シゲチャビン

東京で病み、この春札幌に帰還した広告プランナー。斜陽の世界で文筆家、映像作家を志す。目…

シゲチャビン

東京で病み、この春札幌に帰還した広告プランナー。斜陽の世界で文筆家、映像作家を志す。目の前に選択肢があれば、だいたい面白い方を選んできた結果、ネタは枚挙に暇なし。めぐりあう素敵な人たち、事件、そして尊敬する人や映画や本の話、国際社会や地域社会、日々の雑感を徒然なるままに。

マガジン

  • ルポルタージュ「老兵の去りかた」

    54歳の私。最近、ひょんなことから会社を去るまでの期限を決めた。遅くとも2029年末までに辞めることにした。会社から三行半をつきつけられる前に、自分から辞めるのだ。そう決めたとなると、そのまま社会からフェードアウトするより、サラリーマンではできなかった「世のため人のためにやりたかったこと」について考えるようになった。ぼんやり思っていたことが少しずつ具体的なアイデアと行動になっていく、その予定なのだが。

  • 食と食文化のこと。気づいたこと。考えたこと。

    どうしてこんなに美味しいのか。素材がいい、調理の仕方がいい、というのもあるけれど、その味、実は食べる前に半分以上決まっているんじゃないかな。食べる空間、器だけじゃない。文化的な背景、食べる自分の食歴史も大きい。色々あって美味しいと思うから、それを好きな食べ物ごとに考えてみようかな、と。

  • この映画が好きな理由

    長く生きていると、鑑賞した映画作品も数千本レベルになってくると思うのだけど、しっかり覚えている映画って、せいぜい200本くらいじゃないだろうか。最新作や話題作ももちろん観るけれど、結局「こんな気持ちの時には、この映画を観よう」と思って昔のタイトルを引っ張り出す。そんな映画の観方の方が多くなってきませんかね。

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 いまだに家族には打ち明けていない秘密がある。今となっては隠す必要もないのだが、当時は隠す必要があって、打ち明ける機会を失ったまま今に至っている。実は、今年の1月中旬から2月いっぱいまで、会社を休んでいた。適応障害という診断書は、自己申告でどうにでもなるものだな、と感心しつつ、1ヶ月以上も仕事から遠ざかるのは、社会人になってから経験がないので、少しだけワクワクした。

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 会社が定めている「定年後の雇用継続の条件」が変更となった。今までは、役職定年を迎えた60歳以上の社員の収入は50%以下に激減するらしく、それが今回の改訂で80%程度で済むような制度に変更となった。あと5年ちょっとで、そのタイミングを迎える私にとって、このニュースは朗報に違いない。人手不足の日本は人材流出を防ぐ意味でも、このようなベテラン会社員に優しい制度変更を試みる企業が今後増えていくことだろう

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左翼的な活動と右翼的な活動をバランス良く取り入れていた私だが、東京転勤が決まり札幌を離れるタイミングで、当然、どちらの活動も小休止させた。今年の春に札幌に戻ったため、先日久々に左翼の会に参加した。まあ、もちろん、「左翼の会」は、自嘲気味に揶揄して使っている言葉。政治団体というわけではない。平たく言うと、世界平和を目指し、身の回りのゴミの問題や食糧問題を学び、自分たちの暮らしの足下から見直していこう

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女が又に力を入れると書いて努と読む。努力とは目標実現のために励むことを意味するが、そのニュアンスとしては辛抱強さや禁欲的な態度も含まれる。

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札幌ドームとエスコンフィールドを直線で結ぶと、ちょうどその中間地点に我が家がある。札幌市と北広島市の境界の近く、ギリギリ札幌市民の境界人である私は、当然のごとく日ハムファン。試合のある日のパテレ(パリーグTV)鑑賞はほぼ欠かさない。もちろんエスコンにも足を運ぶ。妻は筋金入りで、ファームの試合経過や結果も把握し、日々の試合のスターティングオーダーを勝手に決める。意にそぐわないオーダーの日は試合開始前

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今年の2月、東京で病み、休職させてもらったおかげで時間を持て余していた私は、何度も池袋の映画館に足を運んだ。この期間に観た作品は、いちいち自分の心に刺さったのだが、この作品は逆に刺さった棘を抜いてくれて空っぽにしてくれたように感じ、ありがたかった。40年前のライブ映像を4K仕様にレストアした作品だが、IMAXの迫力画面と迫力音響、そしてこのバンドのメンバー、特にフロントマンのデビッド・バーンと、ベ

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今の世の中は、公開された映画の多くがデジタルアーカイブされている上に、人気タイトルともなれば1,000以上にも及ぶ大量のレビューを読むこともできる。そのレビューはもちろん玉石混交で、参考になるもの参考にならないものの判断もまたその「参考になる」の数で可能となる。映画に限らず、すべてのデジタルコンテンツはこの評価システムで評価されてしまう。つまり「多数決」で良し悪しが決まってしまう、かのように思えて

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まっちゃんのみかた

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自分の子が取り返しのつかない大きな罪を犯したとしよう。例えば殺人ともなれば、マスコミが自分の家にも押し寄せる。その時、自分ならどういう態度でマスコミと対峙するだろうか。想像する。その自分の子が未成年であった場合は別として、自分がとる態度は一つしかない。取材拒否。

ローカルとは言えマスコミと何十年も仕事をしてきて、媒体社の多くが、肝心なところで大人の事情によって情報を捻じ曲げるその現場を見てきた。

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