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わたしの書庫

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一目惚れした わたしのお気に入り書庫
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かがやく日々の祭りの果てに

かがやく日々の祭りの果てに

電話は世論調査のインタビューのように突然かかってきた。

「外線からお電話です」
交換手が短く言って回線が切り換った。
「もしもし。こちら連邦政府衛生研究所の疾病専門官(ディジーズ スペシャリスト)ですが、誰にも聴かれない場所で私と話しができますか」

女の声だった。ビジネスの話、とアメリカ人が割り切って電話をかけるときに特有の、事務的な率直さと生真面目さがにじみ出ている。
「連邦政府――衛生研究

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伝えられない想いが心を重くする

伝えられない想いが心を重くする

元々の性格や自信のなさからなのか、自分の思いを言えない環境にあったのか、小さい頃から私は意見を言えない事が多かった。

最初は言いたい事があっても、我慢をしていたと思うけれど、そのうちどうせ自分の意見を言ったところで、自分の思いは聞いてもらえないとの諦めに変わっていったのだと思う。

そんな思いが癖になり、当たり前になると自分の意見さえなくなる。

何が食べたい?  みんなと一緒で良いです。

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System Crasher システムクラッシャー #映画

System Crasher システムクラッシャー #映画

本日より公開の「System Crasher」

久しぶりに、こころに刺さる映画を観た。

主人公の少女ベニーは幼少期に父親からの虐待を受け、そのトラウマを抱えながら次々と問題行動を起こしていく。

保護施設、精神科、里親の元を転々とし、一緒には暮らせない母親からの愛情を求め、葛藤しながらも必死に生きている様を描く。

そんな彼女を救うべく、社会的な役割を担った大人たちがアプローチしていくのだが、

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1ヶ月間、下を向いて歩いてみた。

1ヶ月間、下を向いて歩いてみた。

気分が落ち込んでいて下を向いてたとかそういうのじゃなくて、単純に物理的に下方向を向いて歩いてみました。もちろん周りに気をつけながら。

常に愛機オートボーイ(フィルムカメラ)を持ち歩いて、地面と睨めっこして1ヶ月。
落とし物とかゴミとか色んな物の写真を撮りました。

すると1ヶ月後、完全に予想外の結末になりました。

〜1日目〜

毎朝続けているランニング中に見つけた五円玉。まさにこの企画を思いつ

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酔った勢いで。

酔った勢いで。

酔った勢いで「死にたい」と言ってる人に会ったことがない。酔った勢いで笑ってる人ならよく見るし、あと、泣いてる人もたまに見る。

たとえば私の妹が中学生のころ、家にあったワインを妹が間違って飲んでしまったことがあった。いまから20年近く前だ。

妹は気づかないうちに相当な量を飲んでしまったようで、人生初めての酔いがまわったのかおいおいと泣き出した。

泣き出したかと思ったら、兄妹の中で唯一病弱だった

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ひとり時間を楽しむことと、楽しい気持ちを誰かや何かに委ねないことの大切さ。

ひとり時間を楽しむことと、楽しい気持ちを誰かや何かに委ねないことの大切さ。

ひとりで過ごす時間が好きだ。

ひとりで過ごす時間が好きだし、
自分にとって大切な、必要な時間だ。
もし365日24時間誰かと一緒にいれば
わたしはきっと息ができなくなると思う。
陸に打ち上げられた魚のように。

ひとり映画、ひとり美術館博物館水族館、
ひとり外食、ひとり旅、ひとりテーマパーク、
わたしはひとり行動がわりとなんでも平気だ。

ひとり行動が苦手だという人も
案外沢山いるかもしれないけ

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02 過去なんて関係ない。大切なのは、今をどう生きているか。

02 過去なんて関係ない。大切なのは、今をどう生きているか。

この言葉は、柚木沙弥郎さんが86歳にして
はじめてパリのサンジェルマン・デ・プレにあるギャラリーで、
個展を開いたときのことを振り返って、述べたものです。

フランスの人たちが興味を持つのは「今、どう生きてるか」です。
学歴とか、経験とか、どんな仕事をしてきたかというのは、
彼らにとって関係ないみたいです。

大切なのは「現在」ということなんですね。

実際、柚木さんの作品は、その素晴らしさが認め

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「きれいごと」を諦めない大人でいたい。

「きれいごと」を諦めない大人でいたい。

「そのことがずっと不安で、怖かったんですよね?」

返事をしようと思ったのに、うまく声が出なかった。そのぶん、何度も何度も頷いた。
マスクのなかに流れ込む滴を止めることができなかった。そんな私に、白衣を着たその人はそっとティッシュを差し出しながら、私が一番聞きたかった言葉をくれた。

「大丈夫ですよ。だってあなたは、こんなにもお子さんを大切に想われているじゃないですか」



お日様がぎらぎらと

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19歳で私を出産したお母さんが書いてくれた作文。

19歳で私を出産したお母さんが書いてくれた作文。

母は18歳で私を妊娠し、19歳の秋に私を出産した。父は6歳年上だから当時24歳で、どんな出会いからそうなったのか、私は聞いたことがない。

私は長男で、下には2人の妹、1人の弟がいる。全部で4人の兄妹。歳も近くて毎日楽しかった。

その代わり、父は寝ないで働いていた。日中は家にいる母も、夜になると「お掃除の仕事があるから」と言って仕事に行っていた。私を中心に兄妹4人みんなで「行かないで」と泣きなが

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涙の胃カメラ

涙の胃カメラ

これまでの健康診断で、色んな生活習慣病的な数値で引っかかったことはあったが、胃のX線で引っかかったのは初めてだった。ちょっとイヤな感じの影があると言う。「ちょっと影のある男」と言われることはあったが、胃に影があると言われたのは初めてである。昨年末の健康診断のことだった。

健診施設のドクターが説明のために見せてくれたX線画像を見ると、確かに胃の中にポコッとした何かがあるように見える。

「まあ、大

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シナモンロールは、うさぎですか。

シナモンロールは、うさぎですか。

「シナモンロール」というサンリオキャラクターを、ご存知だろうか。

長く垂れた耳を持つ、うさぎのような姿をしたキャラクターで、その体は二頭身で真っ白い。瞳は淡い水色をしており、その水色が彼(シナモンくんは男の子)のイメージカラーだ。白いおしりにくっつくしっぽは、その名に冠する「シナモンロール」のパンのようにくるりと巻かれていて、なんともかわいらしい。

……やってみて思ったのだけど、人外の、それも

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画詩#06 落ちない涙

画詩#06 落ちない涙

ずっと落ちない涙がある
落ちていかない涙がある
それは小さい時から僕と一緒にいて
どんどん大きくなっていく
僕が泣くたびに大きくなっていく

大人になったら落ちるだろう
僕はまだ子供だから落ちないのだろう
そう思っていたけれど、どうやらそうじゃないらしい

大人になって僕が忘れていても、それは一緒だった
大人になって僕がそれを嫌っていても、それは一緒だった
どこまでも一緒だった

泣くたびに大きく

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