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幸せよりも楽しみたい。思想/批評/日記/詩など。

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クナーファの夜〜生と他者へ

あなたはどう生きているだろうか。最近嬉しかったことはなんだろうか。最近悲しかったことはなんだろうか。 早起きをしてパンを焼いたり、待ち合わせの30分前に着いたり、好きな人と散歩をしたり、分厚い本に悩んだり、悪口を言い合ったり、ゆっくり珈琲を飲んで1時間過ごしたり、たまに旅をしたり、路地に座ったり、傷付いたり傷付けてしまったり、日が短くなったとため息をついたり、笑ったり、夜更かししようとして朝日の手前で眠ったり、ビールを10本飲んだり、夜にクナーファ(アラブのおかし)を食べたり

    • 24/6/14 この素晴らしき日

      暑い。梅雨が入ってきていないというのに、まちには夏が降りている。 ムクドリが口を開けている。予報では、確か30度に到達する。 丸信でやきそばを食べる。塩でもソースでもなく、油そばのような味。 家に帰る途中でアイスを買う。今年に入ってから、なぜかいちご味を選ぶようになった。毎回ではないけど、ときどき。ある時からいちご味を選ぶことはなくなっていたのに。この歳になっていちごが帰ってくるとは思っていないかった。 かなり久しぶりにToots and the Maytalsを聴いた

      • 青の夢

        すっぽりと暗い闇に包まれた田舎の駅。周りには田んぼがあるのだろうか。カエルの声が聞こえてくる。それと鈴虫がさらに遠くからリンリンと。 2時間に一本の3両編成の電車にて、その駅に降り立つ。真っ白い蛍光灯が今にも闇に消されそうに戦っている。ふといい香りが鼻に触れる。ホームの真ん中に蕎麦屋がある。弱い光の中でぽつんしている。カウンターがホームに突き出ている。 カウンターの前に行き、中を除く。中にはうつむいた老人が、白い作務衣を着て、高さが30cmはあろうかというコック帽を被っていた

        • カモメみたいな色

          5月にはみ出した初夏の日差しが 白い壁を光らして それをカモメみたいな色だと思うのは 海が落書きされている 踵の裏に そういうことだろう 黄色い嘴 皺だらけの朝刊 水曜日 まだ長い袖 もう緩い雨

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        クナーファの夜〜生と他者へ

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          期待と鏡 ー 書籍『ワンルームワンダーランド ひとり暮らし100人の生活』によせて

          ひとり暮らし100人の部屋とエッセイ集『ワンルームワンダーランド ひとり暮らし100人の生活』(小鳥書房)には、部屋への期待がある。雑誌などの部屋紹介とは違う。雑誌などにあるのは、期待された部屋だ。 部屋への期待がなにかといえば、それは他人の部屋を訪れたときのワクワク、純粋な好奇心、何を期待しているか分からないような期待といったようなもの。期待された部屋を並べることが展示だとすれば、『ワンルームワンダーランド』は冒険なのかもしれない。偶然と驚きと、多数のことが待っている冒険。

          期待と鏡 ー 書籍『ワンルームワンダーランド ひとり暮らし100人の生活』によせて

          24/5/4 移動が手段を飛び越える夜

          昨日から家開きをしていて、お昼過ぎに友だちがふらっと遊びにきた。 友達はここ最近、初めての感情に戸惑っているようだ。少し笑いながらそう話していた。その笑顔からも戸惑いが溢れていた。 夕方になってもう3人やってきた。別の場所で集まっていて、そこで出会った人も連れてきた。 このあと僕は東所沢までonettのライブを観に行くので、そのうちの一人に家番をまかせる。なんでもチーズフォンデュ会をするそうだ。他にも人が集まってきて楽しそうな感じになっていくけど、僕は所沢に向かう。 on

          24/5/4 移動が手段を飛び越える夜

          観るということの徹底とその不確かさ - 『悪は存在しない』について

          映画は人を感動させたり、興奮させたり、夢を見せたり、希望を与えたり、メッセージを伝えたりする。しかし、映画にとってプリミティブなことはなんだろうか。それは「観る」ということではないだろうか。 『悪は存在しない』 この映画で私が感じたのは、観るということの徹底と、その不確かさだ。 また、観ることの徹底については感じただけではなく、実際に私が映画にそうさせられていたことでもある。 この映画は常に眼差しのようだった。登場人物の眼差しだけではない。自然があたかも眼差しを持ち、

          観るということの徹底とその不確かさ - 『悪は存在しない』について

          パーキングエリアにて

          月と朝焼けが向かい合っている パーキングエリアは真っ二つになっていた 僕はきっとその継ぎ目に立っている そういえば冷たさが肌を包んでいた 静けさは 無音の上に立っていた 世界はパノラマに囲まれている こちらからあちらへ たぶん あと一時間 僕は眠れるだろうか どちらとも言えないところで

          パーキングエリアにて

          名無しの条件 ー 名前のない関係について

          最近友達から親密な人との話を聞いた。僕はその人と友達の関係が「名前のない関係」という名前の関係のように思った。それは結局友達や恋人と同じで、一つの名前が付けられた関係なのではないだろうかと。 そもそも名前がないということはどういうことだろう?名前とは人間が事物に対してつけるものであり、世界には名前の付けられていない事物もある。しかしそれらの事物は名前がなくても存在している。ただ存在している。 それに名前が付けられている事物にしても、人間が付けた名前などつゆ知らず、名前とは無

          名無しの条件 ー 名前のない関係について

          24/4/29 道に迷ってるのではない

          朝起きる、体が少し冷えている。バイクが長く止まっている音でふと外を見る。いつもの待ち合わせだった。 髪がかなり伸びたので、朝から髪を切りに行く。9時に予約をしている。 髪を切って、ロイホで5月を控えた新緑を眺める。贅沢な朝。気分がはずむ朝。斜め前の席に、後ろ姿が小鳥書房店主の落合さんにそっくりな人を見る。パソコンを開いて作業をしているのも、落合さんを思わせる。落合さんは今このまちにいない。このまちとまちの人の落合さんへの恋しさと、落合さんのこのまちへの恋しさが合わさった幻

          24/4/29 道に迷ってるのではない

          24/5/2 緑ざわめくピンクの日

          学校が昼までなのだろう。大学通りでは、若い頭がいっぱい揺れている。振り向いた人の顔に影と木漏れ日が落ちていた。 今日は縁を実行する。少しだけ遠くのまちへ行く。各駅停車しか停まらない、都心近くのローカルな駅。その駅からすぐ近くのカフェに行く。ここが縁があった場所。縁をくれた人は残念ながらいなかった。 横に長い店内。薄く淡い日の光が落ち着く。深煎りのコーヒーとシュガードーナッツで過ごす。シュガードーナツは温かくて、ふわっとした食感とじゅわっとした甘さがたまらなかった。 ここに

          24/5/2 緑ざわめくピンクの日

          24/4/19 仲違いの春、仲直りの秋

          バイクが走り去った後に風が吹いた。ケヤキの葉っぱがざわざわとしている。この音が意識にのぼったのも久しぶりなような気がする。ケヤキの葉も擦れ合うほどに、季節が満ちてきた。 富士見台トンネルにて蕎麦を食べる。蕎麦は少し透けていて、通りからの日差しで光っている。とてもなめらかな蕎麦。いつも必ず食べている鯖の燻製は、目を丸くするか、思いっきり瞑るような悦楽。蕎麦湯もとろけるような悦楽。蕎麦湯でこんなんになってしまったのは、初めてかもしれない。満たされてはいたが、欲を言えばその先はま

          24/4/19 仲違いの春、仲直りの秋

          つみき

          木のテーブルの上で 積み木遊びをする子供 緊張という言葉が似合わない緊張感 そんなことはおかまいなしに バス、家、ケーキ 名前を与えられていない何かが建てられては 崩れていく 木のテーブルを 積み木が叩く音は ほどける緊張感もないのに なぜか心地よい

          Wet Soul & Cold Soul

          Cold Soul 魂という言葉はいつも熱っぽい 寝るとき 月を見るのが好きだった 閉店後のクリーニング屋から ラクダの形をしたシミが砂漠に帰っていく 冷たい魂はあるのだろうか おやすみなさい 好きな人たちが よく眠れますように おやすみなさい Wet Soul 燃えていない、燃えていない 白い朝 雨 空は低く 鳥のおしゃべりは ここには届かない それは低く それは低く 魂は 濡れているだろうか?

          Wet Soul & Cold Soul

          24/4/18 買い過ぎた珈琲

          カツ丼の蓋を開ける。湯気が膨らんで散っていく。ふと今日で団地に引越して1年が経ったことを思い出した。 卵と衣、さらに言えば蓋もか。三重に閉じ込められた肉は、肉のたんぱくな味を残しているように思う。周りは全てタレのしょっぱい味にひたっている。細切りの玉ねぎが少しとがった食感。タレで少しとろけそうな感じと、ご飯と肉のしっかりとした味わい。力強さとまどろみのような。 おつりは200円だったけど、20円のお釣りと言われた。しかし、渡されたのは100円玉2枚だった。 今日は寒くはな

          24/4/18 買い過ぎた珈琲

          ミッドナイト・チャイニーズレストラン

          深夜の中華 夜に火を吐く 不思議と眠そうな人はいない このまちで赤いのはここだけ 闇に囲まれている 泡、声、鉄の音、煙、炎 こんな静かなまちで ここだけに世界があるみたいだ 闇からやってきた プリっとしたエビも プニっとした点心も 窓の向こうで車が現れては 音もなく消えていく パラパラと炒飯が降る ビールで世界に馴染む 払うものを払って帰ろう テーブルの上で野口が呆れている 闇に塗られた透明の扉を開けて 闇の向こうに帰ろう

          ミッドナイト・チャイニーズレストラン