【創作大賞2024 恋愛小説部門応募作】 「空の恋人」第一話 ぐるん
【あらすじ】 橋本朝香は自宅のドアを開けるのと同時に、大きくため息をついた。返却期限を迎えた本を図書館へ返しに行くという外出の口実があってよかった。自室にいても退屈だし、リビングでは母親が眉間にしわを寄せて、テーブルでうたた寝しているだけなのだ。「どこへ行くの」だの「何をしにいくの」だの尋問されるのが嫌で、朝香にはいつしか、なるべく物音を立てないようにシューズを履き、蝶番を軋ませずにするりと体を外に押し出すという無駄なスキルが上達してしまった。
今日も朝から晴れていて雲ひ