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また読み直したいものを勝手に放り込んでゆくところです。 勝手に入れますが、御容赦ください。
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2023年1月の記事一覧

短歌 雪 十首

短歌 雪 十首

1
絡まった毛糸をほどく窓辺にて「粉雪だ」ってきみはつぶやく

2
春を待つ(固いこぶしがほころびるよう)祈りにも雪降り注ぐ

3
雪だるまたぶん私のご先祖もそのご先祖もそのご先祖も

4
「極寒の雪国生まれ」寒さにはめっぽう強いはずの設定

5
こころにも雪降るだろうしんしんと未練ばかりが暴れる夜は

6
終わり方忘れた恋がかつてありみだりに雪は音もなく降り

7
雪道に足跡つけるためシューズを

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親友から同じ内容の手紙が二通届いた

親友から同じ内容の手紙が二通届いた

2019年のある冬の日、一週間前に手紙をくれた親友から、また手紙が届いた。少しだけ、怖くなった。

◆◆◆

当時、親友は山口県、私は東京に住んでいたのでなかなか会えなかった。年に一度くらい、近況報告を綴った手紙を気まぐれに出し合う間柄だった。

一週間前に届いた手紙は便箋二枚に渡るもので、私が転職したことへのお祝いのメッセージと、推しているアーティストのライブの話、年末に東京に帰省するので会えた

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短編「かなまう物語・下」

短編「かなまう物語・下」

 ぼうぼうだった草に元気がなくなった。風が強まり、細い路地にも舞い込んでは落ち場を転がしてゆく。秋が来たのだ。

 手紙は相変わらず届けられていた。箪笥の上へ積んでいた手紙はいっぱいになって雪崩を起こしたため、男は箱を一つ用意した。押し入れにしまってあった段ボールの一つだ。最初に屑籠に投げ入れた手紙もいつの間にか拾われてそちらへ入った。手紙の封筒の色や柄はいつも様々で、段ボールの中は男の家の内で一

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短編「かなまう物語・上」

短編「かなまう物語・上」



 郵便ポストの後ろに忘れられた細い路地がある。路地に沿うのは民家の側面とか裏側で玄関を構えている家はないものだから、日中もひっそりとしている。だが近所の住人にとっては生活道路に変わりなく、知る人ぞ知る路地でもある。その路地の片隅に、男の家はあった。

 男の家は路地のぷつりと切れるぎりぎりの位置にあって、平屋で、古くて、瓦が日に焼けて薄ボケて、玄関前の草はぼうぼうと生えたら生えたままであるし

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小3娘にインタビューしてみた

小3娘にインタビューしてみた

私の後ろで娘がチョロチョロしております。

せっかくなので、今日はそんな娘(小3)にインタビューしてみます。

■今日は何をしていましたか?

■何を食べましたか?

■金魚を飼っているの?

■金魚に名前はあるの?

■(話題を変えて)妹とケンカばっかりしているけど、なぜ?

■どういうところが合わないの?

■それって、気が合うってことじゃない?同じ色が好きなんだから

■今好きな歌は?

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【短歌】二十歳の頃 5首

【短歌】二十歳の頃 5首

文庫本の十代は病むこともなく東にも下らず春を解約せり

今日は来ない ふともれたわが言葉にきらめく五月の君の有限

悲しみの丘のてっぺんまで登った先輩二人ほどの毛死する秋

冬の夜の桃の実をもぎ取る知恵も力もあらざるままにわが二十歳

さよならは目と目でおしまい 駅まではいかず降れ降れ春の雪

○ 高校時代は文庫本中毒。もっぱら新潮、たまに角川。岩波は敷居が高かっ
 た。大学は東京へはいかず地方大

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【詩】路地

【詩】路地

あの角を曲がった路地は
名残り道

心澄ませば
灯る記憶のまぶしさに
歩が緩まる 名残り道


ずっとずっとが無いように
あの先からは一人道

夢から覚めて振り向けば
足跡だけはついてくる

あの頃があるから今がある
そういってずっと続いてくる

エッセイ/写「真」

エッセイ/写「真」

真実とはなにか、真理とはなにか、と問うとき、この言語で問われたその問いは、すでに幾分、間が抜けてみえるのだ。(もっとも、どの言語であれ、その問いそのものが間抜けていないか、私には何とも言えない。)

ことばという魔物は、いつでもじわじわと純粋思念を侵食するが、「写真」ということばも、そのひとつだろう。
それが白黒の粗い画像の時代から、誰の仕業か、こいつは「真を写す」などと、荷の重すぎる名を背負わさ

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氷河 【詩】

氷河 【詩】

風がとても強かった日の
次の次の日の朝は
特製の珈琲を飲むんよ
枯れ枝でつくった珈琲を飲むんよ

それはそれは
苦くて苦くて
甘くて苦くて
とてもひっそりとした味の
枯れ枝でつくった珈琲を飲むんよ

私はこの半島に
もう100年もすんでいる
誰にも会ったことがないよ
風がひゅーひゅー吹くばかり
でもね
この珈琲はとてもあたたかい
吹けば吹くほどあたたかい

氷河の流れる音を聞いたよ
もうすぐ来るの

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ありのまま、美しいと思う。

ありのまま、美しいと思う。

今日は雪ですね。どうか皆さまが温かい場所でnoteを楽しんでおられますように。

大きな湯船が好きなんです。
温泉や近所の銭湯に行っては、たっぷりのお湯を満喫しています。

湯船からぼや〜んとお風呂場を見ることが多いのですが、毎回びっくりするんです。

みんながあんまりきれいで・・・本当に。

年老いた、若い、子供を産んでる、鍛えている、ふっくらしすぎ。
そりゃもう色々な人がいます。

けど、それ

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いつか見た風景 66

いつか見た風景 66

「機密文書の中の私」

 君のミッションについて先週検討会を開いたんだ。見知らぬ男が2人、私に近づいて来てそう言った。惑星の友人がよろしくって言っていたよ。君の記憶の消失や混濁を心配してるからね。それに最近は報告の方も随分と滞っているようじゃないか。ところで我々がこうして君に会いに来た理由は当然察しがついているんだろうね。

                スコッチィ・タカオ・ヒマナンデス

 通

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47 雪の日

47 雪の日

 たまたま平日の休みが雪だったので、これ幸い何をしようか思案していて、ふと「アビーロードだ!」と思いついた。
 中学の頃はビートルズに夢中で、ディスコグラフィーを眺めては、小遣いが2,200円溜まるたびに1枚ずつアルバムを買っていた。ビートルズを全部聴くまでは生きていてもいいと思っていた。(何を生意気な…)
 実家は村はずれの農家で、元は濡れ縁だった所を改装した廊下の端に私の机が置かれていた。その

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駄文#16  ミキサー、いつか。

駄文#16  ミキサー、いつか。

こんにちは、抽斗の釘です。

ミキサーのことが頭から離れません。

ポタージュが作りたい。
バナナジュースが作りたい

しかしそれだけのことです。
どちらも毎日欠かさないわけではなく、たまにでいい。
そのたまに、のためにお金を使ってミキサーを買う必要があるのだろうか。
ネットの商品一覧を眺めてみては、そんなことを思います。

高級ミキサーは論外として、
3千円未満の物は、家族分を考えると小さくて頼

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なんてね【詩】

なんてね【詩】

あんまり深く考えないということにしたら
たくさんのことを考えられる余裕みたいな
時間が生まれた

なんて上手くは いかないもので
よく考えたほうがいいこと
結構たくさんあるんだよね

あんまり深く悩まないように決めてしまったら
悩むべきことがはっきりとして
先を見通す力がついた

なんて気楽に生きられたなら
いいんだけれど そうもいかない
場面が かなりあるんだよなあ

ほどほどに 考えながら

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