いち

好物:天然自然 生年月日:1983年11月20日 出身地:広島県 物書き 小説を書いて生きています。手紙は人生の息抜き。和菓子は御褒美。今日も空の下、月に満たされたくて手を伸ばす。 あなたに寄り添う物語を届けたい。

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好物:天然自然 生年月日:1983年11月20日 出身地:広島県 物書き 小説を書いて生きています。手紙は人生の息抜き。和菓子は御褒美。今日も空の下、月に満たされたくて手を伸ばす。 あなたに寄り添う物語を届けたい。

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  • 食の風景

    「食の風景」とは、食に纏わる美味しいお話から、料理のあれこれを、時に脱線しながら、思うままに腕を揮っては語っております。レシピは無いけれど、今日も美味しいご飯を一緒に食べませんか。

  • 長編小説「頭上の愛」

    『「愛」とは何でしょう。「愛する」とはどういうものでしょうか。私は善の研究で、愛を追究しています』  描けなくなった男が出会ったのは、自分と同じ本を愛読する一人の女性だった。難攻不落の哲学書「善の研究」と「漫画」と「伝統工芸」。古い町並みを残す地で描かれる、「知」と「愛」と「藍」の物語。読書のお供にはコーヒーと、それから甘いものをお忘れなく。よろしくお願いします。

  • 箸休め

    連載小説の息抜きに、気ままに文を書き下ろしています。文体も自由、テーマも自由。あなたのお好みの記事が見つかれば嬉しく思います。

  • 掌編、短編小説広場

    此処に集いし「物語」はジャンルの無い「掌編小説」と「短編小説」。広場の主は「いち」時々「黄色いくまと白いくま」。チケットは不要。全席自由席です。あなたに寄り添う物語をお届けしたい。いつでも気儘にお立ち寄り下さいませ。

  • 手紙小品

    「手紙」が好き。書くのが好き。貰うのも好き。手紙に纏わる些細な日常のお話を集めました。「小品」故、現実とフィクション入り混じっております。

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読み切りよりみち「ご飯を食べに行きましょう・中編」

※長編小説シリーズ「よりみち」の番外編です。長編でじっくり描く二人の関係性を凝縮したような読み切りです。 時系列で云いますと「よりみち・二」の後、秋のお話になります。「よりみちシリーズ」を読んでいなくてもお楽しみ頂ける内容となっております。 全編どなた様にもお読み頂けます。    読み切りよりみち「ご飯を食べに行きましょう」(中編)  扉を引くと、直ぐに細くこじんまりとした通路である。出入りの音に気が付いて、出迎えに人のやって来る。先を歩くりか子を見て、互いに親しみの籠っ

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    • 食の風景「秋の先陣切ったよ平茸ごはん」

      そこは秋の入り口。少し歩けば大きなかぶがありました。平茸の株です。おばあさんやねこやねずみの力を借りなくても一人で持ち帰れるサイズの平茸の株です。 スーパーにきのこが盛り盛り置かれるようになると、「秋だもんねえ!」とやたらと誰かに共感を求めたくなります。年中食べられる食材ですが、秋のきのこは格別です。どれもみんな旨味が増して、活き活きとしています。余計な事はしないで、只炭火で焼いて頬張りたい。そう思わせる姿形をしています。 そんな立派な平茸を、ごはんの鍋で炊き込みご飯にしま

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      • 「頭上の愛」第三十回

         数日の後に、笠峰は小町と再会した。今度は挨拶もそこそこに立ち去るんでなくって、結の家のダイニングキッチンで、お互いに自己紹介をするに至った。 「姉妹かと思ったけれど、姪っ子さんでしたか」 「でしたね」  他人事の様に肯定しておいて、小町は踊る様に右手を差し出した。 「初めまして」  笠峰は内心戸惑いながらも、年下の彼女の愛嬌だか気遣いを無為にさせては不可ないと思って右手に応じた。 「うわお、指が厚くて堅いや」 「ああ、肉刺が出来てるからね」 「うへえ」  小町が笠峰の手を面

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        • 「頭上の愛」第二十九回

           笠峰はうんと一つ頷いた。二人してコーヒーを啜って、結は脱線しかけた話を戻す。 「愛が登場して、いつの間にか難しい哲学と並走している。心密かに幼い愛の研究者たる自分の目の前へ、別の方面から「愛」の謎解き出来そうな知識が流れ込んできたんですから。これは本当に、自分には必要な出会いだったんだと、しみじみ思いました」 「確かに物凄い引力を感じます。とても面白い」 「はい。けれど難しいです。西田は徹底して強固な壁となり私の前へ立ちはだかっています。私も人並みに学業に研鑽を積んで大学

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          「文字で親しむ和菓子」

          「事典 和菓子の世界」 中山圭子著・岩波書店 を読んでいます。 本のタイトル通り、開けばそこに奥深い和菓子の世界が広がってゆきます。著者は和菓子の造詣が大変深い御方で、その上見識の広さは和菓子のみに留まらず、この国と諸外国の歴史を見詰めながら、あらゆる角度から和菓子の成り立ちや物語が語られます。歴史を掘れば掘る程に現代に通じる和菓子の原型が詳らかにされていき、私はすっかり本書に魅了されています。 近頃巷でもあんこが流行っていると聞きます。反対に和菓子離れが目立つ為、和菓子

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          掌編「白波さんのパパイヤ」

           白波さんの頭の上にパパイヤが見えるようになったのは、先週の金曜日のことだった。載せてるんじゃない。浮いてるんだ、頭のてっぺんで。パパイヤって熱帯地域にしかできないと思ってたけど、白波さんの頭の上にもできるんだ。  青くてまるまるとしたパパイヤ、熟れることはないんだろうかと僕は少し心配した。それから試しに課長の頭の上を見てみたけれど、何も浮いていなかった。それとももう何処かへ落っことしたのかもしれない。課長らしいやって思う。  ところで僕は、はだかの王様はピエロだったんだ

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          「頭上の愛」第二十八回

          「必要ありませんから。活動中に寛ぎなんて、折角脳が起きているのに勿体無いわ」 「それじゃいつ休むんです」 「眠る時。脳も体も、横になって眠る時に休ませれば十分です」  なにやら革命児級の活発な血を感じるが、それにしてもそんな血統の裏付けになりそうな気配が、根拠となりそうな生活模様が結の周囲に存在しない。だから謎めいている。笠峰は段々自分の好奇心が旺盛になるのを身の内に感じた。だが同時に理性で火消しにかかっている。ここで燥ぐのはあまりに大人げない行為だと先ず自分で軽蔑するし、

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          「頭上の愛」第二十七回

           結は、人と話す事が容易では無かった。正確には、向き合った人物と支障なく会話を成立させる迄に、平均より時間を要する人であった。多人数相手は勿論、一対一であっても同なし事であった。よく知らぬ相手とは口が利けない。真っ先に警戒が出て、だがそれは表へ表されるのではなく、内々で繰り広げられる彼女個人の戦いであって、表向きはひたすら微笑で繕っている。その一方で相手をよくよく観察している。どう云う人物で、何処へ関心があって、何に重きを置くのか、会話のテンポ、中身、ノリ、癖、目の動き、手の

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          「秋の彼岸に色とりどりのおはぎを」

           刷毛で伸ばしたような薄雲が広がる秋空の下、土手に並ぶ彼岸花は地元の小学生が植えたものです。小道に並んで、今年も秋の彼岸を迎えました。仕事と執筆の合間に作れるかな、どうかな・・・と思いつつ、そろそろあんこが食べたいと思います。台所で材料の在庫を確認。 もち米220gに米320g。もち米100%が好きですが在庫が無いので今日は混ぜます。はかりでグラム計算したため3合以上に。 ※一合は約150g・180CCです。 あんこ・・小豆210g、三温糖100g、黒糖3かけら、塩ひとつ

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          「御先祖様の御蔭さま」

          「もう止そうかと思いましたがお盆の話をします」 「ええー今更ー?」 「はじめます」                 *  おそらく、この夏はまだ多くのご家庭が直前まで悩まれたのだろうと推測致します。御多分に漏れずわが家と、そして数年帰省を見送った妹家族も、互いにぎりぎりまで、それはもう前日まで悩みに悩み抜いて、それでも互いに元気で、対策を万全にする事で帰省は可能だと判断して、今年、やっとお盆の帰省を迎えることができました。  これはそんなわが家の、育ち盛りの甥姪たちを全

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          「頭上の愛」第二十六回

           珍しく風が止んでいた。僅かの日差しを浴びようと散歩へ出て、歩き出して早々、冷やかしに斎藤を訪ねようと思い立ち張松屋の前までやって来た。喉も乾いた事であるから序にお茶でも御馳走になろうと勝手に思う。だが店の前まで来たものの、扉の向こうはカーテンが引かれ、今日は暖簾も出ていない。カーテンの隙間から中を覗いてみようかと手で影を作り前屈みの体勢を取っていると、不意に背中に視線を感じた。  扉の硝子に映るのは通りへ立つ人物の足元である。笠峰はひょいと後ろ振り返った。 「こんにちは」

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          「頭上の愛」第二十五回

           だから笠峰の財源が乏しくなったのは、寧ろ二人にとって好都合であった。無論彼はそうとは口に出さなかった。だが自らが暇であるのを隠さない笠峰は、結の側からみて社会で働く一人では無いと、少なくとも今はそう云う人種では無いと目に明らかであって、毎回同じ丈懐から消費している彼の台所事情には、容易に察しがついていたのである。 「家にいらっしゃいませんか」  こう口火を切ったのは結であった。 「これは提案です。実は引越して間もないものですから何もありませんけれど、コーヒーはあります。イ

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          「秋が降る」

          秋の入り口が見えたと天高き空を見上げたのもつかの間、暑さが息を吹き返し、これでもかこれでもかと言わんばかりに熱を押し付けて来る。だけど季節は戯れに進んでゆく。押し問答していても、知らず世間を導いてゆく。 もう一度顔を上げる。 実りの秋が、わたしの手のひらへすとんと落とされた。 秋の銘菓、早々に味わう機会を得るとは幸せ者だなあと思う。頂き物の栗きんとん、うましうまし。 山梨県産の巨峰とシャインマスカット。八月のお盆の後、ちょっぴりお手頃価格になる。今がチャンスとばかり買い物

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          食の風景「秋を迎える朝ごはん」

           茗荷の収穫を終え、名残の笹の葉が風に揺れてはさわさわと鳴り、椿と山茶花の木が黙然と立つわが家の庭に、今年もむかごができました。  本日の表紙はむかごとお漬物の小皿です。父曰く昨年ほど蔓を伸ばさなかったそうで、収穫量は期待できないとのこと。しかしながら秋の始まりを感じさせてくれる滋味深い食物です。小鍋でことこと火を入れて、お醤油で味付け。里芋とも違い、独特の香ばしさがあります。小粒でも味はしっかり、美味しい恵みです。  さる休日の朝ごはん。日頃ついつい気忙しく動き回ってし

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          「頭上の愛」第二十四回

          「美味しいと思う、それだけで十分なのである」  笠峰は目玉だけ動かしかけて、止めにした。代わりに愚痴混じりの感想が零れる。 「意地悪な人だなあ」  それでも甘い物は良いものだなあと、妙に愉快な心持ちがするのだった。  カフェを出た二人はまた連れ立って歩いていた。どちらも考えあっての事ではなかった。片方が誘ったのでもなかった。強いて説明加えるならば一方は帰り道で在ると云えた。もう一方は風に押されて足を運ばせた結果であるらしかった。時間を刻んで暮らす生活から暫し離れたままの笠峰

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          「頭上の愛」第二十三回

           立ち去りたい。今すぐここから脱兎の如く無様な様子で逃げ出したいとまた思い詰める。が、おかわりに同意してしまった。うっかり飲むと返事してしまった。だから彼女は席を立ったのだ。  まさか、気を遣ってくれたのだろうか。慰めの積りだろうか。それとももっと単純に、喉を潤すための親切かしら。親切だったら有難い。そう考えると漸く真面が帰って来た。考える笠峰は直ぐに腕を組む。そうして思考働かせる。  自分の分も持って行ったのだから、少なくとも彼女の方は帰りたいとは思っていないらしい。空席

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