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エッセイ

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自身の記事の中から、エッセイをまとめています。
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#世界

デトックス

デトックス

音楽を聴いてみても、本を読んでみても、テレビを観てみても、なんにもしっくりこない時はないだろうか。私はたまにそんな時がやってくる。
時間を持て余しているから、何かしようと思うのだけれど、手を動かすこともなくて、じゃあ音楽を聴いてリラックス?などと思ってみても全然しっくりこない。
結果、部屋の真ん中でぽつんと、時間の過ぎる音を聞く。そんな時の私はまるで、この世界の何にもフィットしていない感覚になる。

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春眠としくじり

春眠としくじり

しまった。機会を逃してしまった。
私は飛び起きた。

昨晩は珍しく、
夜中一度も目覚めずに
今朝まで眠り続けることができた。

またずいぶん寝汗をかいていたけれど、
眠れたことの方が嬉しかった。

起きて朝食を済ませてからも、
まだ眠い。
結局うたた寝をし、そのまま正午まで。

しまった。
目を開けたか開けていないか、
意識があったかそうでないか、
という夢と現実の隙間で気がついた。

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憧れの君

憧れの君

とある画家がある朝、起き出したかと思ったら一気に白いキャンバスに色を置いていく。そんな風に、目覚めたら世界が一気に春になっていた。

冬が嫌いというわけではないけれど、春になると、ようやく会いたい人に会えた様な気持ちになる。わくわくするとか、ときめくとか、そういった気持ちに自動的になる。

春ってどこか特別で、主役級の華やかさがあるけれど、でも「主役」ではない。そんな感じがするのは、とてつもないイ

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遅い衣替え

遅い衣替え

私は幼少期から病気を患い、人生の序盤で「普通」じゃなくなった。でもそうしたら「特別扱い」されるようになり、もちろん嫌なこともあったけれど、みんなと少し違う場所にいる感覚は、少しだけ幼い私を得意にさせた。けれどそんなに世の中は甘くない。すぐに「特殊扱い」もされるようになり、悪気の無い言葉も温度の無い言葉も冷たい言葉も、私に投げかけられては心に棘を残していった。どうやらその棘は溶けるのに相当な時間を要

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人間について

人間について

テレビ番組で、2000年前に沈没した船に眠っていたとある円盤から、驚くべき発見があったと紹介されていた。それは数十個の緻密な歯車でできており、月の位置やオリンピックの開催年などが分かる機械。「言わば2000年前のコンピュータ」なのだそう。おお、すごい。これは驚いた。専門家も大変驚き歓喜したとのこと。「こんな文明が、2000年も前にあったなんて!」とテレビが言う。たしかに。と思う反面、どことなく、で

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時間について

時間について

良い出来事は忘れやすいのに
嫌な出来事はいつまでも覚えている。

薄々答えは分かりつつも
なぜなのか、と呟いた数日後
テレビで答え合わせがあった。

危険回避のため
人間の脳はそうできているらしい。
嫌な出来事や怖い出来事を鮮明に
脳に記録するのである。

ここで、なるほど、と手を打った。
事故や自転車で転んだ瞬間など
その一瞬、スローモーションになる。

それは脳がその瞬間の情報を
事細

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