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ポップカルチャーは裏切らない

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”好きなものを好きだと言う"を基本姿勢に、ライブレポート、ディスクレビュー、感想文、コラムなどを書いている、本noteのメインマガジン。
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2022年4月の記事一覧

最近観た旧作の感想メモ(2022年4月分)

最近観た旧作の感想メモ(2022年4月分)

サバイバルファミリー(Amazon Prime)

仙台に旅行しようしてた(結果諦めましたが)時、仙台ロケの映画を求めて観た1本。矢口史靖監督は「ハッピーフライト」が大好きでそれ以外はそこそこ、くらいの感じだったけどこれはだいぶ面白かった。思ってる以上にちゃんと深刻に描写されるし、ちゃんと人は死ぬということを予感させてくれる。沈没しないver.の「日本沈没」的な、ジョークの機能しない深刻さ。僕も困

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2022年4月の色々(やがて海へと届く/DYGL×ミツメ/浪漫革命×MONO NO AWARE/#ケープロ名古屋)

2022年4月の色々(やがて海へと届く/DYGL×ミツメ/浪漫革命×MONO NO AWARE/#ケープロ名古屋)

やがて海へと届く

先行上映会で観た。誰かの全てを思い知ることなんてできないけれど、それでも、それでも、と思いを馳せることの愛しさを募らせる映画だった。あの日の言葉の続きや、いつか見ようとしてた景色も、全てはどこかで繋がって、きっとまた会えるはず。喪失の受容と再生、その先を美しく描き切っていた。

浜辺美波の浮世離れ感は見事だったし、相反するようでよく似た主人公を岸井ゆきのが演じる完璧なキャスティ

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[後編]僕らが言ってきた“メンヘラ”って何なのか…クリープハイプ『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』10周年に寄せて

[後編]僕らが言ってきた“メンヘラ”って何なのか…クリープハイプ『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』10周年に寄せて

※本記事は後編です。前編を先に読んで頂けると、この文章の意図が伝わりやすいと思います。
[前編]

"メンヘラ"と音楽音楽に向けられる“メンヘラ”という形容。時にアーティストが生き辛さを綴ること自体が"メンヘラ"と扱われる。それを聴くリスナーも"メンヘラ"であるとされるケースはとても多い。クリープハイプは尾崎世界観(Vo/Gt)の伝えたい想いが誠実で切実であればあるほど、このような形容や受容のされ

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[前編]僕らが言ってきた“メンヘラ”って何なのか…クリープハイプ『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』10周年に寄せて

[前編]僕らが言ってきた“メンヘラ”って何なのか…クリープハイプ『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』10周年に寄せて

2012年4月18日、クリープハイプのメジャー1stアルバム『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』がリリースされた。行き場のない虚しさ、生活に潜む愛憎、忘れがたい日々や恋、それらを独特の比喩/語彙と言葉遊びを絡めて丁寧に描かれた歌詞。ヒリヒリとした情感を届けるのにうってつけな尾崎世界観(Vo/Gt)のハイトーンな歌声と、それを最高潮の状態で送り出す多彩でしなやかなギターロックサウンド。テン年代のロ

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2022.4.13 UNISON SQUARE GARDEN×マカロニえんぴつ「fun time HOLIDAY 8」@日本特殊陶業市民会館フォレストホール

2022.4.13 UNISON SQUARE GARDEN×マカロニえんぴつ「fun time HOLIDAY 8」@日本特殊陶業市民会館フォレストホール

2年前に断念せざるを得なかったUNISON SQUARE GARDENの対バンツアーシリーズ、名古屋公演はTOY’S FACTORYの後輩であるマカロニえんぴつを迎えて開催された。キャリアとして5年ほど先輩であるユニゾンを前に、マカえんがどう立ち回るのか気になっていたが堂々たる入場から即座にユニゾンの「オリオンをなぞる」のイントロを奏で始めたではないか。奇襲を仕掛けるにはうってつけ。ちょっと笑って

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2022年3月の色々(家主/M-1ツアー/愛知県陶磁器美術館/多治見モザイクタイルミュージアム)

2022年3月の色々(家主/M-1ツアー/愛知県陶磁器美術館/多治見モザイクタイルミュージアム)

3.6 家主”DOOM”Release Tour 2022@今池得三

人気急上昇、という形容は似つかわしくないが実際、すごく支持が高まっていることは明白な東京の4ピースバンド。今池の小さな居酒屋兼ライブハウスという本会場は即効ソールドアウト。そして結果として大熱狂を生み出していた。SEなしでふらりと入場し、田中ヤコブ(Vo/Gt)のMCともつかない喋りで幕開けたのには拍子抜けしたが、曲が始まれば

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ダウンタウンの漫才と空気階段の単独

ダウンタウンの漫才と空気階段の単独

4/3に「ダウンタウンの漫才の最新作」がなんばグランド花月で上演されていたので配信を購入して観た(アーカイブは4/10まで!)。フリートークからなだらかに漫才へと移行する、全編アドリブによるれっきとした30分間の漫才だった。浜田さんが「ここだ!」というタイミングで、"ネタ"へと入り込んでいく瞬間はとんでもなくゾクゾクした。ダウンタウンが漫才をしていた頃や「ごっつええ感じ」をリアルタイムでは知らず、

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”分かり合えなさ“への抵抗〜ASIAN KUNG-FU GENERATION『プラネットフォークス』

”分かり合えなさ“への抵抗〜ASIAN KUNG-FU GENERATION『プラネットフォークス』

心荒むことの多い時代だ。2020年の2月からより浮き彫りになっただけで、それよりもずっと前から価値観で傷つけ合い、思想で燃やし合うような日々は常に目の前に横たわっていた。そんな世界にあって、後戻りできない断絶とコミュニケーションの可能性を描いた濱口竜介監督の「ドライブ・マイ・カー」が第94回米アカデミー賞で国際長編映画賞を受賞したほか、世界中で評価されたことは1つの象徴的な出来事のように思う。言語

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