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夏女ソニア

気がついたら夏は「ナツコの夏」でも「金鳥の夏」でもなくなっていた。気がつくのが遅すぎるのかもしれないが、とにかく、私が子どもの頃、夏はお祭りだった。「夏ソング」と「クリスマスソング」は、音楽のジャンルの垣根を超えて、多くのアーティストがこぞってリリースした音楽業界の2大歳時記マーケットだった。夏の曲は決してTUBEやサザンの専売特許ではない。TUBEが登場するずっと前から、夏の曲はたくさんあったのだ。その夏ソングを牽引していたのが、資生堂をはじめ化粧品のCMだった。

ツイストの「燃えろいい女」、山下久美子の「赤道小町」、中原めいこの「君たちキウイ・パパイヤ・マンゴーだね」、石川優子とチャゲの「ふたりの愛ランド」、挙げればキリがない。そして、この記事の表題である大橋純子ともんたの「夏女ソニア」。もう曲が素晴らしいというのではなく、夏ソングはどれだけ夏の浮かれた能天気な気分にさせてくれるかが重要で、歌詞などあってないようなもの。夏女のソニアが夏以外どんな生活をしているかなんて考えてはいけないのだ。

以上ピックアップした曲は80年前後のものばかりで、バカ騒ぎして夏を連呼していたのは私が小中学生の頃だったように思う。北海道苫小牧市の夏は極めて短く、おそらく1週間も続かない。その短い夏をセミの如く全力で駆け抜けていた。きっと、だから夏の曲も思い出深いのだろう。

あの頃に比べると、夏は長くなり、そして暑くなった。あの頃より若者はもっともっと盛り上がって然るべきなのに、夏は容赦なく、過酷過ぎて、青春を謳歌する機会すら奪ってしまった。もちろん、気候変化のことだけではない。「はめを外せない」世の中になった。

高校2年の夏は、思い出いっぱいの夏だった。あの夏の思い出ソングはレベッカの「モータードライブ」。歌詞の中の「急がなきゃ、出遅れちゃう、時代はmoterdrive」が、今思えばまさに時代を写していた。みんな、それぞれの武勇伝を作るのに必死で、やんちゃすることばかり考えていた時代。誰かと同じものを着たり、誰かと同じ趣味を持つことが恥ずかしく、人と違う「差異化」という言葉がよく使われた時代。40年も経つと人々の価値観、思考回路というものはこんなにも変わるのだ。変わってもいいけど、どんな時代であっても、若者は生意気で、元気であってほしいものだと思う。

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