展覧会レポ:東京都写真美術館「TOPコレクション セレンディピティ 日常のなかの予期せぬ素敵な発見」
【約3,000文字、写真約30枚】
東京都写真美術館(以下:TOP)のコレクション展「セレンディピティ」と「JPS展」に行きました。その感想を書きます。
結論から言うと、とても良かったです。良かった点は、1点1点の展示内容もさることながら、今までとは違うTOPのチャレンジを感じた点です。コレクション展はどう見せるかストーリー性(キュレーション)が命。今後の期待も込めて、おすすめ度は★4です。
「TOPコレクション セレンディピティ 日常のなかの予期せぬ素敵な発見」
定期的にTOPはコレクション展を開催しています。今回はいつもと訳が違いました。コレクション展の割にはタイトルはキャッチーだし、ポスタービジュアルも余白が多かったり、文字色に黄緑を使っていたり、メインの作品が奈良美智というように色々とチャレンジングです。一見すると、企画展かと思う仕上がりです。いつものコレクション展のビジュアルは、どこか堅くて敷居を高く設定しているような印象が多かったです。
セレンディピティとは「偶然と才気によって、予期しない発見をすること」という意味です。まさに、写真とはセレンディピティの塊だと思います。
違う人が同じ場所で撮影しても、その写真には撮影者の今まで培った思想・感情が表現されていて、全く同じ作品は生まれません。それに加えて、同じ時間は存在しないように、その時間特有の瞬間を写真は切り取ります。何気ない日常には常にセレンディピティがあり、貴重なものだと思います。
この考えは現代アートに通じるものがあります。テーマ自体が私の価値観と共感できる内容だったため、展覧会全体の満足度は高かったです。
以下、気になった作品をピックアップします。
瀬田登久子の作品は、今年、横浜市民ギャラリーあざみ野で鑑賞したため知っていました。色んな人の冷蔵庫(生活感の塊)をただ写真に収める。まさに「セレンディピティ」にぴったりな作品でした。
今回のコレクション展で特徴的だったのが、靴を脱いで作品を鑑賞するスペースがあったことでした(実際に、靴を脱いでゆったりしている人は私以外に見なかったですが)。私は、今まで何回もTOPを訪れていますが、このような例は初めてでした。
お堅い印象のTOPが、お堅い印象のコレクション展でこのようなチャレンジをするのは意味のあることで、私は嬉しかったです。芝生の上に座ることで、直接的に作品が違うものに見える訳ではないです。しかし、基本は立ちながら単調に写真を鑑賞する美術館で、身体的に新しい方法で鑑賞できるのは新鮮でした。この発想こそがセレンディピティであり、この決断をしたキュレーターの方に拍手を送りたいです。私の子供は、芝生にゴロゴロ転がったりしていました。仰向けになってTOPの天井を見る機会はコレが最後でしょう。監視員の方も暖かい目で見守ってくれたことも嬉しかったです。
ただし、この緑の芝生と作品の関連性は低かったです。私が思いついたアイデアとして、
1)実際に芝生が写った作品や、自然の風景、空の風景などの(芝生と関連性のある)作品が正面にかける、2)この芝生の真上(天井)に作品を飾って、仰向けに寝転んだ状態で作品を見る仕様にする、3)「靴をぬいでおはいりください」を「靴をぬいでおはいりください。普段とはちがって見えるかも」など目的を分かりやすく書いて促す
などあれば、より良かったな、と思いました。
第48回 2023 JPS展
公益社団法人日本写真家協会(Japan Professional Photographers Society)が行う、一般公募も含めた公募展。プロの写真家への登竜門らしい。展覧会の中は全て撮影不可でした(公募に当選した人は撮影可)。
フォトショップで加工した写真が目立つ印象でしたが、色々な視点の作品を一堂に見られて面白かったです(様々なアイデアがもらえるかも)。サクッと見終わると思います。写真の団体にはJPSやAPAなど様々あるんですね。
まとめ
いかがだったでしょうか?いつもの(暗い、お堅い、勉強を前面に出したような)TOPのコレクション展とは違い、チャレンジングで、写真に深い知識がある人もそうでない人も楽しめる構成になっていました。近年のTOPは、写真撮影に寛容になったりと、様々な挑戦をしていると思います。
四角四面に同じような構成で写真を替えるだけではなく、今回のようなキャッチーなキュレーションや、工夫された空間設計は、私はすごく良いと思いました。今後のTOPの展覧会に期待が膨らむ内容でした。
今日の美術館飯
補足
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