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のざわの映画感想文

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映画感想・推薦・考察などを扱った記事です。娯楽映画が中心です。準メインコンテンツ。
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【ネタバレ無】きっと、彼女たちにとっては大きな一歩「きみの色」

【ネタバレ無】きっと、彼女たちにとっては大きな一歩「きみの色」



○「きみの色」が持つ魅力

 オールタイムベスト映画の一つ「リズと青い鳥」の関係者が手掛ける完全新作「きみの色」が、遂に公開された。

 脚本家:吉田玲子の最新作であり、更にはMr.Children(以下ミスチル)が書き下ろし主題歌を提供したという、自分の「ふたつの好き」が重なった奇跡的な本作は、事前の予想と画風通りに丁寧で繊細な映画だった。

 映像面の素晴らしさは言うまでもない。本筋と無関

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エンドロール飛ばし厳禁!「セーヌ川の水面の下に」

エンドロール飛ばし厳禁!「セーヌ川の水面の下に」

 Netflixで配信されている映画「セーヌ川の水面の下に」(原題「Under Paris」 2024年)を鑑賞した。
 キービジュアルで一目瞭然だが、本作はフランス・パリのセーヌ川にサメが来襲するというパニック映画──より具体的に言えば「サメ映画」である。

 今日、「サメ映画」はエンタメの一ジャンルと化している。「ジョーズ」「オープン・ウォーター」「海底47m」といった海洋ホラー系に限らず、荒

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ふたつの「好き」が重なった─ Mr.Children ×「きみの色」

ふたつの「好き」が重なった─ Mr.Children ×「きみの色」

“Mr.Childrenの新曲、アニメ映画「きみの色」主題歌に決定”

 何気なくSNSを眺めていた早朝。このニュースを知った俺の心はざわつき、ピントの合わない寝ぼけ眼は即座に覚醒した。
 「Mr.Children」と「きみの色」──。一切交わらない、交わるはずがないと思っていたふたつの要素が、コラボレーションを果たそうとしている。



 Mr.Children。略してミスチル。中学生時代に出

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TDL「トゥモローランド」、旧アトラクションたちの記憶

TDL「トゥモローランド」、旧アトラクションたちの記憶

◯アトラクションは諸行無常

 約半年後、東京ディズニーランド(以下、TDL)のアトラクション「バズ・ライトイヤーのアストロブラスター」が閉館し、「シュガー・ラッシュ」を題材としたアトラクションへと新生するらしい。
 上記報道の4日前にTDLを訪れたばかりの俺にとって、このニュースは正しく寝耳に水だった。言わずと知れた傑作「トイ・ストーリー」シリーズを原作に持つ人気アトラクションが、完成(2005

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「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」見所箇条書き備忘録

「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」見所箇条書き備忘録



●はじめに

 公開初日に鑑賞した「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」は、予想以上の傑作だった。
「同窓会映画」としてのキモを抑えたキャラクターの立て方、ギミックとサプライズとケレン味に満ち溢れたロボバトル、TV版で提示された管理社会「デスティニープラン」に対する完全な否定。2時間でよくここまで詰め込み、かつ消化できたものだ……と感服せざるを得ない。初日の鑑賞だけあって熱量の高いファン

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「スピンオフ作品」を観たい映画のサブキャラクター達

「スピンオフ作品」を観たい映画のサブキャラクター達

● スピンオフ映画の魅力

 フィクションを楽しんでいる最中、俺は頻繁に考える。「あのキャラクターの過去が知りたい」「あのキャラクターの活躍をもっと見たい」……。そうした欲望を叶えてくれるのが、いわゆるスピンオフ作品。サブキャラクターを主役に据えたり、作品世界そのものを改めて掘り下げたりする派生作品だ。
 本稿では主に前者、「キャラクター系スピンオフ」の映画作品に焦点を絞り語っていきたい。

 比

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2023年に観た映画 (85作品)を振り返る

2023年に観た映画 (85作品)を振り返る

 今年も通例通り、一年間で鑑賞し印象深かった映画について語っていきたい。
 noteで映画関係の投稿を始めて約三年目になるが、今年は例年ほど多くの作品を観れなかったことが非常に悔やまれる。それに伴いレビュー記事の投稿も滞っていたため、今回の記事で一気に振り返っていくつもりだ。

◯鑑賞作品リスト・諸注意

「DAICON FILM版 帰ってきたウルトラマン」(1983年)
「VERSUS ヴァーサ

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あの慟哭の理由を知った─ 「ゴジラ-1.0 マイナスワン」

あの慟哭の理由を知った─ 「ゴジラ-1.0 マイナスワン」

●夢中になった「ゴジラ-1.0」

 現在、時刻は21時20分。
 1時間半ほど前、俺は待望の国産ゴジラ最新作「ゴジラ-1.0」を鑑賞した。帰宅し、食事を済ませ、シャワーを浴びた後、先程の熱が冷めやらぬうちにキーボードを叩いている。
 結論から言って、本作は個人的に事前の予想・期待を遥かに上回る、非常に満足できる怪獣映画だった。

 まずCMでも披露されていた通り、CGで表現されたゴジラが白昼堂々

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京アニグッズストアで「響け!ユーフォニアム」を拝む@京都駅

京アニグッズストアで「響け!ユーフォニアム」を拝む@京都駅

 奈良への出張帰り、足早に京都駅へ向かった。「京アニグッズストア」に立ち寄り、「響け!ユーフォニアム」(以下「ユーフォ」)のグッズを購入するために。

 ──2023年夏、俺は「ユーフォ」シリーズの沼へ浸かっていた。
 沼入りのきっかけは、何気なく鑑賞したアニメ映画「リズと青い鳥」。繊細な映像・演出、そして巨匠:吉田玲子氏が脚本を手掛けた「爽やかさと湿度を共存させた一夏の物語」に心底魅了された。本

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「六本木ディズニー展」で気に入った歴代作品ポスター 四選

「六本木ディズニー展」で気に入った歴代作品ポスター 四選


◯ディズニー展の見所

 六本木ヒルズ・森アーツセンターギャラリー&スカイギャラリーで開催中の展示会「ディズニー・アニメーション・イマーシブ・エクスペリエンス(後期展)」へ行った。

 「Circle of Life」「A Whole New World 」「Try Everything」等々の楽曲に合わせ、様々な歴代作品のシーンを再編集したPV的映像上映がウリの本イベント。多くの人々がスマホの

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「君たちはどう生きるか」を、私たちはどう語るか

「君たちはどう生きるか」を、私たちはどう語るか

 7月17日、宮崎駿※監督の最新作「君たちはどう生きるか」を鑑賞した。

 老若男女で満席となった劇場内。抜群にエアコンが効いているにも関わらず熱気を感じたのは、単なる気のせいではないだろう。謎のヴェールに包まれた作品の封切り三日後、しかも祝日。「絶対にネタバレを喰らう前に鑑賞しよう」と意気込む人々が集結していたはずだ。
 かく言う俺もその一人。「俺たちは何を見せられるのか」と、期待と疑念の双方を

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それは無謀か、或いは勇気か─ 「クリード 過去の逆襲」

それは無謀か、或いは勇気か─ 「クリード 過去の逆襲」

●「過去の逆襲」の個人的評価

 傑作ボクシング映画「ロッキー」シリーズのその後を描く「クリード 」。その3作目「過去の逆襲」が公開された。
 念願の最新作……。ロッキーファンの一人として、観に行かない選択肢は無い。物語が気になることも勿論だが、主人公:アドニス役のマイケル・B・ジョーダン(以下、全て人名敬称略)が初監督を務めると知ったその日から、尚更興味を唆られたのである。

 ロッキー役:シル

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バイクと孤独と赤いマフラー  「シン・仮面ライダー」

バイクと孤独と赤いマフラー 「シン・仮面ライダー」

●「シン・仮面ライダー」は強敵だった

 去る3月22日。庵野秀明監督の最新作にして待望の大規模予算ヒーロー映画「シン・仮面ライダー」を鑑賞した。

 「シン・〜」と銘打たれた一連の作品は全て鑑賞済みだが、とりわけ本作は俺にとって最も感想に困り、著しく戸惑いを隠せない作品となっていた。
 いや、確かに俺は本作を楽しんで鑑賞した。しかし、非常に好ましい点・思わず首を捻ってしまう点・仮面ライダーファン

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初めて落涙した映画体験─ 名作ジブリ映画「On Your Mark」2023年再上映

初めて落涙した映画体験─ 名作ジブリ映画「On Your Mark」2023年再上映


●初めての涙

 約1600本の映画を観てきた31年間。その生涯の中で、涙を流した鑑賞体験は初めてだった。
 決して大袈裟でも法螺でもない。俺はノンフィクションを書く際、“感情を盛らない、捻じ曲げない”と心掛けている。このスタンスと本稿で語る出来事を、どうか皆様に信じてほしい。

 2023年2月中旬、イオンシネマ シアタス調布──。スタジオジブリ・宮崎駿監督の傑作「On Your Mark」が

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