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seiji_arita
2024年2月28日 21:07
「追憶の果て」細かい雨が降る 雨は僕の目には映らず人知れず静かに音も無く地面を濡らしていた其れは新しい季節の到来を 意味している様に思えた夢の無い深い眠りが通り過ぎる足音が聴こえ何かが僕の中で終わってしまったそんな感覚を誤魔化し続けていたもともとピースが揃って無いパズルは完成する事は無い わかっていた結末だった雨に濡れた街に枯れた花を捧げ
2024年2月25日 22:49
「左利きの彼女」濃密な空気の塊に雨の予感がしたもう時間が無い 僕は高く茂った 緑の草を掻き分けて 綺麗な湖へと向かう 野生の花の匂いと幻想的なオルガンの音ある時点で僕の感覚が内圧と外圧に押し潰され 其の接地面にあったはずの感情が崩れ始め痛みと喜びを失った綺麗な湖の辺りには大きな木があってその下に白いベンチがある其処に君が居る その事だけ
2024年2月25日 18:53
「小さな鍵」君が自由である事 それが僕の求めるただひとつの事だった 君の中にひっそりと隠された秘密の小さな鍵其の秘密の持つ孤独さを浮かべた君の微笑みを僕は見逃さなかった色彩が奪われた訳じゃ無い白も黒も同じ色には変わりないそれにやっと気が付いたんだ僕等はお互いの欠片を交換し合い 其の欠片を大切に胸にしまった 誰にも気付かれない様に 僕等の記憶
2024年2月25日 01:42
「純白」細い糸を手繰り寄せる様に 記憶の痕跡を辿るこの世界の基準から外れた異形の物を手に取り静かに口づけ小説や戯曲の中に深く身を沈めた奇妙な輝きを持つ月と瞬きを忘れた星僕を誘うある種の力が漲っていた序曲に続く第一幕 その先にある物語何ひとつとして生み出せない日々の中僕は僕自身と対面し肖像画を描き続けている其処にあったはずの想いを言葉に
2024年2月24日 03:17
「血」調和を重んじて生きる風と自我の宿命が交差する世界の環は 既に閉じられ回避と逃避の中説明さえつかない弁明を続ける其処に流されたリアルな血がただ虚空を睨み付けていた ほとばしる血には勝利も敗北も無い無縁な世界の光が剣の様に僕の心を刺し貫く背景に描かれた街には 消費が美徳と言う価値基準を持つ人達で溢れていた大義名分を掲げ容赦なく断罪を下す
2024年2月21日 11:41
「盲点」彼女の瞳の奥に時間を超えた深い世界を見た其処にある意志の煌めきと確かな熱源僕はその一対の瞳に激しく心を揺さぶられた行き先を持たず ただ移動する為だけの移動を繰り返す日々 そんな僕の心を静止させる輝きを見つけたそう思っていた しかし僕の盲点が何かを見逃しているそして また彼女も同じだったその何かが最も大切な事だと知ったのはふたりが
2024年2月18日 21:34
「奇術師」僕は彼女の微笑み方が好きだった 理由なんてない本質的な部分で奇形だと定義された世界の片隅で彼女の事をずっと見ていた何かが僕の記憶の端に引っかかっている僕自身の古い影と遠い昔に見た彼女の仕草 そして ただ曖昧に肯く過去に知られたくない不都合の無い人間なんて何処にもいない彼女の背後に立つ奇術師が帽子から鳩や花束を取り出すぼんやりと眺
2024年2月16日 20:11
「陰影」混じり気無しの本物から100パーセントの偽物までどうでもいいさ そんな事無名のまま消えた彼奴の言葉は本当に無価値なのか その価値基準は何処にある才能は無いけど良い奴だとか才能だけはあるが糞みたいな奴だとか飢えと乾きが集約された夜の色其処に開いた巨大な穴は全ての始まりを意味する入り口なのか全ての終わりを意味する出口なのだろうか
2024年2月15日 19:54
「かまち」ただ書きたいから書いている書く事自体には何の効力も無くそれに付随した何かの救いがある訳でも無い文章を書く事で心の安定を図るだとか自己表現をする事で精神を解放するだとか誰かの心 精神の安定や解放に寄与するだとか馬鹿げてる 事柄を細分化して文字に置き換えているだけだ単なる吐き出しの様な文字の羅列意味のわからない文脈何の結論も生まない
2024年2月15日 10:41
「雨音」僕は彼女と交わした話しの断片を思い出していたいつの間にか天候は崩れて空は湿気を含んだ重い雲に覆われていた僕は傘を持っていない長く降り続きそうな雨 ネクタイを緩めた彼女は不思議な事に雨の夜にやって来るもう逢えないかと思ってたよ そう言った僕に貴方は私に逢う度に同じ事を言うのね 彼女はそう言って微笑んだそして唇を噛んでまた少し笑った
2024年2月13日 22:22
「残された街」壁に焼き付けられた影が腐敗と崩壊と失望を映し出していた嘘だって良かったんだ お前と逢える口実を探していただけなんだ記憶は ゆっくりと時間をかけて薄れ霞んで消えてゆく其処に俺達が属している事は静かに降り頻る雨が知っているそして時が過ぎ去り後には街だけが残され今も生きている幾つもの戸惑いと頬にあるハスった傷失くせないもの ただひ
2024年2月10日 00:26
「月の南 星の下」辛い時には幸せなふりをするの 君の口癖僕は瞳を閉じ耳を済ませ 其処にあるはずのものを思い描いた ほんの少しの間だけ手を握り合っていた僕は世界に近づこうとしていた近づきたかった その普通と呼ばれる世界に僕は自分が自分自身であり君は君自身である 他の誰でも無い事に不思議な安心感を覚えていた彼等の創り出したものは いつも僕や君を
2024年2月9日 18:39
「西風」僕等は空白を埋める為に話し続けた ただ話し続けていた お互いの仕事の事や身の上話し過去にあった色々な事柄僕はどれだけ孤独で どれほどのものを失って来たか 全てを君に知って欲しかった其れは逆に 誰かを傷つけて 大切な何かを僕自身が奪って来た経過でもある事を僕はわかっていたそれでも 全てを知って欲しかった彼女もまた同じだった 僕は彼女の話
2024年2月8日 13:05
「春の風」其れは間に合わせで作られた世界の中で全ての辻褄合わせとはかけ離れた場所にある唯一の真実の様に煌めいていた決して強い輝きではなく 見逃してしまいそうな弱く消えそうな光限りなく透明に近い生命の輝き窓の外の冬に似た静寂と月を待つ夜に似た漆黒が混ざり合う見捨てられた街に佇み昼と夜の狭間に腰掛けていた顔を持たない人々が通り過ぎてゆく奇妙で