雨雪風太

やっぱり授業はすばらしい。授業の可能性を広げていきましょう。 授業づくり/教材研究/教…

雨雪風太

やっぱり授業はすばらしい。授業の可能性を広げていきましょう。 授業づくり/教材研究/教材開発/授業研究/校内研修/教師の成長

記事一覧

教室の対話を考える

<例1> A:昨日の晩ご飯はカレーライスだったよ。今日の給食もカレーだけど、まあいいか。 B:給食とかぶる日ってあるよね。うちは昨日唐揚げだったな。 A:うちは唐揚げ…

雨雪風太
10日前
2

「振り返り」について考える

なぜ「振り返り」は大切なのか 「振り返り」が大切だと言われるが、その根拠はどこにあるのだろう。「振り返り」とは、どのような学習活動を指すのだろう。「振り返り」を…

雨雪風太
2週間前
1

新美南吉『ごんぎつね』を読む③

 「ごんぎつね」は悲しみの物語である。このことに異論を唱える人はいないと思います。死によってしか分かり合えない二人の関係は、理屈ではなく悲しい。いや、二人は、分…

雨雪風太
2か月前
2

新美南吉『ごんぎつね』を読む②

 前回は、物語のクライマックスであるごんが撃たれる場面について考えてみました。今回は、その前日の夜を描いた第5場面について考えます。 この場面は、命のやり取りほど…

雨雪風太
2か月前
1

新美南吉『ごんぎつね』を読む

 日本中の教師が実践し、既に教材研究し尽くされている『ごんぎつね』。この物語に新しい視点を提示するのは難しいことです。しかし、今回はあえてその『ごんぎつね』に挑…

雨雪風太
2か月前
1

発問の基本技法

 さて、今回は発問の基本技法について書いてみようと思います。  これから紹介することは、基本技法であり原則ではありません。「こうであらねばならないもの」ではなく…

雨雪風太
3か月前
3

金子みすゞ『雀のかあさん』で授業する

 金子みすゞの詩の素晴らしさを改めて紹介する必要はないでしょう。彼女が弱者へ向ける眼差しには、愛に満ちています。  みすゞの詩には、何気ない日常風景を描きながら…

雨雪風太
3か月前
3

授業エージェンシーで授業を省察する

2030年の教育 OECDが発表した2030年に向けた学習枠組みにおいて、エージェンシーという概念が注目されている。エージェンシーとは、主体的に考え、行動して、問題解決に取…

雨雪風太
3か月前
2

メノンのパラドクスと探究する学び

 プラトンの『メノン』は、探究する学びにおける対話の必要性について、重要な示唆を与えてくれます。 対話とは互いに手探りしながら着地点を探るコミュニケーション  …

雨雪風太
4か月前
5

学びの作法と支え合う学びのマインドセット ~謙虚さ・ケア・利他・互恵性~

1 学びの作法 今回は、学びを成立させる教室での作法について考えてみます。  学びの作法とは、学ぶ側と支える側の心構えと所作のことです。作法は、日常生活上の行為…

雨雪風太
5か月前
3

対象・他者・自己との対話 三位一体の学び

 学びは対象、他者、自己との対話的実践であるといわれます。それはどういう意味なのでしょうか。対象との対話を問題と向き合うこと、他者との対話を仲間と協同すること、…

雨雪風太
5か月前
4

世情 中島みゆき ~遅れてきた世代の苦悩~

 中学生の頃だった。ラジオから流れてくる歌に衝撃を受けた。歌詞の意味は分からなかった。ただ、何かを伝えたいという表現者のエネルギーだけが強烈に伝わってくる。そん…

雨雪風太
5か月前
12

人麻呂が見た「炎」の真実⑦

東野炎立所見而反見為者月西渡                柿本人麻呂 「炎」は朱と水銀を生産する煙  人麻呂が見た「炎」の真実を探し求めた旅も、いよいよ最終回…

雨雪風太
5か月前
2

人麻呂が見た「炎」の真実⑥

東野炎立所見而反見為者月西渡                   柿本人麻呂 今回も阿騎野の秘密に迫っていきます。 不老不死の秘薬を求めて  「初期万葉論」の中…

雨雪風太
5か月前
2

人麻呂が見た「炎」の真実⑤

東野炎立所見而反見為者月西渡                 柿本人麻呂 今回も阿騎野という土地の謎に迫っていきます。 阿騎野は薬草園だった  阿騎野は、古くか…

雨雪風太
5か月前
2

人麻呂が見た「炎」の真実④

東野炎立所見而反見為者月西渡                 柿本人麻呂  前回は、漢字学者の白川静の説を紹介しました。白川静もまた「炎」を夜明け前の曙の光だと…

雨雪風太
5か月前
2
教室の対話を考える

教室の対話を考える

<例1>
A:昨日の晩ご飯はカレーライスだったよ。今日の給食もカレーだけど、まあいいか。
B:給食とかぶる日ってあるよね。うちは昨日唐揚げだったな。
A:うちは唐揚げがあんまり出てこないんだよね。だって、お姉ちゃんが鶏肉嫌いだから。
B:うち、結構唐揚げの日があるかな。お母さんが、「鶏肉は安いから」って言ってた。
A:それはそうだな。あぁ、上手い唐揚げが食べたいな。
B:〇〇飯店の唐揚げ、めっちゃ

もっとみる
「振り返り」について考える

「振り返り」について考える

なぜ「振り返り」は大切なのか 「振り返り」が大切だと言われるが、その根拠はどこにあるのだろう。「振り返り」とは、どのような学習活動を指すのだろう。「振り返り」を書かせることで、どんな力が育つのだろう。「振り返り」について改めて考えてみると、分からないことはとても多い。
 昨年、次期教育振興基本計画が閣議決定された。そこには、「2040年以降の社会を見据えた持続可能な社会の創り手の育成」と「日本社会

もっとみる
新美南吉『ごんぎつね』を読む③

新美南吉『ごんぎつね』を読む③

 「ごんぎつね」は悲しみの物語である。このことに異論を唱える人はいないと思います。死によってしか分かり合えない二人の関係は、理屈ではなく悲しい。いや、二人は、分かり合うための対話のスタート地点に立っただけで、まだ何も始まってはいないうちに死を迎えた。死によって、分かり合う機会を永久に失ってしまったのです。物語の悲しみは、ごんのけなげな償いに視点を向けられがちですが、本質的には心が通わないこと、言葉

もっとみる
新美南吉『ごんぎつね』を読む②

新美南吉『ごんぎつね』を読む②

 前回は、物語のクライマックスであるごんが撃たれる場面について考えてみました。今回は、その前日の夜を描いた第5場面について考えます。
この場面は、命のやり取りほどの緊張感はないものの、ごんの運命が決定される重要な転換点となっています。

運命の転換点

 月の明るい晩、兵十と加助が並んで歩く後ろを、ごんは二人の影ぼうしを踏みながらついていきます。途中で加助は、ごんの届ける栗や松茸が神様の仕業だと兵

もっとみる
新美南吉『ごんぎつね』を読む

新美南吉『ごんぎつね』を読む

 日本中の教師が実践し、既に教材研究し尽くされている『ごんぎつね』。この物語に新しい視点を提示するのは難しいことです。しかし、今回はあえてその『ごんぎつね』に挑戦してみようと思います。

最後の6場面を紹介します。

 兵十が駆け寄ってきてからラストまでの部分は、何度も何度も研究授業で扱われてきました。そこで、今回は火縄銃を撃つ前に視点を当ててみます。
 兵十は、裏口から中に入るごんを見つけ、銃で

もっとみる
発問の基本技法

発問の基本技法

 さて、今回は発問の基本技法について書いてみようと思います。
 これから紹介することは、基本技法であり原則ではありません。「こうであらねばならないもの」ではなく、「こうした方がたぶんうまくいく」という経験則です。
 そんな発問の技法を5つに絞ってまとめてみました。どの学年、その教科でも、割と広く使えるものを集めています。

発問の基本技法51 言葉を明確にする○ 何度繰り返しても、一言一句変わらな

もっとみる
金子みすゞ『雀のかあさん』で授業する

金子みすゞ『雀のかあさん』で授業する

 金子みすゞの詩の素晴らしさを改めて紹介する必要はないでしょう。彼女が弱者へ向ける眼差しには、愛に満ちています。
 みすゞの詩には、何気ない日常風景を描きながら、途中で弱者にスポットライトが当てられ、対比的に弱者の側に心が引き寄せられていくパターンが多くあります。この詩も典型的なパターンによってつくられています。
 今回は、この詩を使って授業をする場合の展開例、発問例を示します。
※音読・視写を交

もっとみる
授業エージェンシーで授業を省察する

授業エージェンシーで授業を省察する

2030年の教育 OECDが発表した2030年に向けた学習枠組みにおいて、エージェンシーという概念が注目されている。エージェンシーとは、主体的に考え、行動して、問題解決に取り組み、責任をもって社会変革を実現しようとする能力や態度を指している。主体性や思考力、行動力など、切り分けられた個別の能力ではなく、自らよりよい社会を実現する主体者として必要な資質を総体として捉えたものである。このような資質はA

もっとみる
メノンのパラドクスと探究する学び

メノンのパラドクスと探究する学び

 プラトンの『メノン』は、探究する学びにおける対話の必要性について、重要な示唆を与えてくれます。

対話とは互いに手探りしながら着地点を探るコミュニケーション

 メノンは、自分自身を優秀であると自覚している青年です。話は、そのメノンがソクラテスのもとを訪れて、徳について質問するところから始まります。
 メノンは、「徳は教えられるものなのでしょうか?」と、ソクラテスに教えを請いますが、それに対して

もっとみる
学びの作法と支え合う学びのマインドセット ~謙虚さ・ケア・利他・互恵性~

学びの作法と支え合う学びのマインドセット ~謙虚さ・ケア・利他・互恵性~

1 学びの作法 今回は、学びを成立させる教室での作法について考えてみます。
 学びの作法とは、学ぶ側と支える側の心構えと所作のことです。作法は、日常生活上の行為のきまり、しきたりですが、それに従った方が誰から見ても美しく、誰にとっても心地よいと感じる、他者と生きるための経験則でもあります。
 ここで言う学びの作法は、「自立したよりよい学び手となるための作法」であり、「学びの場にふさわしい人間関係づ

もっとみる
対象・他者・自己との対話 三位一体の学び

対象・他者・自己との対話 三位一体の学び

 学びは対象、他者、自己との対話的実践であるといわれます。それはどういう意味なのでしょうか。対象との対話を問題と向き合うこと、他者との対話を仲間と協同すること、自己との対話を学びを振り返ることと安易に考える人も少なくないと思います。果たしてそうでしょうか。今回は、対象、他者、自己との対話の意味について探ってみようと思います。
 まず、対話を次のように定義しておきます。

対話とは、互いの未知に向か

もっとみる
世情 中島みゆき ~遅れてきた世代の苦悩~

世情 中島みゆき ~遅れてきた世代の苦悩~

 中学生の頃だった。ラジオから流れてくる歌に衝撃を受けた。歌詞の意味は分からなかった。ただ、何かを伝えたいという表現者のエネルギーだけが強烈に伝わってくる。そんな印象だった。
 シュプレヒコールの波がデモ行進だろうということは、中学生にも分かった。しかし、それだけだった。意味は分からないまま、強い印象だけを残して歌は記憶の底にしまい込まれた。
 プロジェクトⅩが復活して、テレビから流れてくる中島み

もっとみる
人麻呂が見た「炎」の真実⑦

人麻呂が見た「炎」の真実⑦

東野炎立所見而反見為者月西渡
               柿本人麻呂

「炎」は朱と水銀を生産する煙

 人麻呂が見た「炎」の真実を探し求めた旅も、いよいよ最終回を迎えます。
 前回には、宇陀が水銀の産地だったこと、神武東征は水銀を求める移動だった可能性があることを述べました。
 この記事の最初に、人麻呂が冬猟歌を詠んだ場所を阿紀神社と仮定しました。それはもちろん、天照大神や伊勢神宮とかかわりの

もっとみる
人麻呂が見た「炎」の真実⑥

人麻呂が見た「炎」の真実⑥

東野炎立所見而反見為者月西渡
                  柿本人麻呂

今回も阿騎野の秘密に迫っていきます。

不老不死の秘薬を求めて

 「初期万葉論」の中で白川静は、阿騎野は当時の神仙郷だったと述べています。その理由は書かれていませんが、そこには中国の神仙思想の影響があると考えます。
 秦の始皇帝は、不老不死の薬を求めて徐福を日本に派遣しようとしました。実際に徐福が派遣されたのか、日本

もっとみる
人麻呂が見た「炎」の真実⑤

人麻呂が見た「炎」の真実⑤

東野炎立所見而反見為者月西渡
                柿本人麻呂

今回も阿騎野という土地の謎に迫っていきます。

阿騎野は薬草園だった

 阿騎野は、古くから天皇家の薬草園でした。そのことは、日本書紀の推古天皇に関する記述に見られます。これが資料として確認できる日本で最も古い薬猟の記述です。

『日本書紀』推古19年(611)5月
夏五月の五日に、菟田野に薬猟す。
鶏明時を取りて、藤原池

もっとみる
人麻呂が見た「炎」の真実④

人麻呂が見た「炎」の真実④

東野炎立所見而反見為者月西渡
                柿本人麻呂

 前回は、漢字学者の白川静の説を紹介しました。白川静もまた「炎」を夜明け前の曙の光だと考え、阿騎野冬猟歌を魂振りと魂鎮めの言霊の儀式であると解き明かしました。

 しかし、そんな重要な儀式の場所として、なぜ阿騎野が選ばれたのでしょうか。
 阿騎野は当時でも霊が棲む異界の地であり、仙郷であるととらえられていたようです。持統天

もっとみる