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せーかつ

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まいにちのららら。*・゚
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#読書

この春に、綺麗な栞をひとつ

この春に、綺麗な栞をひとつ

小説って、編み物みたい

と思います。

かぎ針を
毛糸の、ちいさな輪っかへ通し
ひとつひとつ手を動かして
糸を列へ、列を面へと仕立てていくように

選りすぐった言葉を、重ねて結んで
一行ずつ丁寧に
文章を紡ぎ、物語へと仕立ててゆく。

どちらも本当に時間のかかる作業です。

でもそうやって、手間を惜しまず
細やかに編み込まれた細工が
ひとの心を魅了し、
そのやわらかい布地が
肌をあたたかく包み込

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菜の花といちご、それから玉子焼き

菜の花といちご、それから玉子焼き

菜の花が
風に吹かれて
ゆうらり、ゆうらり、と波を打ちます。

一面の黄色。ビタミンイエロー。
花盛りを迎え、
彩度に満ち満ちた葉の花のパノラマが
目の前に広がっています。

黄色い海のように広大な光景も、
そのひとつひとつをよく見ると
それは小さな花たちの集合体。
すっくと伸びた茎先が枝分かれして
そこにいくつもの十字状の花を
ほころばせています。

今日は、近隣の町で開かれた
菜の花まつりにや

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本を「聞く」ことが好き

本を「聞く」ことが好き

深い瑠璃色の空に
一、二粒の星が
音もなく点る如月の早朝。

私は、パジャマに
あたたかい上着を羽織って
ひとり、キッチンに立ちます。
それから
携帯電話を片隅に置き、
液晶の上の再生ボタンを押して
昨晩の続きをリクエストします。

ナレーターの方の声が
シンとしていた空気の中に、
しっとり響きゆくのを聞きながら
私は、朝食の支度にとりかかります。

流れるのは
川端康成作「伊豆の踊子」。
ナレー

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真っ白なノートの上に

真っ白なノートの上に

机の上には
ノートと万年筆、
カップに淹れた茜色の紅茶。
それから、読みさしの本が1冊。

そうして、栞を頼りに
本を開いたら、
私の、好きな時間のはじまりです。

万年筆にインクを十分に充填して
姿勢をととのえて
書かれている文章に目を落として。

本の中の、
美しい響きの言葉や
新鮮に感じる表現、
思わず共感する部分だったり、
心に触れた台詞を
真っ白なノートの上に
ひとつひとつ、拾い集めてゆ

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27歳10ヶ月、考えごとをしたい夜

27歳10ヶ月、考えごとをしたい夜

書店で偶然手にした本を
何の気なしにぱらぱらとめくり、
ふと目を落としたその先に
そんなことが、書かれていました。

色鉛筆で描かれた
さらりとシンプルな装丁。
目を引く黄色い帯には
『求めるのは「しあわせ」よりも「安心」』
と書かれています。

それは、松浦弥太郎さん著書
『松浦弥太郎の「いつも」
安心をつくる55の習慣』という本でした。

書かれている言葉を
目で追うごとに、
なにか、腑に落ち

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読書好きなあの子への贈りもの

読書好きなあの子への贈りもの

第一子の出産を、8月に控え
里帰りをした友人へ
郵便を出しました。

同封した
“おすすめ図書のしおり”には
こんな本を載せました。

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○ 愛のエネルギー家事

心を健やかに整える「きっかけの言葉」に出会えますように。この本には、やさしい暮らしを送るためのヒントがいっぱい。本田亮さんが描かれている挿絵は、見ているだけでほっこりしてきます。心がすこし疲れた

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六 月 の 花 と 金 平 糖

六 月 の 花 と 金 平 糖

梅雨のこの季節は
町を歩くたびに、
儚い桃色の、または淡紫や空色の花に
出会います。

こんなところにも、と驚くほど
六月の花、紫陽花は、
そこここに賑やかに咲いて
町全体に、色彩を灯してくれています。



つい先日は
とある一軒のおうちの玄関先に
鉢で育てられていた
一株の紫陽花に
思わず、ひとめぼれをしました。

ひし形の萼片が八重に重なってできた
愛らしい装飾花。
中心の、くっきりしたピ

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〒 2022 - 愛読書ゆうびん

〒 2022 - 愛読書ゆうびん

こちらは、白くて大粒の雪が
降っています。
そちらはどうですか。

私はこのところ、
気にかかることが重なって
なんとなく心が落ち着きません。
どうしようと思いつつ家を出て
自然と足が向くのは、
書店や図書館。
本がある場所です。

静かな空間に
行儀よく並べられた本の中から
気になったものを手に取っているうちに
少し心が回復する。

あなたにも、
そんな経験はありますか。

今日は
私のとってお

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言葉を仕事にするひと

言葉を仕事にするひと

書籍「美しいものを」には、
雑誌「暮しの手帖」の
初代編集長である花森安治さんの遺した
“暮し”を見つめる言葉が
おさめられています。

モダンな挿絵とともに綴られる
花森さんの言葉は、

目の前の人にやさしく語りかけているような
あるいは、
ひとつひとつのバランスを慎重に考えて
編み上げたような
特有の語り口が
他にない魅了を放っています。

なんとなく気忙しく、
物事への向き合い方が
すこし粗

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美しく着るということは

美しく着るということは

喫茶店の窓から午後の街並みを
ながめていたときです。
交差点をゆく、
お洒落上手なひとを見かけました。

白いシャツに重ねているのは、
エメラルドグリーンのたっぷりしたセーター。
シャツの襟元には
ネイビーと緑と白のチェック柄スカーフが、
ちょうど
セーラー服の三角タイのように
結んであります。

バッグは黒のショルダー。
ボトムは濃いデニムの長いタイトスカート。
真っ白の靴下と
黒く艷めくバレエ

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自分の感受性くらい

自分の感受性くらい

窓を網戸にすると
足先へ、僅かにひんやりした空気が
流れてきました。
つい先日までのハッキリした夏が
少しずつ姿を消して
秋の気配が滲みはじめた
過ごしやすい夜です。

リィン、リィンと
遠くの暗がりから聞こえる、鈴虫の声。
さざ波のような、透明な音が
耳当たりよく吹き抜けていきます。

思うようにいかないことばかりで
心が埋もれそうになる毎日。

足元に扇風機のよわい風をあて、
ソファの背もたれ

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ま っ さ ら な 風 に の っ て

ま っ さ ら な 風 に の っ て

いつもと同じ時間に起きて
いつもと変わらない朝ごはんを食べて
ちょっとしっかりめにメイクをして
まだ涼しい空気の中を
いつも通りに出勤する。

今日は、最終出勤日。

胸の中の、
どことなくフワフワした感覚だけが
いつもと違っている。
結婚、退職、転居。
自分で決めたことなのに
今日でこの職場に来ることが最後なんて、
なんだか嘘みたいな気がする。



残業中に先輩がくれたカフェラテのあったかさ

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洋 服 が く れ た 魔 法  .*・゚

洋 服 が く れ た 魔 法 .*・゚

表紙を飾る女性に、目を奪われました。

つばが顔の倍ほどに広い女優帽、
厚縁のウェリントン型メガネ、
ストールもジャケットも全て
品のある黒で統一されています。

一層際立つ白い肌に
さっと引かれた真紅のルージュ。
アイラインでキリリと縁取られた瞼の奥には
ペルシャ猫のような淡いブルーの瞳です。

大粒の耳飾りと胸元のブローチ、
バングルに指輪、
アクセサリのゴールドがリンクして
一層エレガントな

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花 見 月 の お 粥 さ ん 。

花 見 月 の お 粥 さ ん 。

寝ているのか、それとも起きているのか
自分でも分からないような
曖昧な眠りは一晩中続き、
時刻はとうとう午前4:30。

仕方なく観念して、今日は起きてしまうことに。

ぽっかり空いた朝時間を何に使おうか、
ちょっと迷って
いいことを思いつきました。

「こんな日は、お粥さんびより。」

コトコトじっくり時間をかけて
体にやさしい朝ごはんをつくろう。

そう決めると、とたんに
この早すぎる朝が、楽

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