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【展覧会レポ】東京都写真美術館「TOPコレクション 見ることの重奏」

【約3,100文字、写真約25枚】
東京都写真美術館の「TOPコレクション 見ることの重奏」を鑑賞しました。その感想(+東京都写真美術館について)を書きます。

結論から言うと、東京都写真美術館らしい完成度の高い雰囲気作り丁寧に示唆を与えてくれるコレクション展だったため好印象でした。さまざまな写真家や私自身も含めた「視点」の違いにも改めて気付くことができました。

おすすめ度:★★★☆☆
会話できる度:★★☆☆☆
混み具合:★★☆☆☆
展覧会名:TOPコレクション 見ることの重奏
場所:東京都写真美術
会期:2024.7.18(木)—10.6(日)
休館日:月曜日
開館時間: 10:00~18:00
住所:東京都目黒区三田1丁目13−3
アクセス:恵比寿駅から徒歩約8分
入場料(一般):700円
事前予約:ー
展覧所要時間:約20分
撮影:ウィリアム ・ クラインとマン・レイ以外は撮影可能
URL:https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-4816.html 


▶︎アクセス

恵比寿ガーデンプレイスに向かう通路

東京都写真美術館は恵比寿駅から徒歩約6分。なお、東京都写真美術館の住所は「目黒区三田」ですが、同じ恵比寿ガーデンプレイス内の多くの施設が「渋谷区恵比寿」となっています🤔

住所:東京都目黒区三田1丁目13−3恵比寿ガーデンプレイス内

▶︎東京都写真美術館とは

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東京都写真美術館(Tokyo Photographic Art Museum、以下TOP)は、1990年に一時施設として開館、1995年に総合開館しました。ミッションは「わが国唯一の写真・映像の総合美術館として、センター的役割を担う存在感のある美術館を目指します」。

個人名を冠したものを除いた写真一般の美術館としては日本初。日本には他に、杉本博司(静岡)、入江泰山(奈良)、植田正治(鳥取)、土門拳(山形)などの写真美術館がありますネ。

TOPの事業主体は東京都、管理運営は東京都歴史文化財団です。そのため、毎年、詳細な年報を発行しています。その内容が興味深いです。

予算額と年間観覧者数の推移(画像引用

2022年の観覧者数は31.8万人(1日平均:871人)。ピーク時は2006年の44.3万人。近年、観覧者数が減少傾向にあるのはどういった課題があるのでしょうか?シンプルに企画力が下がっているのかもしれません。

また、コロナ禍で観覧者数が激減した2020年、2021年でも予算が例年並みであることが気になりました。「一度予算を減らしたら、それ以降も低い予算が付けられてしまうから、必要額より多めだけど、前年踏襲の予算で設定しよう」という魂胆が透けて見えます😅

事業会計 2022年(画像引用

2022年の予算は約3千万円の赤字だそうです。収益の45.4%が東京都負担金、40.1%が協賛金、6.7%が入場料。このような数値を見ると「入場料が高い!」なんて言えません…😨

なお、2000年に資生堂名誉会長・福原義春が館長に就任。都の予算削減や観覧者の減少によって危機的状況に陥っていたTOPを、支援会員制度などの改革によって立て直したそうです。

おそらく、私が初めてTOPに訪れた時(2011年9月)

私がTOPに初めて訪れたのは(おそらく)2011年。それから、毎年5〜10回は展覧会に行っていると思います。その主な理由は、1)1回行けば2〜3つのジャンルの違う展覧会をコンパクトに見られる、2)私もカメラで写真を撮ることが多く勉強になるためです。

TOPは3万7千点を超える作品を収蔵しています。私は、それを活用した「コレクション展」のクオリティが年々高まっていると感じます。毎回見せ方に工夫が見られるため、新しい発見があり、楽しみにしています。

▼過去のTOPコレクション展の投稿(今日の注目記事)

▶︎「TOPコレクション 見ることの重奏」感想

メインビジュアル

当館の所蔵する写真作品を中心に、「見ることの重奏」をテーマとして、見るということを問い直す試みを行います。(略)イメージの作り手、語り手、受け手など、その立ち位置によって、写真を見るという行為は多様なものとなります。そして見る経験は、イメージの表面上には見えない、歴史的な視点と豊かな想像力、自身の思考が重なり合い、それらを共鳴させる行為とも言えるのではないでしょうか。

公式サイトより
チケット

本展覧会では、14名(ベレニス・アボット、ウジェーヌ・アジェ、アンナ・アトキンス、チェン・ウェイ、スコット・ハイド、アンドレ・ケルテス、ウィリアム・クライン、奈良原一高、マン・レイ、杉浦邦恵、 モーリス・タバール、寺田真由美、マイナー・ホワイト、山崎博)の写真家の紹介、彼らの言葉、作品が数点ずつ展示されています。

アンドレ・ケルテス
展覧会の様子

会場内は非常に静かなため、ちょっと声を出すことも躊躇ためらわれる雰囲気でした。コレクション展であれば、もう少し和気藹々と鑑賞してもいいと思います。今年買い替えたカメラ(sony α7iv)は「サイレントモード」があるため、こういう場面で助かります(フリッカーが入りますが…)。

奈良原一高
マルセル・デュシャン《大ガラス》を撮影した作品
(右)展覧会のメインビジュアル作品

14名の紹介をつぶさに読むのは、そこそこにして「この中で自分が好きな作品はどれかなぁ」くらいの軽い気持ちで見回りました。

寺田真由美

中でも、私は寺田真由美の作品が好みでした。写真の中には壁、ドア、そよぐカーテン、影しか写っていません。無機質な風景なのに、一瞬の風による音や肌の感覚などが伝わってくるようでした。

寺田真由美の作品群
寺田真由美の言葉
ウジェーヌ・アジェ
ベレニス・アボット

ベレニス・アボットは、ウジェーヌ・アジェの「記録という作品性」が大好きだったらしいです(確かに作風がそっくり)。アボットが映すNYの街並みには、まるでスパイダーマンが活躍していそうな雰囲気を感じました。

スコット・ハイド
展覧会の様子

今回のコレクション展は、静かなムードで主張は控えめでした。しかし、TOPらしいこだわりも随所に感じました。空間を全てベージュで統一することで、独特なシックな世界観が表現されていました。

マイナー・ホワイト
モーリス・タバール
杉浦邦恵

展示室の中央には「 ( ) 」の形をした仕切り壁が2枚立っているだけのシンプルな空間構成。通路が広く取れているため、ゆったりと鑑賞できました。ベンチもいくつか置いてあって休める点もありがたかったです。

展覧会の様子
チェン・ウェイ
山崎博
展覧会の様子

観覧者は若い人が多かったです。同日、3階、2階、地下すべての展覧会に足を運んだ中で、このコレクション展が一番賑わっていたのは意外でした。

▼同日に鑑賞したTOPの展覧会

また、外国人の観覧者も多かったです。もれなく全てのキャプションが英訳されている点は親切なため、他の美術館にも見習ってほしいです(近年、アクセシビリティ対応が強化されている結果でしょうか)。

▼私が英訳の不足を感じた展覧会

▶︎まとめ

買ったポストカード。杉浦邦恵《botanicus 13》

気になった作品はあったでしょうか?定期的に行われている東京都写真美術館のコレクション展はいつも新しい示唆を与えてくれます。今回はドンピシャな「気付き」が得られた訳ではありません。しかし、写真家それぞれの「視点」があること、自分自身の好きな「視点」を再確認できました。展示室内の雰囲気もTOPらしく丁寧なしつらだったため、好印象でした。

▶︎今日の美術館飯

★3.5/トーチ カフェ (東京都/恵比寿駅) - ハンバーグランチ 〜韓国風ヤンニョムソース〜 (¥1,000)

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