マガジンのカバー画像

中沢新一著『レンマ学』『精神の考古学』『構造の奥』などを読む

53
中沢新一氏の著作『レンマ学』『精神の考古学』『構造の奥』『精霊の王』『アースダイバー神社編』などを読み解きます。
運営しているクリエイター

#中沢新一

超-明るい部屋へ/埋蔵経典を”発掘”する神話的思考 -中沢新一著『精神の考古学』をじっくり読む(7)

超-明るい部屋へ/埋蔵経典を”発掘”する神話的思考 -中沢新一著『精神の考古学』をじっくり読む(7)

中沢新一氏の『精神の考古学』を引き続き読む。

精神の考古学。
私たちの「心」は、いったいどうしてこのようであるのか?

私たちが日常的感覚的に経験している分別心(例えば、好き/嫌いを分別したり、自/他を分別したりすることは当たり前だと思っている心)が、発生してくる深みへと発掘を進める中沢氏の「精神の考古学」。

いよいよ第八部「暗闇の部屋」を読んでみようと思う。

ここで中沢氏は、「まったく光の

もっとみる
分別する眼と無分別の眼を共鳴させる -中沢新一著『精神の考古学』をじっくり読む(4)

分別する眼と無分別の眼を共鳴させる -中沢新一著『精神の考古学』をじっくり読む(4)

中沢新一氏の『精神の考古学』を引き続き読む。今回は、第五部「跳躍(トゥガル)」を読んでみよう。「トゥガル(跳躍)」とは、「青空と太陽を見つめる光のヨーガ」である(p.175)。

「光」を「みる」、視覚のモデルこのヨーガを修することで、あるとても不思議な「光」を「みる」ことができるようになるという。



通常、「見る」といえば、感覚器官である「眼」に「外界」からの「光」が「刺激」として入力され

もっとみる
執着の源である”言語”を「心の解放」のために転用する  -中沢新一著『精神の考古学』をじっくり読む(3)

執着の源である”言語”を「心の解放」のために転用する -中沢新一著『精神の考古学』をじっくり読む(3)

中沢新一氏の『精神の考古学』を引き続き読む。

『精神の考古学』 第五部「跳躍(トゥガル)」の冒頭、中沢氏は師匠から授けられた言葉を紹介する。

ベスコープというのは映画のことである。映画を見るのはとても楽しい体験である。感情を喚起され、いろいろなことを考えさせられる貴重な機会である。

中沢氏がネパールでチベット人の先生のもとで取り組んだ修行にも、「光の運動をみる」ヨーガが含まれている。このヨー

もっとみる
中沢新一著『構造の奥』を読む・・・構造主義と仏教/二元論の超克/二辺を離れる

中沢新一著『構造の奥』を読む・・・構造主義と仏教/二元論の超克/二辺を離れる

中沢新一氏の2024年の新著『構造の奥 レヴィ=ストロース論』を読む。

ところで。
しばらく前からちょうど同じ中沢氏の『精神の考古学』を読んでいる途中であった。

さらにこの2年ほど取り組んでいるレヴィ=ストロース氏の『神話論理』を深層意味論で読むのも途中である。

あれこれ途中でありますが、ぜんぶ同じところに向かって、というか、向かっているわけではなくすでに着いているというか、最初から居るとい

もっとみる
”心”の表層を剥がしていくと -中沢新一著『精神の考古学』をじっくり読む(2)

”心”の表層を剥がしていくと -中沢新一著『精神の考古学』をじっくり読む(2)

ひきつづき中沢新一氏の『精神の考古学』を読みつつ、ふと、松長有慶氏による『理趣経』(中公文庫)を手に取ってみる。かの理趣経、大楽金剛不空真実三摩耶経を、かの松長有慶氏が解説してくださる一冊である。

はじめの方にある松長氏の言葉が印象深い。

苦/楽
大/小

何気なく言葉を発したり思ったりする時、「その」言葉の反対、逆、その言葉”ではない”ことを、一体全体他のどの言葉に置き換えることができるのか

もっとみる
分別心と「霊性」/中沢新一著『精神の考古学』を大拙とあわせて読む

分別心と「霊性」/中沢新一著『精神の考古学』を大拙とあわせて読む

鈴木大拙は『仏教の大意』の冒頭、次のように書いている。

私たちは感覚的経験的に、なんとなく、自分を含む自分の周囲の世界はいつも同じ、昨日と今日も一続きで、ずっとおなじ一つ世界であるような感じがしている。

しかし、実は気づいていないだけで、世界は二つである、と大拙は書いている。第一に「感性と知性の世界」、第二に「霊性の世界」。

感性と知性の世界とは、通常、素朴に実在する客観的な世界だと思われて

もっとみる
中沢新一氏の新著『精神の考古学』を読み終える

中沢新一氏の新著『精神の考古学』を読み終える

中沢新一氏の新著『精神の考古学』を読む。
三日間かけて最後のページまで読み終わる。

というわけで、これから二回目を読み始めよう。

前の記事にも書いた通り、わたしは中沢新一氏の著作のファンで、これまでもいろいろな著書を拝読してきたが、この『精神の考古学』も鮮烈な印象を残す一冊でありました。

最後のページから、本を閉じた後も、いろいろとめくるめく言葉たちが伸縮する様が浮かんでは消えていく。

もっとみる
中沢新一氏の新著『精神の考古学』を読み始める

中沢新一氏の新著『精神の考古学』を読み始める

中沢新一氏の新著『精神の考古学』を読んでいる。

私が高専から大学に編入したばかりの頃、学部の卒研の指導教官からなにかの話のついでに中沢氏の『森のバロック』を教えていただき、それ以来中沢氏の書かれたもののファンである。また、後に大学院でお世話になった先生は中沢氏との共訳書を出版されたこともある方だったので、勝手に親近感をもっていたりする。

中沢氏の書かれるものには、いつも「ここに何かがある」と思

もっとみる
生命体としてのシンボル分節システム ー感覚、イメージ、シンボル、ことば

生命体としてのシンボル分節システム ー感覚、イメージ、シンボル、ことば

国立民族学博物館で開催された公開講演「イメージの脈動にふれる」をyoutubeで視聴しました(現在は非公開)。

基調講演は中沢新一氏の「眼とイマージュ」である。

中沢氏といえば、私もこのところ『アースダイバー神社編』を読み込んでいたところである。「イメージの脈動にふれる」も繰り返し再生して拝見しました。

講演の中で中沢氏は、人間の身体の内部から発生する”脈動”するイメージについて論じる。

もっとみる
創造的分節システムとしての"耳"を発生させる -中沢新一著『精霊の王』を精読する(7-2)

創造的分節システムとしての"耳"を発生させる -中沢新一著『精霊の王』を精読する(7-2)

(このnoteは有料に設定していますが、最後まで無料でお読み頂けます)



中沢新一氏の著書『精霊の王』を精読する連続note、その7回目の後編である。(前編はこちら↓ですが、前回を読んでいなくても大丈夫です。)



(最初から読みたいという方はこちら↓からご覧ください。)

境界性『精霊の王』、単行本の208ページには、精霊の王=宿神は「境界性」を象徴する、とある。

境界性とはどういう

もっとみる
人間の世界が発生する場所にふれる -中沢新一著『精霊の王』を精読する(6)

人間の世界が発生する場所にふれる -中沢新一著『精霊の王』を精読する(6)

本noteは有料に設定しておりますが、最後まで無料でご覧いただけます。

中沢新一氏の著書『精霊の王』を精読する連続note。第七章「『明宿集』の深淵」を読む。

(前回はこちらですが、前回を読んでいなくても大丈夫です)



『明宿集』というのは室町時代の能楽師 金春禅竹によって記された書である。善竹はかの世阿弥の娘婿でもあり、「芭蕉」など珠玉の能楽を生み出した人である。

翁とはその善竹が、

もっとみる
鼓のリズムから生じる波紋としての意味分節構造 -中沢新一著『精霊の王』を精読する(5)

鼓のリズムから生じる波紋としての意味分節構造 -中沢新一著『精霊の王』を精読する(5)

中沢新一氏の著書『精霊の王』を精読する連続note。その第六章「後戸に立つ食人王」を読む。

(前回はこちらですが、前回を読んでいなくても大丈夫です)

後戸というのは聞き慣れない言葉かもしれない。また食人王、人を食べる王、などというのもどうにも不気味な感じのする言葉である。

こういう謎めいた、時に不気味な言葉で新たな意味分節を試みることが、既成の思考のプロセスを織り成している言葉たちの分節体系

もっとみる
区別・分節作用それ自体の象徴としての"精霊"へ -中沢新一著『精霊の王』を精読する(4)

区別・分節作用それ自体の象徴としての"精霊"へ -中沢新一著『精霊の王』を精読する(4)

中沢新一氏の著書『精霊の王』を精読する連続note。その第四章「ユーラシア的精霊」と第五章「縁したたる金春禅竹」を読む。

(前回はこちらですが、前回を読んでいなくても大丈夫です)

精霊の王というのはその名の通り「精霊」の「王」である。

精霊には古今東西色々なものが居り、人類によってさまざまな名で呼ばれてきた。精霊は多種多様でさまざまな名を持っている。

しかし、そうした精霊たちの間には、違い

もっとみる
精霊の王は人界と異界の媒介者である -中沢新一著『精霊の王』を精読する(3)

精霊の王は人界と異界の媒介者である -中沢新一著『精霊の王』を精読する(3)

中沢新一氏の著書『精霊の王』。その第二章「奇跡の書」、第三章「堂々たる胎児」を読んでみる。

第一章「謎の宿神」では、宿神が蹴鞠の精霊、「鞠精」として姿を現した。それが第二章「奇跡の書」では、今度は宿神が能楽の「翁」として姿を現す。

幽玄の世界に入り込むと同時に、それを言葉によって理論化した金春禅竹。その善竹の筆による『明宿集』には「「翁」が宿神であり、宿神とは天体の中心である北極星であり、宇宙

もっとみる