笹塚 心琴

ここと|真冬の北海道に生まれてみて、あれこれやらかしてみて、今は都心のオフィスでほのぼ…

笹塚 心琴

ここと|真冬の北海道に生まれてみて、あれこれやらかしてみて、今は都心のオフィスでほのぼのとお菓子を食べている労働者|心はずっと悪童|主に短歌と小説をつくっています

マガジン

  • 【創作大賞2024 恋愛小説部門応募作】 空の恋人

    コミュニティカフェ「しえる」は、あらゆる傷を携えて生きる人々の居場所として住宅街にひっそり存在している。 不登校から引きこもりになった少女、現実からときどき意識がずれてしまう青年、伴侶を亡くして生きがいを見失った女性……。 「しえる」では、誰もが安心して美味しい食事やお茶を楽しむことができる。なぜなら、どんな人も決して評価をされることがないからだ。 無気力な日々を送っていた朝香もまた、「しえる」との出会いによって一歩踏み出したいと願うようになる。 ――けれどすべては、「凪」が起きた後の出来事。だから「彼」は今日も夕焼けを見送る。その胸に、途方もない喪失感を抱きながら。

  • 【短歌】操車場にオレンジ色の孤独たち発車できるとまだ信じてる

    心のままに詠んでみました。ベクトルを定めないスタイルで綴ります。

  • 笹塚的日常(日記・エッセイ )

    スパイシーだったりまったりだったり、安定感のない日常を綴ります。

  • 【小説】陽羽の夢見るコトモノは

    ある日突然自宅が神殿になってしまったら。いつも通りアルバイトに行くしかないじゃないの。神さまとの、穏やかな日常生活のお話、なのかな?

  • 【小説】見習い魔女は魔王様と

    おばあちゃんの遺した呪文で召喚した魔王様は、記憶喪失でした。魔界への帰りかたがわからないらしいので、一緒に暮らすことになりました。魔王様は、意外に家事が得意です。

記事一覧

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【創作大賞2024 恋愛小説部門応募作】 「空の恋人」第一話 ぐるん

【あらすじ】 橋本朝香は自宅のドアを開けるのと同時に、大きくため息をついた。返却期限を迎えた本を図書館へ返しに行くという外出の口実があってよかった。自室にいても…

笹塚 心琴
2週間前
71

【創作大賞2024 恋愛小説部門応募作】 「空の恋人」第十四話 待ってるよ

←第十三話◇ あらすじ・第一話 ◇最終話→  蒼斗の口調はどこまでも冷徹で、告白というよりどこか遠い国の出来事を報告するようだった。運転席の明が、スン、と鼻を鳴…

笹塚 心琴
21時間前
23

【創作大賞2024 恋愛小説部門応募作】 「空の恋人」第十三話 蜘蛛の巣

←第十二話◇ あらすじ・第一話 ◇第十四話→  楓子の不在に、小夜は激しく動揺した。しかし、蒼斗のただならない様子に、それはすぐに押し潰された。  蒼斗は、沈ん…

33

【創作大賞2024 恋愛小説部門応募作】 「空の恋人」第十二話 子どもたち

←第十一話◇ あらすじ・第一話 ◇第十三話→  「二人」は「家庭」や「日常」といったごくありふれた生活の記憶を、一切持たなかった。確かに彼らは望まれて生を受けた…

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【創作大賞2024 恋愛小説部門応募作】 「空の恋人」第十一話 「またね」

←第十話◇ あらすじ・第一話 ◇第十二話→  SNSをはじめとして、インターネット上で世界中と繋がることが可能だった時代、なぜ多くの人が「孤独」に苛まれたのか。 …

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【創作大賞2024 恋愛小説部門応募作】 「空の恋人」第十話 クラクション

←第九話◇ あらすじ・第一話 ◇十一話→  その少女が姿を現すと、部屋の中は水を打ったように静まりかえった。待ちわびていた信者たちから一斉に畏怖と崇拝の視線を浴…

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【創作大賞2024 恋愛小説部門応募作】 「空の恋人」第九話 「ありがとう」

←第八話◇ あらすじ・第一話 ◇第十話→  山の天候はとても変化しやすい。天気予報になかった雨が降ることもしばしばだ。日没を迎えてラジオの放送が終わると、明は窓…

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【創作大賞2024 恋愛小説部門応募作】 「空の恋人」第八話 じゆう

←第七話◇ あらすじ・第一話 ◇第九話→  夕実発案の新作デザートは、夏みかんのジュレに上白糖ではなくはちみつで甘みを加えることで、ようやく納得のいく味に仕上が…

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【創作大賞2024 恋愛小説部門応募作】 「空の恋人」第七話 奇跡の薬

←第六話◇ あらすじ・第一話 ◇第八話→  休日の午後、駅前で待ち合わせたきみと手を繋いで舗道を歩く。初夏の爽やかな風が、俺ときみを等しく撫でる。  身長差が大…

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【創作大賞2024 恋愛小説部門応募作】 「空の恋人」第六話 七夕

←第五話◇ あらすじ・第一話 ◇第七話→  「凪」が起きる寸前の世界について、積極的に語ろうとする者は少ない。生命倫理のタガは外れ、法による統治は腐敗し、AIなど…

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【創作大賞2024 恋愛小説部門応募作】 「空の恋人」第五話 あの日の砂浜

←第四話◇ あらすじ・第一話 ◇第六話→  駅前ロータリーに大きな笹が飾られた。以前は市の事業の一環で設置されていたそうだが、「凪」以後は有志のボランティアたち…

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【創作大賞2024 恋愛小説部門応募作】 「空の恋人」第四話 傍観者と被害者

←第三話◇ あらすじ・第一話 ◇第五話→  朝香は俗に言うスクールカーストで「三軍生徒」だった。中学校に入学して間もなく強固な階層が形成され、一軍という強者の地…

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【創作大賞2024 恋愛小説部門応募作】 「空の恋人」第三話 ぼんやり

←第二話◇ あらすじ・第一話 ◇第四話→  コミュニティカフェ「しえる」の営業終了後、蒼斗は朝香を二階部分の地域活動支援センター「オーブ」へ案内した。朝香は、清…

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【創作大賞2024 恋愛小説部門応募作】 「空の恋人」第二話 再会

←あらすじ・第一話 ◇ 第三話→  「碑」が生命活動を維持していること、しかも外部刺激に対し生理現象としてだけではなく一定程度の人間的な反応——例えば泣く、怒る…

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【日記】いろいろやめてみた最近のこと

さいきんのこと、もろもろ。 ◇TwitterとInstagramをやめて、ニュース系アプリをスマホから削除したら、QOLが爆上がりした 知り合いに「ちょw 情弱一直線じゃん」と笑わ…

笹塚 心琴
2週間前
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【お知らせ】
①TwitterとInstagramのアカウントを削除しました。今後の笹塚心琴としての活動はnoteに一本化します。

②創作大賞向けの小説ですが、来週月曜日から掲載開始予定です。よかったら読んでやってください。

それでは、どうぞよい午後を🕊️✨

笹塚 心琴
2週間前
57
固定された記事

【創作大賞2024 恋愛小説部門応募作】 「空の恋人」第一話 ぐるん

【あらすじ】 橋本朝香は自宅のドアを開けるのと同時に、大きくため息をついた。返却期限を迎えた本を図書館へ返しに行くという外出の口実があってよかった。自室にいても退屈だし、リビングでは母親が眉間にしわを寄せて、テーブルでうたた寝したいるだけなのだ。「どこへ行くの」だの「何をしにいくの」だの尋問されるのが嫌で、朝香にはいつしか、なるべく物音を立てないようにシューズを履き、蝶番を軋ませずにするりと体を外に押し出すという無駄なスキルが上達してしまった。  今日も朝から晴れていて雲ひ

【創作大賞2024 恋愛小説部門応募作】 「空の恋人」第十四話 待ってるよ

←第十三話◇ あらすじ・第一話 ◇最終話→  蒼斗の口調はどこまでも冷徹で、告白というよりどこか遠い国の出来事を報告するようだった。運転席の明が、スン、と鼻を鳴らした。 「まぁ、そういうことなんだ。みんな、聞いてくれてありがとうな」  没していく太陽を引き留めるように、ラッキー号は西へと走り続ける。目的地はもちろん、蒼斗たちが心を育んだ土地だ。  すべてを知ったメンバーの受け止めはまちまちだった。朝香は語られた内容を、にわかには信じることができなかった。晴也は表情を変

【創作大賞2024 恋愛小説部門応募作】 「空の恋人」第十三話 蜘蛛の巣

←第十二話◇ あらすじ・第一話 ◇第十四話→  楓子の不在に、小夜は激しく動揺した。しかし、蒼斗のただならない様子に、それはすぐに押し潰された。  蒼斗は、沈んでいく太陽を射抜かんばかりに鋭く睨んだ。 「……西へ。すべてのことは、道中で話す」 ◆  M-07に「蒼斗」という名を与えた。季節を問わず一年中見ることができる北斗七星は、全国各地で様々な方言が存在して親しまれている。この青空の下、どこへ行っても輝けるように、という願いを込めた。  「なぎさ」は、奥多摩の山

【創作大賞2024 恋愛小説部門応募作】 「空の恋人」第十二話 子どもたち

←第十一話◇ あらすじ・第一話 ◇第十三話→  「二人」は「家庭」や「日常」といったごくありふれた生活の記憶を、一切持たなかった。確かに彼らは望まれて生を受けたが、それは「利用価値の高い成功体」だからに過ぎなかった。その証拠に、彼らには名前が与えられず、識別のためのコードが割り振られただけだった。  M-07とF-05は、ほぼ同時に生命活動を開始した。研究者たちの目論見通り、M-07とF-05は身体的にはあらゆる部位で正常値を決して逸脱することなく、順調に成長した。第二次

【創作大賞2024 恋愛小説部門応募作】 「空の恋人」第十一話 「またね」

←第十話◇ あらすじ・第一話 ◇第十二話→  SNSをはじめとして、インターネット上で世界中と繋がることが可能だった時代、なぜ多くの人が「孤独」に苛まれたのか。  晴也は思うのだ。孤独自体に毒性があるわけではない。恐らくその時代の人々は、孤独と付き合い、味わい、共に在る方法を忘れてしまったのだと。  しかし、それは無理もないことだ。「友達は多い方が良い」とか「ぼっちは可哀想」といった抑圧を、それこそ物心つく前から散々叩き込まれてきたのだから。  もっとも、晴也に言わせ

【創作大賞2024 恋愛小説部門応募作】 「空の恋人」第十話 クラクション

←第九話◇ あらすじ・第一話 ◇十一話→  その少女が姿を現すと、部屋の中は水を打ったように静まりかえった。待ちわびていた信者たちから一斉に畏怖と崇拝の視線を浴びせられても、少女は全く動じることなく最奥のソファにゆったりと体を横たえる。  少女はその白い肌を人目へ晒すことに一切の躊躇いがない。腰までまっすぐ伸びた黒髪は艶やかな絹糸のようで、小さく膨らんだ乳房は白い陶器のようだ。その存在は、見る者のほとんどを魅了した。  少女は白魚のような人差し指を、ゆったりと天井に向け

【創作大賞2024 恋愛小説部門応募作】 「空の恋人」第九話 「ありがとう」

←第八話◇ あらすじ・第一話 ◇第十話→  山の天候はとても変化しやすい。天気予報になかった雨が降ることもしばしばだ。日没を迎えてラジオの放送が終わると、明は窓辺のランタンに火を灯した。  やがて蛾たちがふらふらと光に集まってくる。明はあごひげに触りながら口を大きく開けてあくびをした。その呑気な声に呼応するように、黒猫が明の足元へプルプルと体を震わせながら近づいてきた。 「そういや、今日は七夕か」  明は大きな手のひらで黒猫のあごの下を撫でてやる。その厚みと体温が心地

【創作大賞2024 恋愛小説部門応募作】 「空の恋人」第八話 じゆう

←第七話◇ あらすじ・第一話 ◇第九話→  夕実発案の新作デザートは、夏みかんのジュレに上白糖ではなくはちみつで甘みを加えることで、ようやく納得のいく味に仕上がった。 「ジュレがさっぱりしてて、下のヨーグルトムースとのバランスも最高。夕実ちゃん、今年の夏はこれでいこう!」  小夜がウインクする。夕実は、完成品の第一号をトレーに載せて階段を軽やかに上がった。  「オーブ」のスペースでは、提出期限の迫った書類作成のため蒼斗が机に向かっていた。珍しく険しい表情で万年筆を走ら

【創作大賞2024 恋愛小説部門応募作】 「空の恋人」第七話 奇跡の薬

←第六話◇ あらすじ・第一話 ◇第八話→  休日の午後、駅前で待ち合わせたきみと手を繋いで舗道を歩く。初夏の爽やかな風が、俺ときみを等しく撫でる。  身長差が大きいので俺が歩幅を合わせようとすると、きみはわざとそれをずらしてみせたりする。つんのめりそうになる俺が文句を言うより先に、きみは鈴のような澄んだ声で楽しそうに笑う。その声は、俺から不機嫌を消し去ってしまう、まるで魔法だった。  普段なかなか好きなファッションを謳歌できないきみと、ショッピングモールへ行く。ファスト

【創作大賞2024 恋愛小説部門応募作】 「空の恋人」第六話 七夕

←第五話◇ あらすじ・第一話 ◇第七話→  「凪」が起きる寸前の世界について、積極的に語ろうとする者は少ない。生命倫理のタガは外れ、法による統治は腐敗し、AIなどの技術の発展は多くの人に「思考すること」や「想像すること・創造すること」といった活動を放棄させた。  己の意志で思考したり、相手を慮ったりすることなど時代遅れとされたし、そんなことをすれば嘲笑の的となった。しかも、万が一間違いなどがあれば鬼の首を取ったように指摘されたし、その指摘にはしばしば誹謗中傷が付きまとった

【創作大賞2024 恋愛小説部門応募作】 「空の恋人」第五話 あの日の砂浜

←第四話◇ あらすじ・第一話 ◇第六話→  駅前ロータリーに大きな笹が飾られた。以前は市の事業の一環で設置されていたそうだが、「凪」以後は有志のボランティアたちが遠縁などを頼って、立派な笹を入手しているらしかった。  ボランティアが準備したのは笹だけではない。折り紙を縦長に四等分した色とりどりの短冊が、「ご自由にどうぞ」のメッセージを添えられてサインペンとともに置かれていた。 「おっ」  買い出しの帰り、それに目を留めた朝香が、左手に提げたトートバッグへ短冊を鷲掴みに

【創作大賞2024 恋愛小説部門応募作】 「空の恋人」第四話 傍観者と被害者

←第三話◇ あらすじ・第一話 ◇第五話→  朝香は俗に言うスクールカーストで「三軍生徒」だった。中学校に入学して間もなく強固な階層が形成され、一軍という強者の地位を獲得した生徒たちは、あらゆる形態の暴力を好き放題に振るった。無視や揶揄に留まらず、陋劣な行為は加速度を増してエスカレートしていった。  いかに標的にした者の人格や尊厳を貶めるかについて、一軍生徒たちは腐心した。彼ら彼女らに言わせれば、「標的になるほうが悪い」のであって、「自分たちには人を傷つけても構わない権利が

【創作大賞2024 恋愛小説部門応募作】 「空の恋人」第三話 ぼんやり

←第二話◇ あらすじ・第一話 ◇第四話→  コミュニティカフェ「しえる」の営業終了後、蒼斗は朝香を二階部分の地域活動支援センター「オーブ」へ案内した。朝香は、清掃など閉店後業務を手伝うと申し出たが、蒼斗いわく「まずはこの場所について知ってほしい」とのことだった。  二階へ上がる前に蒼斗が郵便受けを覗くと、緑色を基調としたカラフルなチラシが入っていた。 「あ、それって」  朝香が言いかけたが、チラシの左上にプリントされたロゴマークを視認したとたん、蒼斗は右手でそれをぐし

【創作大賞2024 恋愛小説部門応募作】 「空の恋人」第二話 再会

←あらすじ・第一話 ◇ 第三話→  「碑」が生命活動を維持していること、しかも外部刺激に対し生理現象としてだけではなく一定程度の人間的な反応——例えば泣く、怒るなどの感情表現を示すことは、一部の研究者たちによって既に明らかになっている。  しかし、このことは全くといっていいほど一般市民には周知されていない。以前のようにSNSなどで情報が氾濫する時代ではないし、そもそもインターネットが使えなくなって以降、人々の多くは他者に対する過剰な興味関心を失った。  社会の空気を支配

【日記】いろいろやめてみた最近のこと

さいきんのこと、もろもろ。 ◇TwitterとInstagramをやめて、ニュース系アプリをスマホから削除したら、QOLが爆上がりした 知り合いに「ちょw 情弱一直線じゃん」と笑われたのですが、TwitterやInstagramに溢れかえる情報の取捨選択に苦しむことこそ、私にとっては「情弱」状態です。 むしろ、本当に知るべきことや積極的に知りたいことを見定めることが容易になったし、それゆえ触れる情報の質が上がったし、なにより創作や夫とのおしゃべりの時間がぐっと増えてQO

【お知らせ】 ①TwitterとInstagramのアカウントを削除しました。今後の笹塚心琴としての活動はnoteに一本化します。 ②創作大賞向けの小説ですが、来週月曜日から掲載開始予定です。よかったら読んでやってください。 それでは、どうぞよい午後を🕊️✨