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わたしたちと医療

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わたしたちの暮らしと医療について。根拠ある治療/医療へのアクセス/これらを拒む人の心理と実態。取材をもとにした記事をマガジンとしてまとめていきます。
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記事一覧

大衆扇動 学校検診と活動家になりたい人 そしてマスメディア

大衆扇動 学校検診と活動家になりたい人 そしてマスメディア

加藤文宏

はじめに 小学校で行われた健康診断について女子生徒の保護者が上半身の衣服を脱がせる行為の理不尽さをTwitter/Xで訴え、たちまち数多くの人が寄り集まって検診をする医師や学校や集団検診に怒りをぶつけはじめるできごとがあった。
 このできごとそのものを論じるのではなく、このできごとの「構造」をあきらかにして、いまどきの大衆扇動を考える。

SNS世論・フレーム・虚像・争点 健康診断騒動

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安楽死と現代人の「いかんともしがたい」長い時間について

安楽死と現代人の「いかんともしがたい」長い時間について

──就職氷河期世代は緩慢な安楽死とも言えそうなやり方で放置されたが、彼らをベッドに横たえて薬剤を点滴して死んでもらうことが最善だったと誰が言えるだろうか。言えるはずがない。

加藤文宏

死んでもらいたい人のための安楽死 カナダは2016年に安楽死を合法化した。そして合法化から5年後の2021年、終末期の人に限定していた安楽死を非終末期の人にまで対象を拡げた。このとき不治の重病や障害が進行して取り

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【短信】犬の介護から高齢者の貧困率と世代間対立へ

【短信】犬の介護から高齢者の貧困率と世代間対立へ


はじめに 時事的で政治的な話題が続いたので、今回は視点を変えてみようと思います。大袈裟に言えば人生、控えめに言えば生活から「老い」を考えます。とはいえ、現代の老いは政治と無縁ではなく、とうぜん時事的な生ぐさい話題になってしまうのですが。

犬の介護からみえるもの 16年前、私の髪は黒く、愛犬は生後半年のやんちゃ娘だった。
 いま、私の髪は灰色になり、彼女は専用の車椅子に乗っているものの歩行もまま

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不安を煽り続けて成長したオーガニック産業──がんの次はアトピーと発達障害

不安を煽り続けて成長したオーガニック産業──がんの次はアトピーと発達障害

オーガニック産業は先人たちが築き上げた衛生的な社会や食の安全にフリーライドしているのではないか。添加物や農薬でがんになる、アトピーになる、発達障害になると騒ぐ狼少年ではないのか。

構成・タイトル写真
加藤文

オーガニックを意識したのはいつからだろう 1990年代半ばに、オーガニック(有機栽培)食品事業を起業した人物からマーケティングや広告戦略の相談を持ちかけられたことがあった。彼はアメリカから

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ワクチン忌避者・陰謀論者 彼らが戻れなくなった理由とリセットへの道筋

ワクチン忌避者・陰謀論者 彼らが戻れなくなった理由とリセットへの道筋

ワクチン忌避者や陰謀論者との関係に平穏を取り戻したい。これから紹介するメソッドでコロナ禍以前の状態までリセットされた人や、ひとまず平穏さを取り戻した家庭があります。

調査・構成・図版/写真
加藤文
協力
ハラオカヒサ

序/2年間50人の動向 2020年の半ばから現在まで、コロナ禍に登場したマスク拒否者、ワクチン忌避者、陰謀論者のほか彼らの周辺を取材してきた。消息が途絶えた者も多いが、長い例では

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あなたは決められるのか──患者の自己決定権をめぐる悩ましい問題

あなたは決められるのか──患者の自己決定権をめぐる悩ましい問題

私たちは勉強熱心でものわかりがよく、意見を口にしても医師の説得に対して従順な患者だろうか。体調のつらさや不安を抱えているとき、そんな患者になれるのだろうか。

調査・構成・図版・タイトル写真
加藤文

その問いはGoogle Mapのレビューから グーグルが提供する医療機関のクチコミレビューを見てみましょう。

 あるクリニックについてレビュー者Aは、
「あれこれ勝手に決めてしまい、こうしてほしい

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通院がいやになったとき 主治医が信じられなくなったとき 読んでほしい患者11人の証言

通院がいやになったとき 主治医が信じられなくなったとき 読んでほしい患者11人の証言

この記事は無料のまま『ニセ医療の入り口と実態』前半まで読めます。有料読者へは記事の改定や情報の追加などがあったときお知らせが届きます。また有料部分の末尾に期間限定で専用の連絡先を用意しました。

心が折れて寛解するまえに治療を投げ出した数多くの人を長期にわたり聞き取りの専門家として取材してきました。このうち11名が経験したことや医療に対しての意見を紹介します。あなたが求めているのは思い通りの治療法

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大量のサプリを摂取。メガビタミン治療でうつが治ると言われた。だが苦痛と後悔だけが残った──ニセ医療問題3

大量のサプリを摂取。メガビタミン治療でうつが治ると言われた。だが苦痛と後悔だけが残った──ニセ医療問題3

メガビタミン健康法でうつ病が治る、がんも治るとされ、しかも自分で治せるとされています。しかし病気が治らず体調が悪化した人がいました。今回は第一回概説編としてメガビタミン健康法とは何か、いまメガビタミン健康法で何が起こっているのかあきらかにします。
なお当連載ではニセ医療を「科学的・医学的根拠に基づかないか検証のしようがない概念で構成される標準治療ではない医療」と定義しています。

メガビタミン健康

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ママ友から陰謀論を介して浸透するニセ医療──ニセ医療問題2

ママ友から陰謀論を介して浸透するニセ医療──ニセ医療問題2

ニセ医療をめぐる言論は、ニセ医療とされる行為とこれを行う医師や施術者を語ることに費やされてきた。そこにはニセ医療に騙されないための啓発もあったが、騙される人々の5W1H(誰が、いつ、どこで、なにを、なぜ、どのように)が注目されることは少なかった。今回は、ニセ医療がママ友を介して深く浸透している問題を、騙される人の側から考えることにする。

■前回の記事

脱ステロイドはインスタグラムから

「キラ

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あの人ががんを放置する理由とあの医師が放置を勧める理由──ニセ医療問題1

あの人ががんを放置する理由とあの医師が放置を勧める理由──ニセ医療問題1

がんを放置したままでいたほうが積極的に治療するより生活の質や生存率が高いと主張する医師がいる。だが私たちはがん放置療法を採用して後悔の言葉とともに亡くなった人が少なくないのを知っている。妹を亡くした小林麻耶さんが「麻央は標準治療を受けたがっていた」と語ったのも聞いた。それでもがんを放置したいと願う人があとを絶たず、放置を推奨して患者にエビデンスのない治療と称した行為を続ける医師も相変わらずである。

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ワクチン忌避を煽った医師が神真都Qや多数の陰謀論者を生み出した実態

ワクチン忌避を煽った医師が神真都Qや多数の陰謀論者を生み出した実態

ワクチン害悪論を煽る医師や研究者が生み出したものはワクチン忌避者だけではありません。そして彼らは何ひとつ後片付けをしないまま承認欲求やビジネスを追求しています。

著者/ケイヒロ
聞き取り/Kヒロ+ハラオカヒサ:プロジェクト

もうひとつの神真都Qストーリー陰謀論集団である神真都Qの構成員を妻に持つ方からメールが届いた。

「真面目な妻が神真都Qに至るキッカケを作ったのは、大阪市立大学井上正康名誉

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代替医療やいんちき療法をめぐるセンセイと患者の因果な関係

代替医療やいんちき療法をめぐるセンセイと患者の因果な関係

標準的な治療があるのに代替医療やいんちき療法に頼る人がいます。それをやる医師、施術者、勧める人との因果な関係を実例を挙げながらあきらかにします。

著者:ケイヒロ
コーディネート:ハラオカヒサ

さらけ出されたおかしな医療新型コロナ肺炎は社会の暗部に隠されていたものを次々と白日のもとにさらけ出していった。そのひとつに、代替医療といんちきな療法の困った問題があった。

代替医療は通常医療や標準治療を

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