ジマーマン

幸せよりも楽しみたい。思想/批評/日記/詩など。

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クナーファの夜〜生と他者へ

あなたはどう生きているだろうか。最近嬉しかったことはなんだろうか。最近悲しかったことはなんだろうか。 早起きをしてパンを焼いたり、待ち合わせの30分前に着いたり、…

ジマーマン
4か月前
13

24/6/14 この素晴らしき日

暑い。梅雨が入ってきていないというのに、まちには夏が降りている。 ムクドリが口を開けている。予報では、確か30度に到達する。 丸信でやきそばを食べる。塩でもソース…

ジマーマン
4時間前
4

青の夢

すっぽりと暗い闇に包まれた田舎の駅。周りには田んぼがあるのだろうか。カエルの声が聞こえてくる。それと鈴虫がさらに遠くからリンリンと。 2時間に一本の3両編成の電車…

8

カモメみたいな色

5月にはみ出した初夏の日差しが 白い壁を光らして それをカモメみたいな色だと思うのは 海が落書きされている 踵の裏に そういうことだろう 黄色い嘴 皺だらけの朝…

2

期待と鏡 ー 書籍『ワンルームワンダーランド ひとり暮らし100人の生活』によせて

ひとり暮らし100人の部屋とエッセイ集『ワンルームワンダーランド ひとり暮らし100人の生活』(小鳥書房)には、部屋への期待がある。雑誌などの部屋紹介とは違う。雑誌など…

14

24/5/4 移動が手段を飛び越える夜

昨日から家開きをしていて、お昼過ぎに友だちがふらっと遊びにきた。 友達はここ最近、初めての感情に戸惑っているようだ。少し笑いながらそう話していた。その笑顔からも…

5

観るということの徹底とその不確かさ - 『悪は存在しない』について

映画は人を感動させたり、興奮させたり、夢を見せたり、希望を与えたり、メッセージを伝えたりする。しかし、映画にとってプリミティブなことはなんだろうか。それは「観る…

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12日前
4

パーキングエリアにて

月と朝焼けが向かい合っている パーキングエリアは真っ二つになっていた 僕はきっとその継ぎ目に立っている そういえば冷たさが肌を包んでいた 静けさは 無音の上に立…

ジマーマン
13日前
4

名無しの条件 ー 名前のない関係について

最近友達から親密な人との話を聞いた。僕はその人と友達の関係が「名前のない関係」という名前の関係のように思った。それは結局友達や恋人と同じで、一つの名前が付けられ…

ジマーマン
2週間前
4

24/4/29 道に迷ってるのではない

朝起きる、体が少し冷えている。バイクが長く止まっている音でふと外を見る。いつもの待ち合わせだった。 髪がかなり伸びたので、朝から髪を切りに行く。9時に予約をして…

ジマーマン
2週間前
6

24/5/2 緑ざわめくピンクの日

学校が昼までなのだろう。大学通りでは、若い頭がいっぱい揺れている。振り向いた人の顔に影と木漏れ日が落ちていた。 今日は縁を実行する。少しだけ遠くのまちへ行く。各…

ジマーマン
3週間前
6

24/4/19 仲違いの春、仲直りの秋

バイクが走り去った後に風が吹いた。ケヤキの葉っぱがざわざわとしている。この音が意識にのぼったのも久しぶりなような気がする。ケヤキの葉も擦れ合うほどに、季節が満ち…

ジマーマン
3週間前
8

つみき

木のテーブルの上で 積み木遊びをする子供 緊張という言葉が似合わない緊張感 そんなことはおかまいなしに バス、家、ケーキ 名前を与えられていない何かが建てられて…

ジマーマン
4週間前
3

Wet Soul & Cold Soul

Cold Soul 魂という言葉はいつも熱っぽい 寝るとき 月を見るのが好きだった 閉店後のクリーニング屋から ラクダの形をしたシミが砂漠に帰っていく 冷たい魂はあるの…

ジマーマン
1か月前
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24/4/18 買い過ぎた珈琲

カツ丼の蓋を開ける。湯気が膨らんで散っていく。ふと今日で団地に引越して1年が経ったことを思い出した。 卵と衣、さらに言えば蓋もか。三重に閉じ込められた肉は、肉の…

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1か月前
8

ミッドナイト・チャイニーズレストラン

深夜の中華 夜に火を吐く 不思議と眠そうな人はいない このまちで赤いのはここだけ 闇に囲まれている 泡、声、鉄の音、煙、炎 こんな静かなまちで ここだけに世界が…

ジマーマン
1か月前
9
クナーファの夜〜生と他者へ

クナーファの夜〜生と他者へ

あなたはどう生きているだろうか。最近嬉しかったことはなんだろうか。最近悲しかったことはなんだろうか。
早起きをしてパンを焼いたり、待ち合わせの30分前に着いたり、好きな人と散歩をしたり、分厚い本に悩んだり、悪口を言い合ったり、ゆっくり珈琲を飲んで1時間過ごしたり、たまに旅をしたり、路地に座ったり、傷付いたり傷付けてしまったり、日が短くなったとため息をついたり、笑ったり、夜更かししようとして朝日の手

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24/6/14 この素晴らしき日

24/6/14 この素晴らしき日

暑い。梅雨が入ってきていないというのに、まちには夏が降りている。
ムクドリが口を開けている。予報では、確か30度に到達する。

丸信でやきそばを食べる。塩でもソースでもなく、油そばのような味。

家に帰る途中でアイスを買う。今年に入ってから、なぜかいちご味を選ぶようになった。毎回ではないけど、ときどき。ある時からいちご味を選ぶことはなくなっていたのに。この歳になっていちごが帰ってくるとは思っていな

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青の夢

青の夢

すっぽりと暗い闇に包まれた田舎の駅。周りには田んぼがあるのだろうか。カエルの声が聞こえてくる。それと鈴虫がさらに遠くからリンリンと。
2時間に一本の3両編成の電車にて、その駅に降り立つ。真っ白い蛍光灯が今にも闇に消されそうに戦っている。ふといい香りが鼻に触れる。ホームの真ん中に蕎麦屋がある。弱い光の中でぽつんしている。カウンターがホームに突き出ている。
カウンターの前に行き、中を除く。中にはうつむ

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カモメみたいな色

カモメみたいな色

5月にはみ出した初夏の日差しが

白い壁を光らして

それをカモメみたいな色だと思うのは

海が落書きされている

踵の裏に

そういうことだろう

黄色い嘴

皺だらけの朝刊

水曜日

まだ長い袖

もう緩い雨

期待と鏡 ー 書籍『ワンルームワンダーランド ひとり暮らし100人の生活』によせて

期待と鏡 ー 書籍『ワンルームワンダーランド ひとり暮らし100人の生活』によせて

ひとり暮らし100人の部屋とエッセイ集『ワンルームワンダーランド ひとり暮らし100人の生活』(小鳥書房)には、部屋への期待がある。雑誌などの部屋紹介とは違う。雑誌などにあるのは、期待された部屋だ。
部屋への期待がなにかといえば、それは他人の部屋を訪れたときのワクワク、純粋な好奇心、何を期待しているか分からないような期待といったようなもの。期待された部屋を並べることが展示だとすれば、『ワンルームワ

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24/5/4 移動が手段を飛び越える夜

24/5/4 移動が手段を飛び越える夜

昨日から家開きをしていて、お昼過ぎに友だちがふらっと遊びにきた。
友達はここ最近、初めての感情に戸惑っているようだ。少し笑いながらそう話していた。その笑顔からも戸惑いが溢れていた。

夕方になってもう3人やってきた。別の場所で集まっていて、そこで出会った人も連れてきた。
このあと僕は東所沢までonettのライブを観に行くので、そのうちの一人に家番をまかせる。なんでもチーズフォンデュ会をするそうだ。

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観るということの徹底とその不確かさ - 『悪は存在しない』について

観るということの徹底とその不確かさ - 『悪は存在しない』について

映画は人を感動させたり、興奮させたり、夢を見せたり、希望を与えたり、メッセージを伝えたりする。しかし、映画にとってプリミティブなことはなんだろうか。それは「観る」ということではないだろうか。

『悪は存在しない』

この映画で私が感じたのは、観るということの徹底と、その不確かさだ。

また、観ることの徹底については感じただけではなく、実際に私が映画にそうさせられていたことでもある。

この映画は常

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パーキングエリアにて

パーキングエリアにて

月と朝焼けが向かい合っている

パーキングエリアは真っ二つになっていた

僕はきっとその継ぎ目に立っている

そういえば冷たさが肌を包んでいた

静けさは

無音の上に立っていた

世界はパノラマに囲まれている

こちらからあちらへ

たぶん

あと一時間

僕は眠れるだろうか

どちらとも言えないところで

名無しの条件 ー 名前のない関係について

名無しの条件 ー 名前のない関係について

最近友達から親密な人との話を聞いた。僕はその人と友達の関係が「名前のない関係」という名前の関係のように思った。それは結局友達や恋人と同じで、一つの名前が付けられた関係なのではないだろうかと。

そもそも名前がないということはどういうことだろう?名前とは人間が事物に対してつけるものであり、世界には名前の付けられていない事物もある。しかしそれらの事物は名前がなくても存在している。ただ存在している。

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24/4/29 道に迷ってるのではない

24/4/29 道に迷ってるのではない

朝起きる、体が少し冷えている。バイクが長く止まっている音でふと外を見る。いつもの待ち合わせだった。

髪がかなり伸びたので、朝から髪を切りに行く。9時に予約をしている。

髪を切って、ロイホで5月を控えた新緑を眺める。贅沢な朝。気分がはずむ朝。斜め前の席に、後ろ姿が小鳥書房店主の落合さんにそっくりな人を見る。パソコンを開いて作業をしているのも、落合さんを思わせる。落合さんは今このまちにいない。この

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24/5/2 緑ざわめくピンクの日

24/5/2 緑ざわめくピンクの日

学校が昼までなのだろう。大学通りでは、若い頭がいっぱい揺れている。振り向いた人の顔に影と木漏れ日が落ちていた。

今日は縁を実行する。少しだけ遠くのまちへ行く。各駅停車しか停まらない、都心近くのローカルな駅。その駅からすぐ近くのカフェに行く。ここが縁があった場所。縁をくれた人は残念ながらいなかった。

横に長い店内。薄く淡い日の光が落ち着く。深煎りのコーヒーとシュガードーナッツで過ごす。シュガード

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24/4/19 仲違いの春、仲直りの秋

24/4/19 仲違いの春、仲直りの秋

バイクが走り去った後に風が吹いた。ケヤキの葉っぱがざわざわとしている。この音が意識にのぼったのも久しぶりなような気がする。ケヤキの葉も擦れ合うほどに、季節が満ちてきた。

富士見台トンネルにて蕎麦を食べる。蕎麦は少し透けていて、通りからの日差しで光っている。とてもなめらかな蕎麦。いつも必ず食べている鯖の燻製は、目を丸くするか、思いっきり瞑るような悦楽。蕎麦湯もとろけるような悦楽。蕎麦湯でこんなんに

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つみき

つみき

木のテーブルの上で

積み木遊びをする子供

緊張という言葉が似合わない緊張感

そんなことはおかまいなしに

バス、家、ケーキ

名前を与えられていない何かが建てられては

崩れていく

木のテーブルを

積み木が叩く音は

ほどける緊張感もないのに

なぜか心地よい

Wet Soul & Cold Soul

Wet Soul & Cold Soul

Cold Soul

魂という言葉はいつも熱っぽい

寝るとき

月を見るのが好きだった

閉店後のクリーニング屋から

ラクダの形をしたシミが砂漠に帰っていく

冷たい魂はあるのだろうか

おやすみなさい

好きな人たちが

よく眠れますように

おやすみなさい

Wet Soul

燃えていない、燃えていない

白い朝



空は低く

鳥のおしゃべりは

ここには届かない

それは低く

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24/4/18 買い過ぎた珈琲

24/4/18 買い過ぎた珈琲

カツ丼の蓋を開ける。湯気が膨らんで散っていく。ふと今日で団地に引越して1年が経ったことを思い出した。

卵と衣、さらに言えば蓋もか。三重に閉じ込められた肉は、肉のたんぱくな味を残しているように思う。周りは全てタレのしょっぱい味にひたっている。細切りの玉ねぎが少しとがった食感。タレで少しとろけそうな感じと、ご飯と肉のしっかりとした味わい。力強さとまどろみのような。

おつりは200円だったけど、20

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ミッドナイト・チャイニーズレストラン

ミッドナイト・チャイニーズレストラン

深夜の中華

夜に火を吐く

不思議と眠そうな人はいない

このまちで赤いのはここだけ

闇に囲まれている

泡、声、鉄の音、煙、炎

こんな静かなまちで

ここだけに世界があるみたいだ

闇からやってきた

プリっとしたエビも

プニっとした点心も

窓の向こうで車が現れては

音もなく消えていく

パラパラと炒飯が降る

ビールで世界に馴染む

払うものを払って帰ろう

テーブルの上で野口が呆

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