#短編小説
【いつメロ No.8】いつかの私へ
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拝啓 いつかの私へ
この手紙を読むとき、私は何歳でどうなっているか分からない。
社会に出てバリバリ働いているかもしれない。中年になって家族がいるかもしれない。独身を貫いて何かを極めているかもしれない。そんな想像を膨らませていると、何だかワクワクハラハラしてきたな。
けど、どんな自分になっても、この手紙を書くに至った経緯は覚えていると思う。その状況になったから、この手紙を見つけ出して開いてい
妄想、野良猫、首長竜
僕の通っていた小学校にはケンちゃんという男の子がいた。
彼はいわゆるちょっと遅れた子で、僕たちはよく彼をからかって遊んでいた。彼が転んだら大笑いし、遠足の時は同じ班にならないよう押し付けあったりしていた。
彼がそこまで煙たがられていたのは、彼がどんくさかったからだけではなく、たびたび虚言を吐くせいだった。
しかもその内容は、昨日おばけに人が食べられるのを見ただとか気が付いたらお父さんとお母さん
ショートストーリー 花屋のユリ
ずいぶん前のことだ。
その娘はいつも、花屋に一人でいた。
売り子は、彼女以外には見たことがなかった。
市民病院から歩いて、5分ほどの場所にある小さな花屋。
店の名前はモデスティ。
寺沢一郎は、母が市民病院に入院してからの一ヶ月、土曜の日は、母に会いに行くことが習慣になっていた。
そのとき、道筋にあるモデスティによって、母のために花を買った。
花屋の娘は、目の輝きが愛くるしく、笑顔が魅