エルのがんばり、エルの不思議
我が家の長男坊、盲導犬エルのがんばりと不思議なお話。
まずはがんばりのエピソードからご紹介します。
信号を渡るとき、渡り口の真ん中で止まって、夫の出発するよという指示
「ゴー」
を待っています。音響信号のときは、夫が左側に寄ってボタンを押してから渡り始めることを憶えたようです。
「ここにボタンあるよ」
と言うように押しボタンのところでぴったり止まると教えてくれました。
「すごい!天才やん!」
と私はエルをべた褒め。
もう一つ、信号は急いで渡らないといけないことを分かっているようです。盲導犬に急いでという指示は
「ゴーゴー!」
と言うのですが、夫が
「エル、ちょっと急ごう」
と言うと
「了解!」
と言うようにスピードアップすると教えてくれました。夫の雰囲気、周りの人の様子や車の音などから、急いだほうがいいな、と伝わっているのだと思います。こうやってコミュニケーションを取りながら歩いている姿は頼もしいです。
信号は盲導犬が判断していると思われることがあるのですが、それは違います。ユーザーが車の音を聞いて渡っています。これは白杖も盲導犬ユーザーも同じです。音で信号を判断している私たち。一言
「赤ですよ」
「青になりましたよ」
と声をかけてもらえると、とても助かります。
続いては、盲導犬になってもトレーニングが必要というお話。盲導犬は「チェアー」と言うと椅子に顎を置いて教えてくれるという指示があります。でも、この指示を夫はほとんど使っていませんでした。電車の中で空いている座席を探すときに使えるコマンドなのですが、夫の通勤時は空席を見つけることはできない混雑した時間帯です。なので、しばらく使わずにいたのですが、少し前に病院の待合室で空席を探そうとエルに
「チェアー」
の指示を出しました。エルは
「えーっと、チェアーね、なんだっけ?」
と言うようにウロウロして、夫を誘導したのは空気清浄機の前だったとのこと。
「エル、これ椅子じゃないなぁ」
と言っているところに、病院のスタッフの方が気づいて誘導してくれたようです。
この話を聞いて、なかなか使わない「チェアー」を忘れているんじゃないかということになり、家で練習してみることにしました。いくつか椅子を並べて、離れたところから夫の指示によりスタート。
「エル、チェアー」
という夫の声に合わせてテクテク歩く歩く。
「ここです!!」
と言うようにしっかり椅子を見つけて顎を乗せました。家族全員でめちゃくちゃ褒め
「グッドグッド!エルすごい!!」
の嵐です。エルはちょっと照れくさそうに
「いやいや、これぐらいできますから」
と言っているようでした。その後何度かダイニングの椅子、ソファーと練習しましたがしっかり見つけることができていました。盲導犬も忘れないようにたまには復習が必要ですね。
続いてはエルの不思議なエピソード。
夫はバスと電車で通勤しています。バスの中では座り、電車では立っているようです。
エルは夫の足元に伏せています。本来は夫が
「アップ」
というまで伏せていないといけないのですが、降りる駅のアナウンスが聞こえるとモゾモゾ動き出すとのこと。最初は偶然かなと思っていたらしいのですが、観察していると決まって降りる駅のアナウンスが聞こえると
「そろそろだよね?降りるよね?」
と言うように動いているようです。
まさか降りる駅名をエルが憶えているとは思えないので、エルにしかわからない何かで判断しているのでしょうか。
ハーネスを付けてもらい元気に
「出発!」
と尻尾をピーンと上げて左右にブンブン振りながら玄関を出る後姿を頼もしく嬉しく思って、いつもエルと夫を見送っています。
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