像するだけで、満ち足りた気分になる。
それでも時折、不安が芽生える。
そんな時は、雅人と名古屋で一夜を過ごした記憶をたぐり寄せた。あの時の雅人の行動は誠意に溢れていて、2人の未来を確実に思い描くことができた。

次に会えるのはクリスマス。どこかレストランを

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夜の図書館 (掌編小説)

夜の図書館 (掌編小説)

#オールカテゴリ部門

もし、本に意識というものがあったとしたら?
午後7時、出入り口の施錠を終えた職員達が、
次々と出て行く。
その後、責任者の職員が館内の最終チェックを終えて出て行くと、図書館は無人状態となる。
時折、幹線道路を通り過ぎる車の音が聞こえるくらいで、館内はしんとした静けさに満ちている。

不意にどこからか、ぼそぼそと話し声が聞こえてきた。
「連日、猛暑なのに毎日ぎゅうぎゅう詰めに

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雪中に果つ 4 (小説)

雪中に果つ 4 (小説)

#オールカテゴリ部門

(やっと見つけたわ)

真紀は、ジリジリと裕二に近づいて行った。

(まるで、獲物に近寄る猛獣みたいだわ)

自嘲気味に、そう思った。
真紀の姿を見た裕二は雪の上にうつ伏せになったまま、あからさまに驚きを露わにした。
まるで、幽霊でも見たかのような表情だ。事実、幽霊だと思ったのかもしれない。真紀はとっくに死んだ、と思っていたのだろうから。

「真紀、生きてたのか?」
「残念

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雪中に果つ 3(小説)

雪中に果つ 3(小説)

#オールカテゴリ部門

酷く寒気がした。
体の芯が冷え切っているようだ。
そして、何だかムカムカする。気持ち悪い。
理由は分からない。
すると、今度は頭部に鈍い痛みを感じた。
この具合の悪さは何が原因なのか?
寒さに耐えきれず目蓋を開けようとするが、意思に反してなかなか開けない。
でも体が、本能が、覚醒を促している。
そして重い目蓋を、やっとの思いで開けた。
視界は、真っ白だった。
顔に、何やら冷

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雪中に果つ 2(小説)

雪中に果つ 2(小説)

#オールカテゴリ部門

昨夜から降り続いた雪のせいで、道路の除雪が追いついていないようだ。
裕二は慎重に運転しているが、所々道路がでこぼこになっているため、何度かハンドルを取られそうになった。
その度に、真紀はハッとする。雪道で車が制御不能となり、ガードレールや木に激突して命を失うのは
避けたい。そんな死に方は嫌だ。理想の死とかけ離れている。

やがて、前方に通行止めのフェンスが見えてきた。
ここ

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引き裂かれた恋 (連載小説 4)

引き裂かれた恋 (連載小説 4)

時間を止める方法があったらいいのに。
亜矢は真剣にそう願った。
半年ぶりに雅人と肌を重ね、これ以上望めないほどの幸せに包まれていた。

(やっぱり、雅人が好き。愛してる)
それを再確認した。
雅人の隣で、一つのベッドで眠りに就く。
それが生涯、続いていけたらどんなにいいだろう。

「雅人と暮らせたら、毎日幸せだろうなぁ」
雅人の腕に抱かれ、ベッドに横たわったまま亜矢は呟いた。

「そうだなぁ。僕も

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雪中に果つ (小説)

雪中に果つ (小説)

#オールカテゴリ部門
真紀は幸福だった。
これほどの幸福を実感できたのは、生まれて初めてかもしれない。
この幸福は今までの人生で、最初で最後だろう。
今日が、その最後の日でも構わない。
事実、今日が人生最後の日になるのだから。

真紀は隣の裕二に目を向ける。
裕二もまた、真紀を見つめ微笑む。
裕二と一緒に死ねる。真紀にとって、これ以上の幸せなどありえない。ずっと、この日を待ち望んでいた。
「私、今

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引き裂かれた恋 (連載小説 3)

引き裂かれた恋 (連載小説 3)

もうすぐ雅人に会える。
期待と興奮で胸が高鳴る。
新幹線に乗車してから、じっと座ってなどいられないほど、ずっと落ち着かない状態だった。
雅人に会えるのは現実のことなのに、夢の中にいるようだった。

東京駅に到着すると、東海道新幹線に乗り換える。
車内は3割程度、席が埋まっている。
座席に座ると、先刻までは小雨だったのに、
次第に雨粒が激しく車窓を叩きだした。
予報通り、台風がこちらに近づいているの

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引き裂かれた恋 (連載小説 2) 

引き裂かれた恋 (連載小説 2) 

アパートに帰宅すると、郵便受けに1通の封筒が入っていた。丸みを帯びた筆跡で記された亜矢の住所と名前を不思議な思いで眺めた。

(誰からだろう?)
裏を見ると、雅人の名が記されている。
(えっ、雅人からの手紙?)
手紙が届くことなど想像すらしたことがないため、驚いた。ドキドキしながら封を開けた。
便箋には、将来亜矢と結婚したい。今は寂しい思いをさせるけど、必ず迎えに行く、と書かれていた。
丁寧に書か

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