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#心

夏夜に眠る|詩

夏夜に眠る|詩

「夏夜に眠る」

切ない夜がひとつ減っただけ
耳もとから潜りこんだ
噂好きな風のお喋りに俯く

咲かない花に寄り添った強がりが
転がり落ちて心の臓を叩いた
刹那に隠した君への想い
そびれになった夏夜の独り言

切ない夜がひとつ減っただけ
今夜、
逢えない夏がひとつ過ぎていく

旅のおわり|詩

旅のおわり|詩

「旅のおわり」

夜にとける既の強がりが
ふわり音に寝転んで流れはじめた

見失いそうになった月あかり
雲の隙間から溢れ落ちる
悪戯好きな星くずの吐息に擽って

降り始めた雨に満たされていた
古より聴こゆ懐かしい痛み
幾度となく繰り返してきたはずの

旅のおわり、
ため息を閉じこめた時の欠片

夏まつり|詩

夏まつり|詩

「夏まつり」

ゆらゆらと游ぐ金魚すくいの空

まるで笑顔みたいなまん丸の瞳に
僕は釘付けになってしまった

お姫様をさがしているんだ
鼻歌まじりなあの頃のお喋り
おおきな空にちいさな波がたつ

とおくに聴こえる祭囃子が
子守唄のように気泡に溶けた

僕なら此処にいるよ
精一杯に伸ばした指さき
真夏の夜に向かってまっすぐな……

祈り|詩

祈り|詩

「祈り」

透け見ゆような心もとなげ
必ずだとか永遠ほどに
哀しく聴こゆもの他にはなくて

下手くそで佳い
否、それがいいのだと

小指の代わりに絡めんや
ひとつとして要らぬ糸はなし
きみへと繋がる祈り
揺れのぼる静穏なる想いたち

潮風と星のすな|詩

潮風と星のすな|詩

「潮風と星のすな」

分かたれた南の海と夜の空
瓶詰めされた潮風と星の砂が
あの娘の腰に揺れている

誰が悪いとかじゃない
あのね、
季節が違っていたんだよ

せめぎあう
みなもの小さな子供たち
浜辺には恋を知った歌うたい
ほら、誰かのために
今日も明日を弾き語っているよ

きみが里|詩

きみが里|詩

「きみが里」

空に去りゆく影法師
海へと飛びたつ鼻の唄

ほ、ほっ……

ほたるの里すぎ見知らぬ土地ぞや
そちらの水は甘いであろうか

寂しくなったら還っておいでと
いつぞの優しい夢をみる

ほ、ほっ……

ほら視てごらんよ
あの日の景色
そちらの暮らしは如何なるものか
風は、想いを運んでおるか

夏のうた|詩

夏のうた|詩

「夏のうた」

蝉の声を貼りつけた空が
寂しいさみしいと鳴いていた

誰よりも激しい太陽は
薄化粧の山で君をさがしている

吐きそうなほどの我が儘と
狂いそうなほどの愛おしさが
泳ぎを忘れた人魚みたいに
白の砂浜にうちあげられていた

聴こえない、
いちばん逢いたいひとに
この夏を届けたいと海鳥はうたう

祈り星|詩

祈り星|詩

「祈り星」

噛られた空に浮かぶ月
夜を紡ぐ白い風の足どり朧に

追いかけ見つめるその先に
名のない星座を貼りつけながら

知っている
そこに名前をつけたなら
風は空には居られないこと

濡れた朝の霧のように
堕ちて地球へと還ること

24万マイルの僕|詩

24万マイルの僕|詩

「24万マイルの僕」

音のない世界で僕はひとり
遥かなる君と出逢う
抱えた僕の言葉の意味
水平線まで聴こえる瞳の虚ろ

星の欠片を動かして
僕は君へと手紙を送った

君には、
此方のほうが似合っているから
旅に出ないか裸足のままで

いま、
音のない世界で僕は、ひとり

微睡みに繋いで|詩

微睡みに繋いで|詩

「微睡みに繋いで」

何もない空に朝がやってくる

瞳のまえに広がる
きっと淡いであろう赤子のみどり
産声をあげたひかりの匂い
それは素足の心に
くすぐったいを教えてくれる

背から絡みつく
まるでカフェモカのような温もりと
何もないはずの空に手を伸ばす

微睡み……

昨日より、きょう
今日よりも明日なんだって

違うよ
深い眠りにつく前に
僕たちは誰よりも何よりも、ふたり

そして、君へと。|詩

そして、君へと。|詩

「そして、君へと。」

ひとつ、ふたつ……

見あげる夜空に終わりゆく星と
透明な瞳をもつ少年の背中

ひとつ、また ひとつ……

雨粒の代わりに拾いあげた
小さな正義をポケットにしまって

膨らんだ拳から溢れる涙は
きみの宝物へと流れていくから
ほら、大丈夫
真昼の空には消えない星がある

Mau loa|詩

Mau loa|詩

「Mau loa」

足もと散らばる
不揃いの正義かかえた想いたち
迷子の魂ひとさし指
螺旋をえがいた魔法の呪文

小説などは読まないと
すべては僕から生まれる物語
掬いあげる不器用な真心
それでいい、
根無しの雲が瞳を弧にする

空、それは
静かなる永遠を囁きつづけて

風にとける|詩

風にとける|詩

「風にとける」

透明の言の葉をふた指つまんで
青い風に透かし瞳をとじる
聴こえてくるのは何時かの鈴の音
真暗な峠に灯ったあかり

沈んだ夕陽の代わりの文字に
旅雨たゆたう君の心音
いつかのボクだと細めた声を
背中で拾うて眉間で哭いた

もうすぐ夏がやってくる
庭先わすれた風鈴が
今年も君の名を呼び続けている

瞳、乗せて……|詩

瞳、乗せて……|詩

「瞳、乗せて……」

そこから何が見えますか

夢とか希望とか
愛とか恋とか裏切りだとか
片道乗車券だけを握りしめて
踏切のまえ何度めの電車

ここから海が見えました

カンカン カンカン
遮断機は空へと突き刺さり
原動機付自転車が
眼のまえを横切って行きました