マガジンのカバー画像

わたしの書庫

24
一目惚れした わたしのお気に入り書庫
運営しているクリエイター

記事一覧

結婚しました。死が怖い。

結婚しました。死が怖い。

 人生、やりたくてやっていたわけじゃない。

 空が青いのが苦手だ。さんざめく街道。人の嗤い声。やさしい風を待っている。

「真面目だね」なんて学生時代言われて。ちっとも嬉しくなくて。むしろ歳を重ねれば重ねるほど惨めだった。何にもできないからかけられる言葉みたいだった。

 私は"できる子"だった。廊下は走らない。問題は起こさない。遅刻しない。ずる休みをしない。

 でもつまらない男だ。誰の視界に

もっとみる
8年ぶりにできた恋人が、私の夢を推してくれた話

8年ぶりにできた恋人が、私の夢を推してくれた話

自分を、平凡未満だと思う。

「私がいるんだから、絶対大丈夫よ」

そう—— やっと言われた。

・・・

まだ朝か夜かも曖昧な、薄暗い道を歩く。
何もわるくないのに謝っていた。

雑音とともに乗り込むにんげん、私。不気味に揺れる通勤電車。車窓にはやせ細った男が映っている。

たまたま私の前に座っている人が立ち上がった。投げ入れたティッシュがごみ箱にすとんと入った時のような、わずかな幸福だ。

もっとみる
見えても見えなくても

見えても見えなくても

週末、ピアノジャズをBGMにゆっくりポテトチップをつまみにワインを飲む。娘が小さい頃は夫と定期的に楽しんでいた。この数年、そこに娘が加わるようになった。
娘はお茶、私と夫はワインでポテトチップを囲むのをいつからか「ポテチ会」と名付けられた。私と娘のどちらかが話始め、のんびりと夫がそれに答える。話したい人が話したいことを話す。日常の夕食での会話ではなかなかできない話題になることが多い。
将来のことを

もっとみる
人の20代で得た知見から、自身がこれまでに得た知見を振り返ったはなし

人の20代で得た知見から、自身がこれまでに得た知見を振り返ったはなし

わたしの20代はとっくに過ぎている。
自分の人生において答え合わせのつもりで〝20代で得た知見〟という本を読んだ。

わたしは人並みに20代の知見を得たであろうか?
その好奇心から美容院にて2時間で完読した。

時々無性に読書に没頭したい日がある。
読み終えると、エッセイの著者、小説の主人公と友だちになった気分だ。

この本は進められるがままに読んだので、これまで著者Fさんのことはなにも知らなかっ

もっとみる
俺は、17で実家を捨てた

俺は、17で実家を捨てた

父方のばあちゃん、父、母、俺、弟。
父が40、母が30のときに俺は生まれた。
その3年後に、弟も生まれた。

俺ら一家は、ごく普通の家族構成だ。どこにでもいる、一般的な家族。両親は共働きで、ばあちゃんに育てられた。いわゆる "おばあちゃんっこ" だった。

小さいころは気がつかなかったけれど、俺の父は酒癖が悪い。そう自覚したのは、小学生になってからだった。ふだんは優しいのに、酒を飲むと人が変わる。

もっとみる
私が白杖ガールだった頃

私が白杖ガールだった頃

弱視の女子高生とヤンキーの恋愛を描いたドラマ「恋です!~ヤンキー君と白杖ガール」。原作を読んで当事者として共感できる部分がたくさんあり、ドラマも楽しみにしていた。私の周りの視覚障害当事者や、当事者に関わる同僚や友人たちも注目している作品だ。

1話を見終わって、いつか書こうと貯めているスマホのメモに白杖について書いたものがあることを思い出した。1年以上前のメモで、自分でもこんなこと書いてたのかと思

もっとみる
KREVA CLASS 受講~言葉の魔術師~

KREVA CLASS 受講~言葉の魔術師~

言葉の魔術師2大巨頭のコラボレーション

こんなことってあるのだろうか。
わたしの大好きな二人が、共にステージを作ってくれるなんて。
よくよく考えてみれば起こりうることだったかもしれないけれど、最近のわたしにはそういう遊び心や発想力が消え失せていたのかもしれない。
だからこそ、KREVAと小林賢太郎、この名前が並ぶだけで泣くほど嬉しかったし、震えた。

わたしにとってふたりは、「言葉の魔術師」であ

もっとみる
人前で愛を誓うか

人前で愛を誓うか

結婚式を挙げた。
好きな人だけをめいっぱい呼んだ。みんな遠くに住んでいても当たり前のように来てくれた。

人前で愛なんか誓いたくなかったあたしは、感動の結婚式なんかしなかった。友達、家族、みんなが笑ってくれて、一緒においしいものを食べて。それだけのパーティーがしたかった。実際にそうした。

バージンロードを父とゆっくり歩いたりしない。
親に伝えたい感謝を手紙にしたため、人前で読まない。
誓いのキス

もっとみる
明日死ぬかもしれないと思って生きること。

明日死ぬかもしれないと思って生きること。

「明日死ぬと思って生きなさい。」

かつての偉人がこんなことを言ったらしい。

今でも、この競争社会を駆け上がった者たちは、同じフレーズを口にする。

このフレーズ、頭ではよく理解できる。

昨日までの人生を悔いなく生きられているかというと、そんなわけがない。なので、今日からの人生はもっと悔いなく生きたいと、いつもそう思う。

けれど、どうしても心では、もやもやとした違和感が生じてしまう。

いく

もっとみる
霧に包まれる水没林

霧に包まれる水没林

『水没林』という現象をご存じでしょうか。春、木々は雪解けにより水量の増えたダム湖に沈み、田植えの時期の放水により日常を取り戻します。

その間だけ見ることができる現象が『水没林』です。正確には年中水没しているものも存在しますが、そちらは枯木になります。今回は水に沈みながらも緑を芽吹かす木々を撮影してみました。

夜の水没林

夜中の山形県飯豊町。事前に撮影場所の確認へ。ダム湖岸に公園があり、隣接す

もっとみる
エモい。  - 文章に思う -

エモい。 - 文章に思う -

『 言葉 』は、音符に…

そして『 文章 』は、楽譜のようだ。

最近よく耳にする、いわゆる『 エモい 』音楽を好む私は、文章にも『 エモさ 』を求める傾向にあるように思う。

私にとって、文字を綴ることは、一瞬の刹那を言語化して留めておくことであり、カメラで、瞬間を焼き付けることに比喩できるであろう。

どんな言葉で、どんな表現を用いるかによって、楽譜の仕上がりは格段に違いがでる。

言葉に命

もっとみる
かがやく日々の祭りの果てに

かがやく日々の祭りの果てに

電話は世論調査のインタビューのように突然かかってきた。

「外線からお電話です」
交換手が短く言って回線が切り換った。
「もしもし。こちら連邦政府衛生研究所の疾病専門官(ディジーズ スペシャリスト)ですが、誰にも聴かれない場所で私と話しができますか」

女の声だった。ビジネスの話、とアメリカ人が割り切って電話をかけるときに特有の、事務的な率直さと生真面目さがにじみ出ている。
「連邦政府――衛生研究

もっとみる
伝えられない想いが心を重くする

伝えられない想いが心を重くする

元々の性格や自信のなさからなのか、自分の思いを言えない環境にあったのか、小さい頃から私は意見を言えない事が多かった。

最初は言いたい事があっても、我慢をしていたと思うけれど、そのうちどうせ自分の意見を言ったところで、自分の思いは聞いてもらえないとの諦めに変わっていったのだと思う。

そんな思いが癖になり、当たり前になると自分の意見さえなくなる。

何が食べたい?  みんなと一緒で良いです。

もっとみる
System Crasher システムクラッシャー #映画

System Crasher システムクラッシャー #映画

本日より公開の「System Crasher」

久しぶりに、こころに刺さる映画を観た。

主人公の少女ベニーは幼少期に父親からの虐待を受け、そのトラウマを抱えながら次々と問題行動を起こしていく。

保護施設、精神科、里親の元を転々とし、一緒には暮らせない母親からの愛情を求め、葛藤しながらも必死に生きている様を描く。

そんな彼女を救うべく、社会的な役割を担った大人たちがアプローチしていくのだが、

もっとみる