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seiji_arita
2024年7月4日 23:39
「最後の言葉」沢山の記憶の積み重ねによって僕等の人生は成り立っている僕等は暗い空に浮かぶ雲の周りに希望の縁取りを探し求める頭上の暗雲の中に幾つもの願い事を書き連ねその裏側にあるはずの明るい輝きを放つ太陽を心に描く何処でもいいから遠くの国に行きたい君はそう言ったその言葉は僕の中に眠る僕自身の代弁でもありふたりは胸の中にある それぞれの暗雲と光を抱
2024年7月3日 17:47
「片翼の天使と片足の僕と」片翼の天使が眠っているベッドに眠る彼女には沢山の管が繋ぎ込まれている窓の外には風は無い人の形をした化け物達が沢山居て僕等を狙っている僕はバス停の側に咲いていた小さな花を摘んで持って来たガラスの瓶に其れを飾るごめんね 高価な花束は買えないんだ海で拾った綺麗な貝殻と山で見つけた水晶の欠片片足しかない僕だけど誰かさんの様には
2024年6月26日 18:36
「死んだふり」必要悪が裏の正解領域で息を殺して生き続ける人の形をした程度の分際が虹を欲する辿り着けない朝の向こうに見えた汚れた海大人の顔をした愛想が一方的な暴力を振う生まれてきた喜びや生きて行く上での業だとか慢心と理想論 遠いと思い込んでいた天国と地獄誰も悪くないのなら 何故 僕等は泣いている夢の奥底 今は黙って死んだふり傷口を固めた嘘が
2024年6月21日 15:24
「道化師の告白」現実を何も語らない事により 何かが語られている色彩を失くした平板な世が血を流し 人格の一部を欠損した歪な夜空が消えそうな月を映し出す感覚を喪失した星は輝き方を忘れる僕の固定された視界には道化師の告白が終わり無く文章化されて行く彼は決して真実を語らないモノクロの街で薔薇を売る女暗室での祝祭 完結された愛純文学とは無関係な風が真夜中を彷
2024年6月19日 22:14
「樹木の影」垂直な壁に映る樹木の影其処にはあるのは 自分では無い誰かの影か 幻想か言葉は投げかけられ消えてゆく並列的に並んだ美質と欠落が境界線を超え存在する其の延長線にあるものは樹木では無く私自身だった解析不能な特質は決して開かれる事は無い定規で線を引く様に綺麗な均整其れと同種の物を身体に纏う血肉にもならない言葉の羅列に埋もれてゆく私は存在の狂
2024年6月10日 23:27
「白い月の光」夜明け前の白い月に 僕達ふたりのそれぞれが抱える事柄の差異が映し出されるその白い月は夜空の端っこで暗示的な光を微かに放つ僕は迷いの中で朝を迎える其れは圧倒的な混乱とは違う 確信のある答えが欲しかっただけなんだ彼女は時計を見つめているその針は宿命的な時を示す僕は彼女の背中をそっと指先で撫で君は静かにうなずいた所有し所有される事の
2024年6月9日 21:33
「君に贈る詩」君は詩なんか読まない僕の書いた文字は透き通っていて君の瞳には映らない窓からは低くたれこめた暗い雲が見えたそうかもしれない 僕は口に出してそう言った僕がペンを持った瞬間に言葉は消えて無くなってしまう詩を読む様に独り言を呟く君は詩なんか読まない静かに雨が降りはじめたPhoto : Seiji Arita
2024年5月24日 21:58
「琥珀のグラス」物事の終わりは いつだってあっけないものだ世界は一定の原理に従い然るべき方向に流れて行く僕は夢の中の彼奴の事を探し求めている夜の闇は当たり前だけど暗いんだ彼の歌う詩は ひとりで聴くには悲しみが強すぎる危うさが勝ち過ぎている琥珀のグラスの中に想い出を留めた僕が大切にしていたものは 彼の記憶だと気が付いた妙にくっきりとした形の月と風の
2024年5月20日 12:12
仰ぎ見た杭の滝 凪潮の息吹が斧音に変わり乱脈を打つ無言の太陽に突き刺さる黒き羽根別れを告げた螺旋雲は戻れない刻の様乱立した黙礼が我に似る一律に同じ形の雨が降り続く其の類型を突き崩す力を有した風を待つ少なくとも雨粒の形など覚えてはいない其の極めて凡庸な色彩と形式を持つ輪郭は記憶に留めるに値しないひび割れた月に触れる指先夜空に綴る言葉は黙り続け
2024年5月16日 15:56
「透明な風」必要な言葉は何故だかいつも遅れて後からやって来るあの日 あの時僕等に欠けているものなんて何ひとつ無いそう君に伝えたかったきっと君は微笑んでくれただろう深い緑と青い空を持つ夏だけが其処にあった僕等はもう二度とこの場所に来る事は無いそして君に逢う事も定められた場所に向かうそれぞれの道を歩み続ける僕は一度だけ振り返る其処には形を持た
2024年5月15日 21:40
「夜を忘れた花」儚い程の細い血脈にも生きた赤い血が流れている何処までも繊細で美しい君の最後の声が空に消える熟考は深い沈黙を必要とし夜を忘れた花の傍には眠りと覚醒 現実と非現実の夢が横たわる風や水が流れる様な陰影が僅かに不揃いな図形に映り込む君は居なくなったけど 君はいつでも僕の傍に居る其処にある無言の想いが言葉にならない声になる喪失と喪失
2024年5月12日 13:26
深い混乱の中に均等なふたつの光の存在を探した失われて行く時間の感覚 ある種の衝動が頭上からずれ堕ちて来る僕は夢と想像の中に言葉を探す其れは誰か特定の人に向けられた言葉では無い其処に見える憂鬱な風に包まれた名前を持たない消えかかった田園風景其の僕の中にある無名の場所を埋める為の言葉だ疵痕も残さず切り裂いた刃 大量の現実の血が流されたはずだった夜
2024年5月11日 17:47
「黄色い月」春が終わりに近づいた夜 空気は漠然とした湿り気を帯び薄靄に包まれた黄色い月がふたりを見ていた僕の隣りで不規則に美しく揺れる君のスカートの裾 僕は自分を失ってしまうほど激しく君を求めていたはぐらかす様に微笑む君の唇に静かに指先で触れた少しの間の沈黙 其れは彼女の同意を意味している全てが再び現実の位相に服すまで彼女の長い睫毛が僕の心の
2024年5月11日 10:41
「車椅子のロージー」少しの乱れも無く調和した共同体 そんな夢の中にだけ花は咲く誰かが誇らしい気にそう言った無音の雷鳴と目に見えぬ雷光 其れが脳裏に焼き付いている僕と言う固有のただひとつの人格が名前を持たぬ混沌 未明の暗闇の中でかろうじて息をしている抽象的な命題を空に描き 頭は現実とは別の場所にある恵まれてるとか 恵まれて無いとか 魅力的な微笑みを浮