西田梓

働く全盲の母。中学生の娘、人生の途中で全盲になった夫、夫のパートナー盲導犬のエルが家族…

西田梓

働く全盲の母。中学生の娘、人生の途中で全盲になった夫、夫のパートナー盲導犬のエルが家族。 「見える世界と見えない世界をつなぐ」をミッションに動画や講演などで発信。著書「いまのあなたで大丈夫! 全盲ママが伝える繋がる子育ての魅力」 https://azusanishida.net

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  • 盲導犬エルとの日常〜ユーザー家族の視点から

    2022年9月、全盲の夫のパートナーとして我が家にやってきた盲導犬のエル。一緒に暮らす中で感じたことや残したいことをユーザーの家族の視点で綴っていきます。掲載している文章と写真は全てユーザーである夫の許可を得ています。

最近の記事

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私が白杖ガールだった頃

弱視の女子高生とヤンキーの恋愛を描いたドラマ「恋です!~ヤンキー君と白杖ガール」。原作を読んで当事者として共感できる部分がたくさんあり、ドラマも楽しみにしていた。私の周りの視覚障害当事者や、当事者に関わる同僚や友人たちも注目している作品だ。 1話を見終わって、いつか書こうと貯めているスマホのメモに白杖について書いたものがあることを思い出した。1年以上前のメモで、自分でもこんなこと書いてたのかと思ったほどだ。ドラマを見て、改めて私が主人公と同じ高校生の頃、そして今白杖について

    • 氷がない!!

      9月16日でエルが我が家にやってきて二年になりました。大きな病気も怪我もなく、健康に過ごしてくれていることが一番嬉しいです。我が家に来たばかりの頃は、犬がお腹を上にして寝転がる通称へそ天を全くしてくれませんでした。へそ天は犬が最高にリラックスしているときにするようです。でも、少し前から伏せているエルを撫でていると、ゴロンとへそ天をしてくれるようになりました。夫が毎日やっているブラッシングのときも、へそ天が多いようです。心を許してくれているんだなと嬉しくなります。 最近のエルの

      • 心の奥の「ありがとう」

        テストで80点を取ったとして 「次はもっとがんばり!」 と言うのが母で 「すごいなぁ。よくがんばったな」 と言ってくれるのが祖母だった。祖母はどんなときでも、私を肯定し、味方でいてくれた。私が大きくなっていく過程で、それぞれの接し方はどちらも必要だったと思う。 6月22日、祖母は88歳で亡くなった。思えばこのnoteは、元気な祖母と最後に電話をした後に書いたものだ。 亡くなる一週間前、いつ何があってもおかしくないと知り、娘と二人で甲子園に住む祖母に会いに行った。神戸

        • ベランダでプール

          エルと過ごす二回目の夏がやってきました。 テレビからは 「命の危険を感じる熱さです」 とニュースが流れています。そんな中でもエルと楽しい夏の思い出を作りたいなと思っていたところ、娘も同じことを考えていたようです。 「ベランダでプールをしようよ」 との娘の提案に、去年の夏を思い出しました。小さい子供のように、エルもプールが楽しいかなと思い、犬用のプールを検索しました。いくつかすぐに見つかりました。でも、 32キロの大きなエルが入れるプールとなると、なかなかの大きさで、断

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        • 盲導犬エルとの日常〜ユーザー家族の視点から
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          暑い夏を快適に

          もうすぐエルと過ごす二回目の夏がやってきます。去年、エルにとって夏は厳しい季節だなと実感したことを思い出しつつ、6月の半ばころから暑さ対策をし始めました。 ひんやりマットを購入 ニトリのメルマガの「ペット特集」というタイトルを見て、どんな商品があるのか開いてみました。ひんやり素材の「ペットごろ寝マット」が気になり、詳細を見てみると、枕の付いたマットでクール素材を使っているとのこと。以前、盲導犬ユーザーの友達が 「ニトリの商品がいいよ」 と教えてくれていたことを思い出し

          暑い夏を快適に

          見えても見えなくても

          週末、ピアノジャズをBGMにゆっくりポテトチップをつまみにワインを飲む。娘が小さい頃は夫と定期的に楽しんでいた。この数年、そこに娘が加わるようになった。 娘はお茶、私と夫はワインでポテトチップを囲むのをいつからか「ポテチ会」と名付けられた。私と娘のどちらかが話始め、のんびりと夫がそれに答える。話したい人が話したいことを話す。日常の夕食での会話ではなかなかできない話題になることが多い。 将来のことを娘が話し、子供時代や学生時代のことを私と夫が話す。 先日そのポテチ会で、こんな話

          見えても見えなくても

          世界一のおばあちゃん

          「うちは世界でいっちばん幸せやわ」 これが祖母の口癖だ。その後に 「日本一ちゃうで、世界一やで」 と付け加えるのも忘れない。祖母に会うのは多くて年に二回の帰省で、それ以外は定期的に電話をしている。話す度に、さっきの言葉を必ず言ってくれる。 「それはええことやなぁ」 と返しながら、言葉の裏側にはきっと寂しい気持ちが隠れているんだろうと想像する。娘を連れて帰省しようと思っている日にちを伝えれば 「ええよええよ。うちその日仕事休み屋から」 と返ってくる。 「よかった

          世界一のおばあちゃん

          「Dog Education」で緩んだネジを締めなおし

          最近のエルの様子をいくつか残しておきます。 耳掃除が大好き 三日に一度ほどのペースで夫がエルの耳掃除をしています。ラブラドールはたれ耳なので耳の中に湿気がこもりやすいとのこと。コットンに耳掃除用の液体を付けて、耳の中を丁寧に拭いていきます。 「エル、耳掃除するよ」 呼ぶと、夫の前にゴロンと横になります。 「気持ちええわぁ。俺も協力するわ」 と、耳掃除しやすいように顔を夫の方に傾けています。うっとりしながら耳掃除をされているエルなのです。反対側をしてもらうときも、も

          「Dog Education」で緩んだネジを締めなおし

          新たなお出かけの形

          4月の中頃から、心身ともにエネルギーの出ない日が続いていた。気分転換をしたくて、買い物に行こうと思った。気に入って使っていた香水がなくなったこともあり、新しいものを探そうと、いつものようにとある百貨店に店内の誘導をお願いしたいと電話をした。 「今ご連絡いただいても、当日の案内をお約束はできません。お客様で混み合っている場合があると、ご案内できないこともありますので」 と言われた。 「私はお客様ではないんだな」 と思い悲しい気持ちになった。いくつか日にちの候補を挙げてお

          新たなお出かけの形

          「見えない」が日常になるまで

          生まれつき目が見えない私が、初めて「自分は見えていない」と知ったきっかけがある。 4、5歳の頃、母と二つ下の妹と3人でお昼ご飯を食べていたときのこと。テレビでは「笑っていいとも!」が流れていた。突然、テレビからの笑い声。続いて、妹と母の笑い声に驚き、不思議な気持ちになった。 「今の何…。何でみんな笑ってるん?」 母に尋ねると 「今テレビで面白いことやっててん。それ見て笑ってんよ」 「私はわからんかった」 と返した私に、母はこう続けた。 「お母さんたちは目が見えるか

          「見えない」が日常になるまで

          デジタル技術と人に支えられ

          5カ月通った産業カウンセラー養成講座が修了しました。通学でカウンセリングの実践を学び、並行してEラーニングで座学を学びました。これからは6月の学科試験と、7月の実技試験に向けて勉強を続けていきます。 見えないのは私だけという環境で勉強したのは、大学生以来でした。視覚障害者である私が勉強する上で、大学時代から変わらず大変だなと思ったこと、あの頃から大きく変わったことをそれぞれ書いていきます。 まず、変わらず大変だったのは事前準備です。視覚障害者であっても試験を受けることはでき

          デジタル技術と人に支えられ

          原点を振り返った「みんなの夢AWARD」

          3月12日、ファイナリストとしてステージに立った「みんなの夢AWARD14」無事終わりました。受賞はできませんでしたが、これまでの活動を振り返るきっかけになりました。 このコンテストに取り組む中で「見えないことでの難しさ」がたくさんありました。一緒にやってくれた宇野ゆかさんとアイデアを出し合い、工夫してやってきました。 まず「視覚に訴える見て伝わるプレゼン資料」が作れない。プレゼンをする上でPowerPointを使っての「見せ方」はとても重要です。そこをゆかさんが全面的に担っ

          原点を振り返った「みんなの夢AWARD」

          エルのがんばり、エルの不思議

          我が家の長男坊、盲導犬エルのがんばりと不思議なお話。 まずはがんばりのエピソードからご紹介します。 信号を渡るとき、渡り口の真ん中で止まって、夫の出発するよという指示 「ゴー」 を待っています。音響信号のときは、夫が左側に寄ってボタンを押してから渡り始めることを憶えたようです。 「ここにボタンあるよ」 と言うように押しボタンのところでぴったり止まると教えてくれました。 「すごい!天才やん!」 と私はエルをべた褒め。 もう一つ、信号は急いで渡らないといけないことを分

          エルのがんばり、エルの不思議

          4歳の誕生日

          1月21日、エルが4歳の誕生日を迎えました。娘が星と4の形をした風船を用意してくれて、みんなでお祝いしました。エルのパピーウォーカーさんからも 「赤ちゃんだったエルがもう4歳なんて早いですね」 とメッセージがありました。離れて暮らしていてもずっとエルのことを思ってくださっていることが、文面から伝わってきます。 大切に育ててもらったことが、いただくメールから溢れていていつも泣きそうになっています。こんなにエルを大切にしてくれたお家でパピー時代を過ごせたこと、本当に幸せだなぁ

          4歳の誕生日

          みんなの夢AWARD14ファイナリストに選ばれました

          社会課題の解決を目的としたビジネスコンテスト「みんなの夢AWARD14」のファイナリストになりました。 3月12日(火)、15時から2000人の観客を前に、渋谷公会堂でグランプリ・準グランプリを決めるためのプレゼンをします。舞台に立つのは私ですが、友人の宇野由香さんと一緒に作り上げている事業です。 今年の一次審査の応募数は438人。やりたい事業、これまでの活動などをフォームから応募しました。 二次審査に進んだのは64人。三年間の事業計画・収支計画、パワポ資料と5分間プレゼン

          みんなの夢AWARD14ファイナリストに選ばれました

          2023年振り返り

          毎年書いていますが、noteやSNSでいろんな人の「今年の振り返り」を読むのが好きです。私も一年を振り返ってみようと思います。 今年の私を表す漢字は「始」です。新しいことがたくさんあった2023年。 2月、YouTubeで音声配信を始めました。私の身近な視覚障害の当事者や関係者の方にゲストに来てもらい、ライフヒストリーを語ってもらう番組です。 「周りにいる素敵な人たちを知ってもらいたい。こんな生き方もあるよ」 を伝えたくて始めました。これまで全くやったことのない音声の編集

          2023年振り返り